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アナザースカイ、犬吠埼

はじめに

犬吠埼をご存知だろうか。犬吠埼は千葉県にあり、チーバくんで言うところの後頭部の先端に位置する。千葉県最東端にある犬吠埼には戦前に建造された、今でも現役の灯台があり、そこから眺める景色はまさに絶景である。海岸線の出っ張った崖にあるため、海が臨める範囲は180度を超えることもオーシャンビューを最高たらしめている。

私が初めて訪れたのは高校3年の卒業式直前だった。当時仲良くしていた友人と一緒に、度々青春18きっぷで出かけていた。どこへ行こうかと地図を見ながら悩んでいたところ、関東圏最東端(?)に行ってみるのも面白いかもしれないと友人ともに訪れたのである。その時、景色の良さ、風情に感動し、その後も暇がある度に訪れた。毎回、その時最もつるんでいる友人を誘って訪れていた犬吠埼へ、今回は彼女を連れていくことにした。

往路、旅程

某休日
11:14 千葉駅総武本線[発]
13:04 銚子駅総武本線[着]
13:12 同駅銚子駅電気鉄道[発]
13:32 犬吠駅[着]
13:50頃 犬吠埼灯台[着]

往路

最寄り駅から複数回乗り換えたが、運良く全ての電車で座ることができた。2時間も走る総武本線も始発から終点まで座れたため、体力的に全く問題がない。犬吠埼への旅程の良さに車内が空いていることが挙げられる。かつて鈍行のみで大阪へ向かった時も、東北本線を乗り継いで福島県猪苗代湖へ向かった時も、総武本線ほどは空いていなかった。東北本線はスーツケースを引く帰省客と思しき人が多くなかなか座れない。ところが、総武本線は2時間も乗れば終点へ到着する上に、電車でそちらへ帰省する人があまりいないため、乗客はあまりいない。途中、八街駅を過ぎれば車内の乗客の多くが下車することもあって静かな車内を満喫できる。電車旅が好きな父は「総武本線は車窓が面白くない」と言うが、私は長閑な景色が大好きである。これまでもそうだが、今回彼女と出かけるにあたってもトークが途切れることはなく、その点も楽しかった。

銚子電鉄の魅力1

銚子電気鉄道の車両

古めかしい車両もまた趣きがある。この電車は終点から逆方向へ向かう上り線が有名である。「上り線で銚子駅へ向かう」ため、「上り調子」であると、受験シーズンになると子どものために切符を買ってお守りにしている人もいるとか。途中駅に「本銚子」という駅もあり、こちらの駅まで向かう人もいるらしい。運勢の良さそうな電車である。

犬吠駅駅名表示
犬吠駅

海を予感させる駅の佇まいが私たちを浮足立たせる。犬吠埼まで私たちはゆっくり20分ほど歩いたが、実際には10分ほどで向かうことができる。残り10分間をかけて期待というボルテージを高めてくれるのだ。静かな道のりも会話が楽しい。

犬吠埼

犬吠埼灯台

思ったほど高くない。この灯台は大人300円で登ることができる。螺旋状に99段登ると展望台だ。普段から運動していない方は多少息が上がるかもしれない。運動不足の私は息が上がった。ただ、案外99段はあっという間である。

展望台からの景色

多少息が上がったとしても、この灯台には登る価値がある。この日は強風だった。それは大地の逞しさを全身で感じるということである。叩きつけるような潮風を私たちは浴びた。これもまた楽しい。高所から望む海は砂浜から覗くものとは別の景色である。かなり遠くまで見渡せることが犬吠埼のオススメポイントで、どこまでも続く青い景色に息を呑むだろう。この日は雲がほとんどない快晴で、格別の景色だった。

展望台から見下ろす海岸線

崖の脇から階段があり、砂浜へ降りることができる。手前は岩がごつごつしているが、奥には海水浴ができそうな場所がある。テントを張って過ごす家族連れもいた。岩場は波が少ないため海水が澄んでおり、底まで透き通っている。底で手を伸ばすヒトデを見ることができた。

ヒトデ(色合いが毒々しい)

いつも決まって金欠だった私は就職してから多少は余裕が生まれ、今回初めて現地で昼食をとることができた。昔ながらの食堂のような場所で、気さくで朗らかなおばちゃんに迎えられてテーブルについた。近くに漁港があるゆえかはわからないが、スーパーのものとは違って魚がおいしい。味噌汁ではなくお吸い物が添えられていたことも嬉しかった。今回の旅がますます充実したものになった。

現地での昼食(とても美味しい)

都心のように5分に1本も電車が来るわけではなく、1時間に1本電車があるくらいだったので、近くのカフェでしばらく時間を潰した。

銚子電鉄の魅力2

犬吠駅駅名表示

銚子電気鉄道は車掌が車内を巡回する。自動券売機はない。車掌にお金を払って切符を買うスタイルで、レトロ体験を味わえる。

車内路線図案内
吊り広告の代わりに銚子電気鉄道の様々な歴史を知ることができる

復路


銚子駅始発の成田線で帰路についた。成田に近付くと飛行機を複数機目にした。田んぼの水面がまるで鏡のようで、そこへ映る夕暮れが美しく、疲れた私たちを労ってくれた。ほとんどが移動しただけで、現地でもそこまで動いていなかったが、帰りの電車に乗る頃にはやや疲れて眠たい。終点の千葉駅に到着して今回の旅路を終えた。

今回の日帰り旅行を終え、彼女は「ガッツリ海だった」とコメントをくれた。とても満足してくれた様子だった。彼女からしたら鈍行で2,3時間の移動は端的にめんどくさいと思っていただろう。「行ってみてよかった」の一言を聞けて、今回の日帰り旅行は大成功である。

アナザースカイ、犬吠埼

犬吠駅から犬吠埼への道中


犬吠埼は私にとってのアナザースカイと言っても過言ではない。何度も足繁く通い、その時よくつるんでいる友人に度々紹介するほど気に入っている。犬吠埼は都心から日帰りで訪れることができ、ちょっとした非日常体験には最適な場所だ。目的地も然りだが、道中の会話も楽しい。日常生活に疲れたら、また訪れたい。

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