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コロナ禍にやってきたツバメご夫婦の話。9

お話の時系列が前後するのですが、
忘れもしない8月の4日。


雛たちがまだ「飛ぶ」前の出来事です。


雛たちが眠りにつくのは
お店の外看板をしまう頃
ごちゃごちゃ言いながら床につきます。

看板をしまうふりをして主人の目を盗み、
雛たちが無事に眠るのを見届けて
自分の仕事に戻るのが日課でした。


が、
その日は違いました。

看板をしまおうと外に出ると
みんな黙りこくって遠くのある場所をみてました。
いつもうるさいのに(笑)

何かなーと視線をたどっていくと


そこにあったのはまぶしく光る満月でした。
ほんとに美しく、私もしばらくそのまま動けずにいたほどです。


・・・・・。

?!!!

そうか!!孵ってからといもの、
彼らは月を見たことがないのか!!

新月から
ある程度月が太ってくる頃は
ずっと曇りで、空はくろかったものね。

生まれて初めて月をみたのだね。


「あれはね、月っていうんやよ。すごいね!でっかいよね!」
思わず口に出てました。
おもいっきり日本語というか、人間語でしたが(笑)



「初めて」を一緒に立ち会えたこと。
そして、
まったく違う次元で生きている生物が
月を見たという「一つの出来事」に
一緒に心奪われることにとても感動して、
めっちゃ泣いた~~(笑)


「どこに行っても、
 君たちも私たちも、
 同じ月を見てるからね。

 大丈夫。
 絶対に大丈夫。」


ちっちゃい声だったけど、はきりそう伝えました。
彼らの巣立ち&長旅、そうしして私達も含めて
「生きていく」ことに改めてびびったのかもしれません(笑)
びっくりするくらいの小心者ですww


そのあとすぐに、
雛たちがまたいつもの「ごちゃごちゃ騒ぐ」を始め、
眠りについていきました。


私が生きている世界は
この子たちが生きている世界は
なんと生々しく、そして美しいと

そんなことを思いながらも
涙が止まらなかったのでありました。


・・・でも、店に入ると
主人が作る夕飯の匂いにすぐ涙はとまりました。
おいしい匂いでしたからね、
ピタっと止まりました。

所詮私は、色気より食い気なのであります。
どすこい。


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