「カディスはスペイン人にとって第二のクラブ」の真相に迫る、カディスCF役員インタビュー
カディスCFのことは中の人に聞くのが一番早い!
ということで今回は、カディスCFの役員であり、ビジネスサイドの実質トップであるキケ・ペレス氏 (Mr. Kike Pérez) をゲストにお迎しました。
※本記事は2020年5月に配信した音声取材を記事化したものです
(キ=キケ・ペレス氏、CJ=カディスジャパン)
※インタビュー全編を聴きたい方は最下部から聴くことができます
カディスCFに来るまでのキャリア
「弁護士の道を辞め、今では約20年間サッカー界で働いています」
CJ:いよいよ本国よりクラブの中の人にお話を聞ける回となりました。どうぞよろしくお願いします。まずはキケさんの自己紹介をお願いします。
キ:よろしくお願いします。私はスペイン北部にあるビトリア出身で、ビルバオの大学で経済について学び、2000年からアラベス(=デポルティーボ・アラベス)で9年間、初めは弁護士として入り、最終的にはディレクター補佐を務めました。その後アルコルコン(=ADアルコルコン)に移り、10年間ジェネラルマネージャーとして働き、昨年7月からはカディスの役員として務めています。約20年間サッカー界で働いていることになりますね。
CJ:具体的にはどんな業務に就いているのでしょうか
キ:マーケティング全般をみていますが、新しいビジネスを探してきたり、国際的な部門も担当しています。アルコルコンのディレクターを務めていたこともあったので、将来有望な若手の発掘などもしています。
CJ:ビルバオで経営について学んだ後アラベスに行ったということですが、最初の就職がサッカークラブだったのでしょうか
キ:はい、そうですね。2000-2001シーズン、当時UEFAカップ決勝でリヴァプールと対戦した年に入りました。5-4で負けてしまいましたが。
CJ:スペインのサッカー界への就職状況についても知りたいです
キ:サッカー界で働くことは、今の若者たちにとっては難しくないことだと思います。なぜなら、サッカークラブの規模は年々大きくなっていて、20年前にはなかったような様々な部門が立ち上がっています。例えばエンジニアであったり、統計学者であったり、栄養士、心理学者、さらには足の専門医などにも広がりを見せています。新しいテクノロジーを学んだ若者たちにはたくさんのチャンスがあると思います。
CJ:キケさんはなぜサッカー界に入ったのでしょうか
キ:私の父も弁護士だったのですが、法律を学んでみてそこまでその分野が好きになれませんでした。ですがスポーツが好きだったので、マドリードの大学院でスポーツ法律学を学びました。その後アラベスの友人家族の元でインターンを行なった際縁あってこの職種に就いたのがきっかけです。法律事務所を構えるつもりもなかったので、今のような仕事をしていることは当時は夢にも思っていませんでした。
カディスCFというクラブについて
「カディスCFはスペイン人にとって第二のクラブだ」
CJ:クラブに関する質問に移りたいと思います。カディスがどういうクラブなのか、哲学や成り立ちについて教えてください
キ:カディスはスペイン有数の歴史あるクラブで、昨年9月に設立110周年を迎えました。カディスの人々にとってはもちろん唯一無二のクラブですが、他の地域のスペイン人にとっても第二のクラブと言える存在だと思います。親近感があって、スペイン人みんなが知っているクラブですね。私はまだ就任して1年経っていませんが、育成年代に才能がある選手が多いとも聞きます。また、有名選手も多く輩出しており、エルサルバドル出身のマヒコ・ゴンザレス選手(=ホルヘ・アルベルト・ゴンザレス・バリジャス)はラ・リーガ全体をみても大きな功績を残した選手の一人と言えるでしょう。彼についてはマラドーナも以前語っていました。
CJ:カディスの特徴として情熱的・親近感があるとのことですが、以前いらっしゃったアルコルコンと比べてどうですか
キ:歴史の重みがそれぞれあるので一概に比較はできないですね。あえて言えば、アルコルコンは1971年に設立された比較的若いクラブと言えます。両クラブとも2部に在籍していますが、私がいたアラベスや今現在いるカディスは1部にも在籍したことがあるクラブで、昇格や残留争の経験も持ち、1部時代は代表選手も在籍していました。全てのクラブがプロとしての働きを求められますが、クラブの歴史やファンの規模を考えるとカディスの方がプレッシャーは大きいかもしれません。
CJ:ラ・リーガ2部の中でカディスの規模はどれくらいのものなのでしょうか
キ:カディスは17,000人以上の会員と100年近い歴史もあり、1部在籍経験もあります。ラ・コルーニャ(=デポルティーボ・ラ・コルーニャ)やサラゴサ(=レアル・サラゴサ)、ヒホン(=スポルティング・デ・ヒホン)やマラガ(=マラガCF)などと同等で、上位に位置付けるクラブと言えると思います。
CJ:カディスは金曜開催にも関わらずスタジアムが満員になることもあります。2部所属、地方クラブであるにも関わらず熱狂的なサポーターがついていますが、なぜでしょうか
キ:カディスは西洋の中でも古い街の一つで、歴史的にも重要な町であることに市民も誇りを持っています。街並みも美しくて、スペイン全土から人が訪れます。スポーツにおいてはサッカー以外プロと呼べるものがなく、サッカーが王様のような位置付けで宗教みたいな感じですね。最後に1部に昇格した時は、ファン会員数がホームスタジアム、ラモン・デ・カランサの収容人数を超えてしまったこともあったようです。1部だろうが3部に落ちようが、市民はカディスのことを誇りに思っています。私は常々、サッカークラブはサッカーという枠に収まらず、街の人たちの誇りとも言える存在になっていると感じています。
CJ:先ほどカディスはスペイン人にとって第二のクラブであるというお話がありました。特殊なポジションかと思いますが、そのようになったターニングポイントはなんだったのでしょうか。そしてそれは狙っていたことなのでしょうか
キ:カディスという街は喜びや笑いに溢れていて、休暇を過ごすには適した場所であり多くのスペイン人が訪れます。サッカーも同様に歴史が深いだけではなく、チャント(応援歌)も面白おかしく、またリスペクトもあって、スタジアムを笑いで包みます。人、街、クラブが優しい、その全体的な雰囲気がスペイン人みんなにカディスを昇格させたいと思わせる理由だと思います。
CJ:日本でカディスに近い街はありますか
通訳:沖縄に大阪人が住んでいる感じだと思ってください(笑)
↓カディスCF発祥のチャント(応援歌)↓
グローバル展開、そして今後のビジョンとは
「日本人を含め、全ての国にポテンシャルがある」
CJ:カディスのグローバル展開について ー 多言語で情報発信もしていますが、各国の活動内容などを教えてください。
キ:昨年9月にインド、11月にUEA、11月の下旬にホンジュラス、今年1月にチュニジア、再びインド、2月にモロッコに行きました。全ての国で行なったのはセレクションです。優秀だった選手と希望した選手を約1ヶ月間練習に招待しました。座学と実践を含んだ指導者講習会を実施したり、また現地の大使館や領事館にも挨拶をしました。
CJ:ラ・リーガでは日本人選手が多くいますが、カディスとして興味はありますか
キ:もちろんあります。ですが、サッカーはグローバル化されているので、出身国関係なく能力がある選手であれば契約をしていきたいと思っています。
CJ:海外でセレクションをしたというお話でしたが、強化が主な目的だったのでしょうか
キ:そうですね。それ以外にもスポンサー探しや他クラブとの交流も目的でした。
CJ:海外での選手探しをする時、何が基準になるのでしょうか
キ:3点見ます。1つは純粋な才能、2つ目は判断力の速さ、3つ目は戦術理解度です。パーソナリティも重要な点ですが、選手の性格を数日間のドラフトで見抜くのは難しいので、それはスペインに来た後に見ていきます。
CJ:グローバルマーケティングが進んでいる国はどこだと思いますか
キ:日本を含めた全ての国ですね。新型コロナウィルスの状況が収束すれば日本にも行きたいです。ポテンシャルのある国ばかりなので、これからの活動が楽しみです。
CJ:最後の質問です。カディスの5年後の目標を教えてください
キ:サッカーを学ぶほど1シーズンの大切さがわかります。さらに言えば一試合の重要性も感じます。スペインリーグはレアルとバルサをはじめ競争力があるリーグで、毎試合が勝負になってきます。一般企業としての目線で言えばスポンサーを増やしたり、優秀な人材を育成したりビジネスの成長を目的としますが、スポーツ企業の目線で見れば一年ごと、毎週が勝負です。スペインの全てのクラブが5年後を語るのはなかなか難しいと思いますね。
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