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苦しいほど好きだった君へ #3

それから、私は自分を好きになろうと決めた。
初めて脱毛に行って、自分が1番好きな系統の服を買って。
君はストレートヘアが好きで、ずっと2年近くロングヘアのストレートを維持してきた。
だからこの歳にもなって初めて、髪の毛をコテで巻く練習をした。
ずっと行ってみたかった場所に、ふらっと1人で行ってみたり、大好きなパン屋さんで気の済むまで買って公園で食べたり。
縁切りで有名な神社でお参りをしたりした。
"悪縁ならば切って、良縁ならば繋いで"と願いを込めて。


なのに、
毎日泣いてばかりだった。
君と一緒に乗った電車に乗れば、見覚えのある景色。
嫌でも目に入ってきて、会話まで鮮明に思い出せる。
大学に行けば、図書館の向こう側や教室の廊下に君を探している。

棟に入る前の広場で、携帯を触りながらイヤホンをつけた君が私のことを待っている。
私が来るとお疲れ!と手を挙げて迎えてくれる君。
その広場には、君はもういない。

部活も同じだから、たまに見る君の姿が気まずくて。
いつもならお疲れ〜と恥ずかしそうに話しかけてくるのに、見ないようにしているのか全く空気同士のような雰囲気で。

1年生の時に一緒に部活を抜け出して入った教室に1人で入った時、また後ろから君が現れそうで。
暗い教室で1人、声を押し殺して泣いた。
あれからもう、2年が経ったなんて。

フォルダに残っている写真はずっと消せなかった。
動画もずっと消せなかった。
今まで、誰かと別れたら全部一斉削除だったのに、思い出が強すぎて消したくなかった。
人を本気で好きになるって、こういうことだったんだって思った。

大学3年の秋。君と別れて2ヶ月が経った。
それでも君のことがずっと忘れられなくて。
まだずっと好きだった。
私って本当に一途だったと、初めて思った。
3ヶ月経ってそれでも好きだったら、もう一度自分から告白しようと心に決めた。


秋から冬に季節が変わる頃。君と別れて3ヶ月。
部活のイベントが終わって、私たちの代は引退した。引退して、全く会う機会がなくなってしまった。
徐々に写真も消し始めたけれど、やっぱり好きで。
もういっそ、私から告白してみようと決めた。



久しぶりに君とのトーク画面を開いた。内容は全て削除してあるから、ほぼ真っ青な画面。

"話したいことがあるんだけど、近いうちに会えないかな?"

本当に勇気を絞って送ってみた。
君の既読がついたのは、2日後くらい。

"それって、ラインじゃダメな内容?"
きっと気まずいのだろう。でも、ここで行動を起こさなければ負けると思った。


"うん。せめて電話で話したい"

また既読が1日以上消える。
返信を待っている間は、あまり生きた心地がしなかった。
やっぱり送らなければよかったかなとも思った。


自分でもこんなにこだわる理由が本当によくわからない。
でも、言わなければ、ずっと変わらない。
君は頑固で、真面目な性格。
こういう時、もし本当はまだ好きでも後戻りしない性格だった。
だから、行動を起こすのはきっと君じゃなくて私。
私が行動を起こさなければ、絶対に何も変わらないから。
もしダメならこれで終わりにしようと思って。
それなりの覚悟で送ったから。
お願い、返信して。

2日後くらいにメッセージが返ってきた。
"じゃあ、1度会ってみますか?"

思わずガッツポーズをした。
もう一度チャンスがある、まだ望みはあると安心で涙が溢れた。
自分で掴んだチャンスを、自分でモノにした。
こうなったからには、絶対に復縁したい。
自分を好きになろうと、たくさん努力した姿を見せないと。
絶対に失敗しないように。

当日、今までで1番気合を入れて行った。服も、髪の毛も、スキンケアも。
夜の公園でたった何分か話すだけなのに、髪の毛は2時間しっかり巻いていったし、剃毛もバッチリしていった。
場所は君と何度も行った、思い出の公園。

最寄駅に着いて、君を待つ。
緊張しすぎて、遅刻魔の私が20分も早く着いた。
通知を見る。

"着いたよ"
この4文字で、私の緊張もマックスになる。
冬の寒さも感じないほど、私の鼓動も速くなっていた。

久しぶりに至近距離で見た君は、ずっと変わっていないそのままの君だった。

駅から公園まではほとんど話していない。
ただあの時の身長、体型とこうやって手を繋いでいたなと思い出しながら公園へ歩いた。

風が冷たい12月の夜の公園。
ブランコに座って、タイミングを伺っていると
"最近どう?"
まさかの、君の方から聞いてきた。
ああ、こういうところ。私が君を好きな理由。
当たり障りのない会話で終わるのかと思ったら、当時のことを思い出して2人で笑いながら気付けば1時間以上話していた。

"そういえば、話したいことって何?"
"3ヶ月考えて、いろんなこともあったけど、やっぱり君が好きで、忘れられないの。だから、もう一度だけチャンスが欲しい。私と付き合って"

本当に身勝手だとは思うけど、やっぱり君がよかった。恥ずかしくて、顔を見られなかった。

"俺も、別れてからもずっと忘れた日はないよ"
"実際、嫌いになれなくて辛かった"
"このライングループ、実はずっと消せなくて"

まさかの答えだった。私のことを嫌いになって振ったと思っていたのに。
付き合っていた時に作った、2人だけのグループLINE。写真や動画がアルバムになっていて、ずっと消えないように残していた。別れた時、私は君にそのグループを追い出されたまま全部消えたと思っていたのに。
君は残っていて、思い出も全部残っていた。
声にならないくらい、涙が溢れてしまった。
もう一度そのグループに招待してもらって、写真を全部見返して、また泣いた。
ああ、君も同じ気持ちだったんだと。
本当にお互い、好きで付き合っていたんだと。

"もう一度やり直してみる?"
口を開いたのは君の方。
"お願いします"
この返事をしたのは私。

こうして、2人の2度目の恋が始まった。

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忘れられない恋物語

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