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設計者CAEの今後

設計者CAEとは

CAE解析の目的は設計の妥当性の確認です。一部の実験を代替する役割もありますが、広義には設計プロセスの一環だと言えるでしょう。多くの企業では専門のCAE部門を設置し、解析専任の担当者を配置しています。これは、CAEには専門知識と時間が必要なので、知的財産や技術管理、材料分析など他の専門分野と同様に、専門チームを組むことで効率が向上するためです。

一時期、設計部門とCAE部門の関係がよく議論されました。例えば、設計者はCAE部門の解析結果が設計に役立たないと感じ、一方で解析担当者は設計部門がCAEの価値を理解していないと不満を抱いているというものです。このような分業による問題が認識された結果、ジョブローテーションの導入に加え、設計者自身も簡単なCAEを行うようになりました。これにより「設計者CAE」と「専任者CAE」という概念が生まれました。設計者CAEでは、設計部門の設計者がCADソフトウェアの解析機能を用いて、自身の設計が妥当かどうかを迅速に確認します。一方、専任者CAEでは、CAE部門の解析担当者が専門的なCAEソフトウェアを使用して高度な解析を行います。

CAE部門と設計部門の関係

一部の企業では、CAE部門が設計者CAEの導入に反対する例もありました。その理由として、設計者が適切に解析を実施できるかどうかの不安や、設計者CAEをサポートする負担が大きいことが挙げられます。しかし、CAE解析の需要が増え、CADの解析機能の品質が向上するにつれて、設計者CAEが導入され始めました。設計者が解析を実施し、解析専任者がサポートすることで、互いの理解が進んだという話も耳にするようになりました。また、世代交代によって「CAEなんて信じない」という昔気質の設計者や、「解析以外には興味がない」という職人気質の解析専任者が減ってきたことも影響しているようです。

以前は、CADの解析機能は線形解析に限定されていました。そのため、設計者CAEの範囲は線形解析に留まり、専任者CAEは非線形を含む高度な解析を行っていました。しかし、最近ではCADが塑性や接触などの非線形解析にも対応するようになりました。時代とともにツールは使いやすくなり、カスタマイズ可能なものも増えたので、複雑だったツール操作の問題は小さくなりました。さらに、CAE部門で高度な解析を経験した設計者も増えているため、設計者CAEの役割は今後変化する可能性があります。

設計者CAEの今後

本来、設計者は自身の担当製品の挙動を十分理解しておく必要があります。例えば、使っている材料が想定される使用条件でどう変化するのか、摩擦や熱伝達が性能にどう影響するのかを工学的に理解し、信頼性の高い設計をしなければなりません。以前は、定量的な評価が難しい領域は、CAE部門や実験部門が評価を担当していたため、設計者がその詳細を深く理解していない場合もありました。しかし、解析が容易になるにつれ、設計者と解析専任者の間の距離は縮まり、双方に求められる知識は広がり、重複する部分も多くなります。今後は、設計者も解析専任者も、ツールの使いこなしなどではなく、各種の工学知識に基づいて、製品やその評価方法の議論ができる能力が重要になると思います。

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