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日本で食べるマクルーバ⑧横浜「アル・アイン」

アラブの炊き込みご飯「マクルーバ」の食べ歩き8回目は、港ヨコハマへ。横浜・伊勢佐木長者町の「アル・アイン」に行ってきた。夕方から冷え込みが厳しくなり、店についた頃には、小雪が舞い始めた。

「アル・アイン」のマクルーバ

まず、驚いた、というか、他店と明らかに違っていたのは、日本ではたいてい捨てるカリフラワーの茎を使っていたことだ。よく火が通っていて柔らかく、じんわりと野菜のうまみが伝わってくる。羊肉も格別に味わい深く、ナス、じゃがいもも味がしみていた。感動すら覚える。

マクルーバは、シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナからなるいわゆるシャームの地(シリア地方)の郷土料理。「アル・アイン」のオーナーシェフ、ジヤードさんはレバノン出身なので、彼にとって、まさにふるさとの味ということになる。アラビア語で「ひっくり返されたもの」の意味で、鍋で炊いて、ひっくり返しして皿に盛る点が、この料理のキモだ。ジヤードさんの鍋をあげる時の真剣な表情が、印象的だった。緊迫の瞬間がこちら。

鍋をひっくり返してマクルーバが現れた

動画でみるとはっきりわかるが、鍋を外して少しすると、ご飯がホロホロと崩れていった。コメの炊き具合が、固くもなく、柔らかすぎもせず、絶妙な塩梅だということが、この動画をみるとよくわかる。1995年から30年近く、横浜でアラブ料理を作り続けるカラムさんの腕の確かさが、表れている。

提供の順番は前後するが、前菜を紹介。ひよこ豆ペーストのホンモスと、ナスとゴマ(タヒーニ)を使ったペーストのムタッバルを頼む。このマクルーバ食べ歩きで、だいたい最初に頼む2品ということになる。店によって結構味がちがうので食べ比べが面白い。「アル・アイン」のホンモスは、酸味がきいていた。ムタッバルのほうは、スモーキーな風味がかなり強くて好みの味だった。

ホンモス
ムタッバル

サラダは、イタリアンパセリをふんだんに使う「タッブーレサラダ」を頼んだ。これもシリア地方を代表する料理だ。ここのものは、ひきわり小麦ブルグルが入っていないように見えた。あえてそうしているのかも知れない。トマト、タマネギがジューシーだったのが印象的。

タッブーレサラダ

マクルーバを「味変」させるものとして、ジヤードさんから「キュウリ入りヨーグルト」をすすめられた。これが相性ばっちり。さっぱり感のある冷たいスープといったもので、かけるとマクルーバの味が一変した。この変化でさらに食が進んだのだった。ジヤードさんからは、唐辛子ソースも提案されたが、断然ヨーグルトのほうが合う。

マクルーバにかけるヨーグルト

「アル・アイン」にはアルコール飲料が置いてあるので頼んだ。ビールは、モロッコの「カサブランカ」、チュニジアの「セルティア」もあったが、やっぱりレバノンの「アルマザ」にした。ワインもレバノンワインの「クサーラ」の赤があったので頼む。シリア地方の雰囲気と味が楽しめる店だ。

アルマザビール

デザートは、これまたジヤードさんにすすめられて、「クナーファ・ナブルシーヤ」。アラブ圏でポピュラーなお菓子「クナーファ」のパレスチナ・ヨルダン川西岸の街ナブルスのスタイル。小型のホールケーキぐらいの大きさ。これをシェフみずから切り分ける。別皿で、「追いシロップ」もつけてくれたので、かけてみたが、不思議にも甘さは控えめだった。

クナーファ・ナブルシーヤ

最後はミントティー。さっぱりとした気分で、マクルーバ食事会を終えることができた。店内は広々していて、ゆったりとした気分で食事を楽しめる。アラブの弦楽器ウードなども飾られていて、情緒もある。横浜在住でなくても、足を運ぶ価値のある店だと感じた。

店内ぬ飾られていたアラブの弦楽器ウード
アル・アインの看板

これでマクルーバ食べ歩きも8軒目まで来た。年をまたいで、思えば結構食べてきた。フィナーレの10軒目は、「パレスチナの思い出を語り合う」イベントも兼ねることにしている。この食べ歩きの大きな目的の1つが、パレスチナの食を通じて、パレスチナを知るきっかけを提供する、というものだからだ。


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