父の直し方
以前、実家の母が「台所の照明が調子悪い」と言っていました。
古い照明器具のため蛍光灯の接触部分に不具合があったようなのです。
実家は築130年(!)の古い家で、あちこち何度かのリフォームをしつつ、後期高齢者の両親が二人で暮らしています。
その後しばらくしてわたしが帰省した際に、母がニコニコしながら言いました。
「この前話した台所の照明のことなんだけど。
あれ、お父さんが直してくれて調子よくなったんだよ。ふふふ」
それを聞いて、(へぇー、父、すごいなあ、直しちゃったんだー、80代とはいえ父もまだまだ頼りになるなあ)と思いながら、台所へ行ってその照明を見上げたわたし。
すると……
お寿司にくっついてくる少量パックのワサビを、蛍光灯の接触部分に挟んだだけ。
これでなぜ調子が良くなるのかはまったくの謎ですが、「直した」わけじゃないですね。
このままだとなんだか危険な気がするし、その錆びと汚れから漂う長い長い歴史とやさぐれ感、明らかに照明器具自体の寿命による劣化と思われるので、速やかに交換すべし。
実家は古い家だし、照明もかなり年季の入ったものだけれど、それに比べると天井は意外に綺麗。
聞くと、母が流し台に登って天井を磨いているとのこと。
けっこう元気です。
80歳間近の母が、流し台によじ登って磨く姿を想像して、「まだまだ元気」と安心する気持ちと、「足を滑らせたら……」と心配する気持ちが複雑に入り混じります。
離れて暮らす年老いた両親への心配は尽きないけれど、とりあえず、まずはワサビ以外の対策が急務と感じた実家の照明は、その後新しいものに取り換えられました。
ワサビ、お疲れさまでした。
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