BIGBOSSの船に乗って、そしてドラ8位9位ルーキーがスターへのステップ

2022年7月2日、札幌ドームでの北海道日本ハムファイターズ対オリックスバファローズ戦。
この試合は自分が今まで野球場で観戦した中でも屈指の好ゲームで強く記憶に刻まれるものとなった。

バファローズそして日本のエース、今シーズン既にノーヒットノーランも達成しライバルチームの数々の強打者をものともしない山本由伸から、6回途中ヌニエスの代打として登場しライト方向に2点タイムリーの大金星を上げたのは、2021年ドラフトの78番めラストにファイターズが9位で指名した、社会人ルーキーのNTT東日本出身の上川畑大悟(かみかわばた・だいご)だ。
まさにあの一球で試合の空気を大きく変えた瞬間にドーム観戦で立ち会えたことは後世に語り継ぎたい程の体験だ。

上川畑選手は体格は小柄で、どちらかというと内野の守備力の高さを買われスカウティングされたショートの即戦力選手。しかし本人はこの日のヒーローインタビューで走攻守の全てでチームに貢献したいと応えているので、今後の活躍次第ではライオンズの源田壮亮やホークス今宮健太にも比肩する逸材と期待も高まる。

2016年の日本一以降、ファイターズはガタガタと音を立てるように一気に弱くなった。
ファイターズファンがどうポジティブに捉えようとも、結果的には言い訳ができないまでにその姿は野球チームらしさというか根幹が年々痩せ細っていくようにさえ映っていてとても悲しかった。

2016年のオフ大谷翔平がポスティングシステムを利用してロサンゼルス・エンゼルスに移籍=ハムの弱体化、だけではなく、それまで機能していた育成のシステムが順調に循環しなくなっていたり、その後毎年のように主力選手がFAやトレードでチームを離れ、歯の抜けた櫛のように少し寂しい戦力で野球を戦わざるを得なくなっていた。うちのチームは補強じゃなくて補弱ばかりだとネット上ではキツイ言葉でフロントを揶揄しているファンもいた。

2021年オフ限りで栗山英樹監督が退任、次にファンが驚かされたのは稲葉篤紀GM就任直後の新監督発表だった。後任は新庄剛志氏と。
引退後野球界からは一線を画し全く別の活動をしていたが、もう一度野球がしたいと、2020年のトライアウトに挑戦し戻ってきた。とはいえ選手として各入団のオファーはなかった、そんな新庄剛志が、である。
2021年11月4日の新監督就任会見。当然誰もが想像するような通り一遍のものではなく、彼流で前例のないそれだった。
全身真っ赤でタイトなスーツ姿で登場、白い襟がこれでもかとばかりに立っていた。
自分のことは監督ではなく「BIGBOSS」と呼んでほしい。就任してすぐから優勝なんかは絶対に目指さない宣言は波紋を呼んだ。

会見直後から彼を知る元チームメイトやOBからは「新庄は世間のド派手なイメージとは全然違って、しっかり野球を見ているし人間観察もできるし何より礼節を大切にする人。意外と監督としては適任かもしれない。何をやるかはわからないけれど」等の声も出てきていた。
思えばこのチームは前任の栗山監督も就任直前まではキャスター・野球解説者で、引退後現場を離れ以降コーチや球団職に関わった経験がなく、各野球解説者や野球ファンから「現場、コーチ経験のない栗山さんに監督が務まるのか?」と首を傾げる感想が各方面から聞こえてきていたのだから、この球団は誰もやったことの無いことに挑戦すると決まると行動は早い。2002年の東京から北海道への本拠地移転発表だってある意味では青天の霹靂だった。

前後して2021年10月11日のドラフト会議。ファイターズの指名1位は天理高の達孝太投手。ここはある程度予想はできた。将来はメジャーに挑戦したい意欲を持ち大谷翔平同様長身から強い球を投げ下ろすスタイルの素材育成型。以降の指名は高卒、社会人、大卒と育成と即戦力のバランスを取りながら進んでいく。
例年と違ったのは他の球団が早々と指名終了する中、ファイターズは最後ドラフト9位まで指名し、育成ドラフト4位の計13人を指名した点。
結果指名13名全員と入団交渉が成立し契約。
2022年札幌ドームラストイヤー、来たる2023年の北広島新ボールパーク移転元年へ向けて、選手間の熾烈なポジション競争の火蓋が切って落とされることとなった。

2022年シーズンの開幕投手は大方の予想を覆し、ドラフト8位ルーキーの京都産業大学出身 北山亘基(きたやま・こうき)を新庄BIGBOSSは指名した。2月のキャンプでは折に触れて北山のコントロールの良さを絶賛していたが、エース上沢直之でも昨年2021年鮮烈なデビューを飾った伊藤大海でもなく、左の技巧派加藤貴之でもなかったことは意外だった。
新庄BIGBOSSは今シーズンは状態が良いと思う選手はどんどん起用し競争させると明言し、実行している。ベテランだろうと若手だろうとルーキーであろうと関係なく。

北山は開幕戦3月25日対ホークス戦では勝ち投手にこそなれなかったものの、4月6日の対マリーンズ戦でプロ初勝利を上げるとその後は抑えの場面での起用が増える。交流戦最初のカード対スワローズ戦の熱闘では2試合連続のサヨナラ負けを食らった。

ここまでのファイターズの戦い(7月3日現在)は首位ホークスと14.5ゲーム差の最下位。
だが、今シーズンは本塁打数が現在リーグトップ59本である。今まではホームランを量産するチームカラーではなかったのだから、少しこの数字には嬉しい戸惑いもある。

活躍したら、北山亘基は さいこうき!
上川畑大悟は’神’川畑になる。

たとえドラフト指名が下位・育成の選手であっても眩しく輝ける日が来ることを信じて。応援し続ける。


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