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Q&A

先日受けたインタビュー(6月中旬頃)にて、メールベースでのインタビューとなったため、かなり細かく回答をしたのですが、実際の掲載ではそれほど内容が使われませんでした。振り返ってみると、お店のことを知っていただく上で良いQ&Aになったと思うので、ここにご紹介します。

Q1.元々別の仕事をされていたとのことですが、なぜカフェを始めようと考えたのでしょうか?

A1.きっかけは「一緒にカフェをやろう」という友人の声がけからです。これまでIT、デジタルマーケティングの業界に身を置いて、自分のしている仕事が人や街の営みに随分と遠いところにいる気がして、食や文化など、人が時間を過ごす場所で直接人に何か提供する仕事をしてみたいと思ったことによります。

Q2.なぜ一般的なカフェではなく、古民家カフェを始めたのでしょうか?

A2.「一般的なカフェ」がどういうものなのかわかりませんが、お店を始めようと決める以前に、意識してカフェに行ったことがありませんでした。
色々なお店に実際行ってみて、特に良いと感じたお店は古民家のカフェが多かったことによります。

なぜ古民家の方が良いのかを言語化してみて、建物の木の匂いとか埃っぽさとか、日本人のアイデンティティとして恐らく懐かしさを覚えてしまうんじゃないかとか、蛍光灯ではなく電球の明かりが落ち着くとか、そんなことを考えた記憶があります。

普通の物件で過ごしやすい落ち着いた雰囲気にしようとすると、それなりに装飾が必要になると思います。古民家の場合は時間をかけて形成された、その建物の持つ空気感、雰囲気のようなものがあります。
そこに寄り添った方が落ち着いた空間が作りやすいのではないかと思っていました。

Q3.改装にあたっては、ほとんどの部分をご自身でリノベーションしたと伺いました。メニューだけでなくお店まるごと“手作り”と言えますが、なぜご自身で作業されたのでしょうか? また、特にこだわった部分がありましたら、お教えいただけますと幸いです。

A3.当初は大工さんに、特に建物の強度面や安全性に関わる箇所への対処をお願いをしながら、それを手伝う形で進めていましたが、途中から改装費のコストをより下げるためには自身で手を動かすのが一番良いと思って、途中といってもかなり序盤から、大工さん無しでやっていました。当然時間はかかりましたが、自分のイメージを自分で形にしていくためには、貴重な時間だったと思います。
大工さんにお願いすればもっと早くキレイに作ってもらえたかもしれませんが、建物の雰囲気を活かすには時間がかかるけれど手作りの粗さがあった方が雰囲気が出る、と思っていました。実際にそうした粗さのあるお店の雰囲気が良かったと感じたことがあって、そちらの方に舵を切ったというところです。

1つ1つに目をかけているので、特にこれ、というのは難しいですね。どう全体と調和を取るかでやっていったのが、こだわりと言えるのかもしれません。

今後の人口減少によって、空き家の増えていくことがわかっている中で、それを活用しようとした場合に、今ある建物にどう手を入れて直していくといいのかを自身が学ぶ良い機会とも思っていました。
これまで意識したことがなかった、建物の壁や床、天井の構造を知り、それがなぜ、どう作られているのか、最近の家だとどう作られているのかも初めて知ることができました。すごく良い学びでした。

Q4.「つむぐり」という名前にはどのような意味が込められているのでしょうか? お店のコンセプトやこだわりなどをお教えください。※HPに記載されたご説明も拝見しておりますが、ご回答いただけますと幸いです。

A4.簡潔に言えば、どんぐりの語源+紡ぐ です。

名前の経緯とか考えについて詳しくは以下にあります。
https://note.mu/cafetsumuguri/n/n40aa488a150e

美味しい飲食物を提供する目的よりは、
自分の過ごすいい時間や自分と向き合う時間を楽しんでもらえる空間を提供する目的に重きを置いてます。
その中に増幅剤として自身が美味しいと思うコーヒーや飲み物、食べ物を用意しているという考え方です。

ここ1年くらいで「穏やかで豊かな時間を過ごす」をテーマにしています。
https://note.mu/cafetsumuguri/n/nde8ee9740426

ただ、これだと抽象的で伝わりづらいのか、周囲の方に配慮していただけず、おしゃべりに夢中な方もいらっしゃるので、「静かに過ごしたい方向けのお店」を店頭で掲げるようにしています。
店名も本来は「カフェつむぐり」ですが、「カフェ」がつくとそのイメージがカフェに固定されがちなので(女子会、おしゃべり、誕生日会、インスタ映えなど)、最近はネット上に掲載されるもので自分がコントロールできるとものには敢えて「つむぐり」という名前しか名乗らないようにしてもいます。あと「古民家」も自らでは最近名乗らないようにしています。

Q5.浅草の中心地から少し離れた“観音裏”に店を構えた理由はありますか?

A5.このエリアに土地勘は全くなく、当初は以前住んでいた蔵前で物件を探していました。今でこそ蔵前は素敵なお店が増えましたが、私が住んでいた10数年前は雑貨やカフェのようなお店があまりない場所でした。ただ、住んでいたこともあって、今後そういうお店が増えるであろうことを予期できたので、そこで物件を見つけられたらと思っていたのです。ところが、残念ながらご縁がなく、思ったような物件には出会えませんでした。物件探しというのはそういうものなのだと思います。
そこでお店を探すエリアを広げてみたところで出会ったのが今の場所です。蔵前に住んでいた頃もほとんど行ったことのないエリアでしたが、ゆったりと過ごせる店を目指す上で、箱としての大きさが魅力的な物件でした。

またその時点では、浅草は古い町の割に古民家カフェというものをあまり聞かなかったので(関東大震災の影響でそれ以前の古い建物が少ないからかもしれませんが)、特徴としての差別化にはなるかなと思っていました。

観音裏の入口とも言える、見番のそばに初めて行った時に、浅草にもこんな落ち着いた感じの場所もあるんだなとその雰囲気の良さを感じました。

都内とは言え、駅からは遠いので、気をつけているのは「ここにしかないモノや体験」を用意する事です。それが結果的に手作りが多い部分に繋がっている気がします。

Q6.提供するメニューや素材にはどのようなこだわりがあるのでしょうか? 「今のブラックコーヒー」「季節のフルーツサンド(メロン)」「お猪口マメ・ミルク・ホイップクリーム」をいただきましたので、特にそれらに関してのこだわりをお教えいただけますでしょうか?

A6.メニューについては、
「基本的にはいつも同じ」安定感
「季節の移ろいを感じる」豊かさ
「いつもすこしだけ違う」飽きない
を大切にしています。

コーヒー:
豆は中米専門とされているロースターさんから直接仕入れています。焙煎してから美味しいのは2週間程度なので、そのくらいの頻度でコーヒーメニューは差し替えています。基本的には中深煎りを出しますが、違いを感じてみるのも面白いので、浅煎りと深煎りがある時もありますし、ストレート(単一農園)とブレンド(いくつかの豆をブレンド)の時もあって、週次の頻度であれば、来るたびに違うコーヒーを楽しんでいただけるかと思います。
抽出はハンドドリップで、すっきり目に出しています。また時間が経っても、味が劣化(酸化がひどい、泥のような雑味になる等)しないような抽出方法を取ってます。
日々の体調で求める濃さは違うと思いますが、いつ飲んでもスッキリ飲める、というところを狙っています。
コーヒーを淹れるイベントや豆の販売もしており、家での再現性や手軽さを考えるとハンドドリップがちょうど良いため、そうした提供にしています。

フルーツサンド:
フルーツは季節によって変えますが、加工せずにそのまま出すもの、と
特に甘みや酸味の面で個体差が出やすいものは味のバランスを整えるべく加工するものと2種類あります。
クリームの甘さもフルーツの甘さによって調整してます。
甘酒(甘糀)を砂糖代わりにした生クリームと水切りヨーグルトで、
コク旨なクリームになっていると思います。

お猪口ミルク:
基本的にはコーヒー向けのものです。
メニューにも書いていますが、当店ではコーヒーにミルクはつけない(コーヒーの価格にミルクを含めない)ので、個別のメニューとして存在しており、北海道の牧場から直接仕入れています。残して捨てることをできるだけやめたいので、ミルクだけを飲めるお猪口で提供しています。

お猪口ホイップ:
こちらもコーヒーと合わせることを目的としたものです。フルーツサンドのベースにもなる、甘酒の入った生クリームです。

お猪口豆:
お茶請けとしてのメニューです。黒豆を時間をかけて炊いて、コーヒーとザラメ砂糖、お醤油で味付けして、ホイップをのせます。丼で食べたい、という方がたまにいる、好きな人には堪らないメニューのようです。

Q7.2Fは休日のみ開放していると伺いました。1Fと2Fで空間コンセプトの違いはありますか?

A7.空間作りをする際に、
2Fは開放感(天高、席間ひろめ、スタッフに見られている感じがないのでノビノビ)
1Fはお籠り感(押入跡の席、ランプのある席、一段下がった三和土(たたき)の席、カウンターが各々独立しつつも、ほどよく同じ空間を共有している)
をコンセプトにしていました。

平日のスタッフ1人営業の場合に2Fも開けると広すぎるので、1Fのみで営業しています。

2Fはノビノビしやすいためか、初めてご来店された方が、勝手にあちこち席を移動される/声が大きくなる傾向が強く、こちらからお声がけする負担が大きいので、現在は当店の雰囲気を理解して再訪してくださった2回目以降ご来店の方のみ(同伴者に2回目以降の方がいれば、新規来店の方でも2Fの利用可)に2Fをご利用いただいています。

夏の時期は暑すぎてエアコンが効きづらく、1Fのみの営業になることもあります。

Q8.2Fにある珍しいスピーカーを撮影させていただきました。スピーカーやBGM、音に関するこだわりがありましたら、お教えいただけますでしょうか?

A8.こちらはメニュー内の読み物でご案内していますが、考え事や作業の邪魔にならない落ち着いた音楽を流すようにしています。歌声のあるものよりはピアノや管楽器、弦楽器のみの方が合うようです。

スピーカーはご縁あって、お店を検討している際に参加したイベント(お寺でお茶を飲みながら音楽を聴く)で知り、実際にメーカーのショールームで話を聞いて導入を決めました。http://www.mssystem.co.jp
吹き抜けには自分で作業して吊りました。

Q9.カフェつむぐり様にはどのようなお客様が来店し、どのように過ごしているのでしょうか?

A9.読み物をとにかくたくさん持ち込んで過ごす方もいれば、勉強されてる方もいます。PC作業されている方もいれば、iPad で何かされている方もいます。たまに何もせずにボーッと音楽を聴いている方もいます。カップルでいらして、各々自分のやりたいことをやっている方も多いです。

世代は幅広く、その中でも同世代の30/40台の方でやや女性の方が多く、近所というよりは遠くからわざわざいらっしゃる方が多いかもしれません。
英語のメニューも用意していますので、外国人の方もたまにいらっしゃいます。

Q10.コーヒーのイベントのほか、木のカトラリーを制作するイベントやデザイナーを招いてのイベントなど、“クラフト”に関するさまざまなイベントが開催されています。一般的な古民家カフェにはあまり見られない取り組みかと思いますが、さまざまなイベントを開催する意味をお教えください。

A10.お店で提供する価値は時間を過ごす空間だけと考えておらず、イベントを通じて目の前にある日常の物事や出来事を多面的に見て、今自分の目の前にある豊かさや楽しさ、自らが大切にすべきことなどの新たな「気づき」や「可能性」を提供する場になれたらと思っています。

コーヒーは淹れ方以外にも味の変わる要素がたくさんあって、色々なお店によって、その要素が異なります。そうした知識を通じて色んなお店の楽しみ方、コーヒーとの向き合い方が変わり、生活を豊かにしてくれます。

木のカトラリーも、間伐材を使ったキットがあってこそ、ですが、自分で作ってみることで、お店で売られている手作りのものがどれだけ手間がかかり、使い手のことをよく考えられて作られているのかが初めてわかります。
値段を比較して何となく良さげな物を買うのは簡単で効率的ですが、人が魂を込めて作ったものに対して、込められた想いを汲み取れるようになるには、自らが体験してみないと気づけない/気づきにくいものと思います。

デザイナーの方はお店を始めて間もなく、知り合ったお客様です。当初は某雑誌のデザイナーでしたが、独立され新たなキャリアを形成される中で、人に教える方向性が新たに出ていらしたそうで、伝える何かをご一緒できたらとお願いした結果、イベントに繋がりました。

全般的にイベントの趣旨としては
目の前にあるものの本質をきちんと知ること、単純にコストパフォーマンスや効率のみを考えるのではなく本質を知った上で選択の天秤にかけるための気づきを提供する、結果的にその方の実際のアクションに繋がりそれを楽しいと思ってもらえたらと考えています。

当初から過ごす空間とイベントの両輪でやっていきたいと思っていましたが、なかなかイベントでの集客が難しい側面もあって、残念ながらカフェとして開けることを優先せざるを得ないことも多いのも事実です。

Q11.オープン当初は想像していなかった出会い、街への影響、コラボレーション、クリエイションなどはありますでしょうか? 具体的なエピソードとともにお教えいただけると幸いです。

A11.お店にいらしたお客様を通じて、その方の好きなことを一緒にイベントにしたり(日本の離島の旅の話をするイベント、イビサ島(スペイン)好きのイベント)、扱っているシフォンケーキ屋さんとシフォンケーキに関するイベントをしたり、お茶の専門家の方とお茶とカレーとコーヒーのイベントをしたり、スピーカーを使ってのアコースティックライブを開催したりはありました。

私は浅草の出身というわけでもなく、実家は千葉県松戸市ですが、中高大はずっと都内という環境の中で、元々の「地元意識」や「地域への意識」というものが大変薄く、街そのものや街への影響といったものを特段意識できていません。
大切にしているものの価値観の合う人とタイミングが合えば一緒に何かをするという感じです。何かに夢中になっている方(良い意味での変態さん)のお話は面白く、自分にはない視点から刺激を受けます。
地元の方に「このお店がここにあるのが誇らしい」と思ってもらえたら嬉しいですが、その点を強く目指して何か意識しているということはありません。

Q12.浅草は今後、どのように変化していくとお考えでしょうか? また、今後も変わらないところはどのような部分だとお考えでしょうか?

A12.最近の浅草で工事をしているところは大概ホテルのようで、外からの宿泊者の受け皿がますます増えていくようです。浅草の街としての課題として「浅草での滞在時間が短い」というものがあると聞いたことがあります。宿泊先が増えるということは滞在者が増えるということなので、街での過ごし方のバリエーションもより増えていくのではないでしょうか。

他の街との違いとして、お祭りの時は特に街の空気感が明らかに変わりますし、街に対して誇りを持っている方が多いので、それは今後も変わらず続いていくのではないかと思います。

Q13.浅草という街にとって、カフェつむぐり様はどのような存在でありたいと考えていますか? カフェつむぐり様の今後の展望を含めてお教えください。新しいイベントや企画、取り組みなどをお考えでしたら、可能な範囲でお話いただけますでしょうか?

A13.ここに来ると落ち着ける、ここに来るとジワリと刺激を受ける、ここに来ると集中できる、ここに来ると視野が広がる、ような場所であれたらと思います。その中で浅草と繋がる何かがあれば行動に移すかもしれません。

加えて、まだわずかではありますが、もう少し扱う店頭での物販の商品の種類を増やしていけたらと思います。

そして価値観の合う方と共に新たなイベントをもっと開催できたらとも思います。静かに過ごすお店を目指した結果、お客様との直接的なコミュニケーションの場が減った側面もあるので、対話できるようなイベントの必要性も感じていたりします。

提供したいものは「飲食価値」よりも「過ごす時間価値」と考えている中で、飲食物に価格設定して対価としてお金をもらう形にここ何年か違和感を持っていて、滞在された時間に対してお金をいただく形式についても考えたいと思っています。但し、そうした形態のお店を見たことがないので、伝え方や見せ方をわかりやすくかつ丁寧にやる必要があると考えています。どういう課金形態に変えるかは思案中ですが、そう遠くない将来にそう変えられたらと思っています。

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