CAEエンジニアにCAEソフト操作を教えることの無意味さ

メーカー内部のCAEエンジニアに対して私はCAEソフト操作を教えない。それはCAEソフト操作は単なる作業であり、CAEエンジニアの仕事の本質ではないからだと思っているためである。これまでもCAEエンジニアに関する記事をたくさん書いてきて、その中でCAEエンジニアは適応を要する課題を行うと書いてきた。

CAEソフト操作は数値解析作業として技術的な課題であり、ソフト操作をして解析を行うことそのものは、操作を知っていれば誰でもできることであり、CAEエンジニアでなくとも、派遣社員やソフトベンダー、コンサル等に外注可能である。そのため、内部のリソースであるCAEエンジニアを代替可能な作業に割り当てるのは無駄だと思っている。もちろん、お金がなかったりそれだけのボリュームの仕事がなかったりすればCAEエンジニアがやらざるを得ないし、CAEエンジニアも適応を要する課題に取り組むにあたり数値解析作業ができるに越したことはない。しかし、限られた業務時間の中であえてCAEソフト操作を教えたり練習させたりするのは時間の無駄だと思う。今の時代、オープンCAEもあるし、商用CAEソフトも個人利用であれば無料で使えたりするし、操作方法もYouTubeにたくさんアップされていたり、web上に公開されている。私自身も趣味で取り組んでいるが、もし必要であれば趣味の範囲で十分取り組むことが可能である。そのため、誰でも教えられるし、自分自身でもやる気があれば勉強することができるものに仕事時間をあえて使ってCAEソフト操作を教えることは無意味ではないかと思う。それよりも、メーカー内部のCAEエンジニアにしかできないことをしてもらうために時間を費やすべきである。

では、私はメーカー内部のCAEエンジニアに何を教えているのか。それは適応を要する課題に対してどのように向き合うか、ということに尽きる。大きくは二つ。
一つ目は、モノづくり現場をどのように観るのかということ。現場で起こっていることと現場の人が行っていることを観察し、関わり、現場で起こっている目に見えない現象をCAEを使って仮説と検証を繰り返すことで明らかにすることをOJTを通して考えること。具体的には、観察したことからどのように抽象化し初期値、境界値を決定するのか、出てきた解析結果をどのように具象化し現場に生かすのかの考え方を教える(一緒に考える)。
二つ目は、その考えるための自己認識を高めること。感受性を高め、現場で起こっていることを感じるとともに自分の思考にアクセスし、何が起こっているか仮説と検証を自走できるようにOJTを通して経験学習を促進すること。具体的には、自己に向き合う問いかけを意図的に行うことで何を考えどのようにしていくのか答えのない解に応えていく(一緒に考える)。

これまで何人ものCAEエンジニアを教えてきたが、上記はメーカー内部のモノづくり現場でOJTを通してでしか教育できないと思っている。それはまさに「今ここ」で起こっていることを素材に扱い教育することでしか体験することができないから。

他者と関わることを避け、PCの前で黙々とCAEソフト操作をしたい人や、自己と向き合うことから逃げ、考えることを放棄したり他罰的な人は私の教育の対象ではない。そのような人はCAEエンジニアではなく、むしろ派遣やベンダー、コンサルのほうが能力を大いに発揮できると思う。


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