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なぜか今、ドラマ「しずかちゃんとパパ」の話

2024年夏ドラマが先週ぐらいからスタートしている。
オリンピックの関係なのか、なんだか始まるの早くない?
TBS金10なんか、前クール終わってすぐ始まってるし。

そうは言っても、今期が始まるまでの隙間というか、ちょっと余裕があったので、配信ドラマとか、これまでに録画して観ていなかった作品なんかを一気見したりしていた。

そんなわけで、何を今ごろ?って思われるかもしれないけど、録画してあったのにずっと観ていなかった「しずかちゃんとパパ」をやっと観終わった。
ほんと、何で今まで放っておいだんだろか。録画して約1年経っていた。

なぜかNHK火10は毎回自動録画される設定になっているんだけど。

残しておいて良かった~。

何これ、最高のドラマじゃん。

もともとは2022年3月にNHKBSプレミアムで放送されていたものを再編集し、2023年夏にNHK地上波で放送。

脚本は、ドラマ「舟を編む~私、辞書をつくります~」の蛭田直美さん。
「しずかちゃんとパパ」は蛭田さんのオリジナルだということ、最近気づきました。そりゃいいドラマに決まってる。

ちなみに現在フジテレビ火11時の「あの子の子ども」も蛭田さん脚本で、こちらは漫画原作ではあるけれど、高校生の妊娠という少し重いテーマながらも優しい表現が多くて、これまた引き込まれる。

BSで放送されていたときから気にはなっていたのに、なぜこんなにも視聴まで時間が経ってしまったのか。それは私の先入観がじゃまをしていたからかもしれない。耳の聞こえない父とその娘が主人公だという情報だけで、障害者を扱っている重めのドラマでは?と。勝手に苦手意識を抱いていただけなんだけど。

確かに扱っているテーマは重いのかもしれないけれど、まったく暗い感じはしないし、全体的に明るくて優しいドラマだった。

って、公式にも「ホームコメディ」って書いてあったじゃん。

舞台は父一人娘一人の父子家庭。 父は生まれた時から耳が聞こえないろう者。 父の耳代わり口代わりを務めてきた娘が、 ひょんなことから出会った男と恋に落ち、 結婚するまでの親離れ子離れのてんまつを 明るく温かく描くホームコメディです!

NHK公式サイトより

笑って泣けるドラマが私はやっぱり好きなんだよね。

泣けるって言っても、それは「かわいそう」からくる涙ではない。

耳の聞こえないパパ・野々村純介(笑福亭鶴瓶)と聞こえる娘・静(吉岡里帆)。親子シーンももちろん感動するけれど、静と後に結婚する青年・道永圭一(中島裕翔)とのシーンのほうで、泣かされることが多い。

「かわいそう」についても、ドラマの中でいい表現をされていたので、書いておこう。

その人がかわいそうかどうかを決められるのは、その人だけなんです。
人のかわいそうを勝手に決めてはいけません。

しずかちゃんとパパ 8話より

耳が聞こえない純介を「かわいそう」と言った教え子たちに、小学校音楽教師のさくら先生(木村多江)が最終話で伝えた言葉。

このさくら先生も、最初は子どもたちにどう伝えていいかわからず、困惑していた。すぐにパッと出てきた言葉ではないというところに、このドラマの良さがあると思う。みんな迷いながら生きている。そこに共感できるから。

このドラマ、本当に心に刺さる言葉がいっぱいで。さすが、蛭田さん!なんて思っている。中でも、道永圭一から発せられる言葉には、ハッとさせられることが多い。

「乗り越えられない壁がある」とつぶやく静ちゃんとのシーン。

壁は乗り越えてはいけません。
必要だからそこにあるんです。
道を歩いていて壁に突きあたったとき、
乗り越えようとしている人を僕は見たことがありません。
乗り越えるのはおそらく泥棒と忍者くらいです。
そういう時は引き返して別の道を探すものかと。

静「でも、もし道がみつからなかったら?」

道は必ずあります。陸路がなかったら空路です。

静「確かに。空までふさぐ壁は誰にも作れないですね。」

飛行機をチャーターしましょう。

静「いいんですか、それ。なんか、ぜんぜんがんばってないような。」

目的はがんばることではなくて、壁の向こうにあるどうしても行きたい場所へ行くこと。ですよね。
塀を含む壁の主な役割は守ることですから。
何かを何かから大切に守っているのです。
だから、簡単に乗り越えようとするべきではない。と僕は思います。

しずかちゃんとパパ 第3話より

このシーンの後、静ちゃんはちゃんと別の道を見つけることができた。他にもこんな感じのやりとりが、ずっと繰り広げられているドラマである。

まっすぐな圭一の言動によって、静の心も解放されていく。
コーダ(CODA, Children of Deaf Adults)として、耳の聞こえないパパの娘であることが自分のアイデンティティとなっていたこと。そして本当はそこから抜け出すのが怖かったということ。そんなことに気付かされる。

小さいころから空気が読めないと言われてきた圭一は、他人が作ったごはんも食べられない、会社では少しやっかいな人として扱われている。ドラマの中ではっきり言っているわけではないが、おそらく何らかの発達障害のような特性を持っている。

圭一を見ていて、私の大好きなドラマ「デート~恋とはどんなものかしら?~」の依子を思い出していた。特に、静との初デートのシーンで。
いつも真っすぐすぎる圭一。演じる中島裕翔さんの表情や口調も、そう思わせていたのかも。「デート」に中島裕翔さんも出てたしね。あの鷲尾さんの役も良かった。

中島裕翔さんと言えば、昔からドラマでよく観ていたけど、アイドルなのにまったくそれを感じさせない俳優さんだなぁと思っていた。ドラマ「半沢直樹」での初見に、このイケメン俳優誰だ?と気になったが、まさかHey! Say! JUMPの人だとは思っていなかった。そして、スーツ姿ばかり思い浮かんでしまう。「SUITS」ってドラマにも出ていたし。

静との関係を心配しているパパに向かって、圭一が言うギャグみたいなセリフ。と言っても、手話で伝えているんだが。
「安心してください。静さんと僕は付き合っています」
ここ、絶対笑ってしまう。その真顔ぷりと絶妙な間が素晴らしい。

ここでは書ききれないほど、素敵なシーンや言葉が溢れているドラマなのだが、たくさんの方に観てもらいたいと思う理由は他にもある。

それは、コーダや聴覚障害者の背景についても、丁寧に描かれているということ。

私がこれまで知らなかった情報で、ハッとさせられることもたくさんあった。コーダあるあるとか、聴覚障害者やその家族が必ずしも手話をできるとは限らないということとか。

ものごとを一つの視点だけで見てはいけないと、改めて気づかされた。

今おススメしてるの、私だけだと思うけど。
また良いドラマに出会えました。

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