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語るよりも多く

中学生の頃に使っていた缶ペンケースに、英文が書いてありました。
単語の意味など考えず、シンプルなデザインが気に入って買ったのですが、使い始めてだいぶ経ったある日、ふとまじまじとその英文を眺めたわたし。

それはこんな感じの文章でした(うろ覚えなので正確な英文は不明)。

You have two eyes and two ears, but only one mouth.
So, you should look and listen more than you talk.

ずっと後になって、これが「語るよりも多く見て聞け」という意味の有名な言い回しだと知るのですが、中学生だった当時のわたしは単純に訳して、「あなたには2つの目、2つの耳がある、しかし口は1つだけ。だから話すよりもたくさん見て聞くべきなのだ」という感じで理解。
そして、「ほ~、なるほどね~たしかに」と感心しました。

でもその直後、中学生のわたしは思ったんです。
「鼻は?」と。
目・耳・口以外にも、顔のど真ん中には鼻が鎮座しており、これはどう捉えればいいのでしょう?
パーツとしては1つだけど、穴は2つあります。
口と同じく「1つ」と考えて嗅ぐのは控えるべきなのか、それとも目や耳と同じく「2つ」と考えて「よく嗅ぐ」べきなのか?

それで気になってちょっと調べたら、鼻の穴が2つあることで、左右それぞれの穴でとらえた嗅覚のわずかな違いによって匂いの元の方向を感知できるそうなのです。
穴が複数あることには、詳しい情報を得るという立派な意味があるらしい。
それなら鼻も、目や耳と同じく「2つ」とカウントしてよさそうです。
異臭をいち早く感知するという危機回避のためにも、「語る」よりは多くすべきこととして、どんどん嗅ぎとっていくべきなのですね。

季節が変わる時、時代が変わる時にも匂いがあるものです。
まだセミが鳴き例年になく高温が続く標高1100mの高原の森でも、すでに秋風の匂いがしているし、当店内には珈琲の香りが漂っています。

どうぞ語るよりも多く、自然の景色を眺め、風の音や虫や野鳥の声に耳を傾け、季節と時代の移り変わりを感じながら、薫る淹れたての珈琲をお楽しみください。

長野県では夏休みがすでに先週のうちに終わりました。
9月に入ると高原はすっかり閑散として、次の紅葉シーズンまでは静かなものです。
夏のピークを乗り越えて、ちょっとした達成感を感じている朝です。


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