#1570『乃木坂46結成10年。そして』

#1570『乃木坂46結成10年。そして』

2021年8月21日。乃木坂46は結成から10年を迎えた。そんな乃木坂46を語る上で、今振り返っておきたい3つのキーワードは「AKB48」「ネガティブ」「継承」である。

乃木坂46は「AKB48の公式ライバル」として誕生した。オーディションが開催された2011年夏は、AKB48「フライングゲット」が発売されたタイミング、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの頃。当時としてはそんなAKB人気にあやかった企画の様相は否めなかった。そんな中、3万8,934人の応募の中から36名が選ばれた。今振り返ると、デビューシングル「ぐるぐるカーテン」を始め初期の頃より楽曲や衣装に独自のブランディング性は感じられたものの、レギュラー番組に於いては「AKBあっての乃木坂」という比較対象の存在としての価値観が色濃かった。たまの音楽番組に出る際も決まり文句の様に「公式ライバル」のレッテルが付き纏う。あの頃の彼女たちはその恩恵は受け入れつつ、反面「乃木坂らしさ」を確立しようと藻搔いていた。そう表立った清楚な佇まいの裏には、負けず嫌いでギラギラしていた彼女たちの戦いがあった。そして様々な経験を重ね、彼女たちは独自の路線を歩んで行く。


西野七瀬の登場。AKB48と分岐点。そして乃木坂46のブレイクの中心には彼女がいた。か弱くどこか物憂げな新たなセンター像「ネガティブ」。生駒里奈や白石麻衣も知ればネガティブな個性の持ち主だと理解出来るが、あくまでも外から見たパブリックイメージとして、西野七瀬のそれは際立っていた。以降、乃木坂46に於いてネガティブは肯定された印象さえある。自身の番組での選抜発表。初めてセンターに選ばれた誰しもが「自信がない」と口にする。でもそれがまるで「乃木坂46センター属性」かの様にも感じられた。彼女たちのドキュメンタリー映画でもそうだ。そこで語られた過去。極度の人見知りだった子、不登校になった子、そもそもアイドルに興味がなかった子。全員がそのカテゴリーという訳ではないが、乃木坂46全体に漂う雰囲気は「元気さ、明るさ」より「大人しさ、儚さ」の言葉が似合う。でもそのイメージこそが、明確にAKB48との差別化に繋がり、そして彼女たちの活躍はいつしかAKB48の公式ライバルという名札を置き去りにした。

以降の彼女たちの大躍進は語るまでもないだろう。そして10年間そんな彼女たちを見続けて来て今思うこと。

乃木坂46は、弱さでも輝ける場所。

彼女たちは、自分の弱さ・自信のなさを自覚しながらも懸命に活動している。喜びより辛い日々の方が多い様にも感じる。そしてそんな等身大の心は、私達にも深く共感する。時に乃木坂は高嶺の花だと言われる。でも私はこう思う。乃木坂46は寄り添ってくれるアイドルグループだと。

彼女たちに出逢えて、本当に良かった。
10年が経った今、心からそう思っている。


そして、今後の乃木坂46は「卒業」がキーワードになるだろう。だが1期生・2期生のそれは自然な摂理だとも言える。そしてこれからの未来は3期生・4期生、そして5期生へと受け継がれて行く。古来伝統芸能に於ける「継承する」という意味は、これまでの伝統文化を守りつつ、新たな挑戦を続ける事であると耳にした事がある。私も歳を重ね「あの頃の乃木坂は良かった」と口にする事が増えた。自然と離れ行くファンも少なくないだろう。それでも大切なのは、あの頃の乃木坂を追うのではなく、君たちが主役の乃木坂を描いて欲しい。乃木坂らしさより、自分らしくあって欲しい。明日の乃木坂46はもっと魅力的に輝く事が出来ると信じているから。

それが私の心からの願いだ。

乃木坂46の未来図が幸せでありますように。
10周年おめでとう。

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