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カディスCFコミュニケーションディレクターが、クラブSNSチャンネルのエンゲージメントの高さとその戦略を解説!

カディスCFのことは中の人に聞くのが一番早い!
今回は、カディスCFのコミュニケーション部ディレクター、ホセ・グリマ氏 (Mr. Jose Grima) をゲストにお迎しました。

※本記事は2020年8月に配信した音声取材を記事化したものです
(取材日 8月、ホ=ホセ・グリマ氏、CJ=カディスジャパン)
※インタビュー全編を聴きたい方は最下部から聴くことができます


ラ・リーガ再開後の振り返り

「カディスは勝負強いチームでホームでの負けが少なかった。昇格できて本当に嬉しいです」

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CJ:まずは何より1部昇格おめでとうございます!本日はどうぞよろしくお願いします

ホ:ありがとうございます!コロナの影響もあって今シーズンは長くて厳しいシーズンでしたが、カディスを支えてくれているみなさんの力もあり、私たちの目標であった1部昇格を果たすことができて非常に嬉しく思います。

CJ:中断期間はチームにどういった影響を及ぼしましたか

ホ:まず初めに、この状況は誰にも予想できなかったことで、中断期間や隔離措置は必要な時間だったと思います。中断明けに残っていた11試合を”ミニリーグ”として捉えて戦えたのがチームにとっては良かったと思います。カディスは勝負強いチームの一つですし、特にホームゲームで負けることが少なかった。ファンの人たちがスタジアムに来られない状況は寂しかったですが、リーグが再開できたことでチームとしての指針が持てたことは非常に嬉しく思っています。今シーズンは本当に困難なシーズンでしたが、これは私たちだけではなく他の2部に所属している21クラブ全てに対して言えることだと思います。カディスCFとしては前に進むことを目的としていました。もしかしたらそのままリーグが終了していた可能性もありましたが、強豪を押しのけて昇格できたことを嬉しく思います。


カディスCFに来るまでのキャリア

「クラブの中を知らないと本当の意味でサッカーを知っているとは言えないと感じた」

CJ:改めて、自己紹介をお願いします

ホ:5年前にカディスCFに加わり、コミュニケーション部門の代表を務めています。当時は2部Bに所属していましたね。なので1500日あまりで2回の昇格を経験できました。元々カディスのラジオ局、Onda Ceroのスポーツ部門責任者で、その他にもスペインのスポーツ紙asやmarca、8つの地方局のスポーツ部門にも関わっていました。カディスCFでは全ての広報・広告・デジタル業務に関わっています。

CJ:カディスCFで働くきっかけは

ホ:カディスの社長からオファーがあったことがきっかけです。元々キャリアであるジャーナリズムを捨てるという気はなかったのですが、今まで記者やラジオDJとして発信していたことは外から見た情報であって、クラブの中から実情を見たことがないという点に気付きました。クラブの中を知らないと本当の意味でサッカーを知っているとは言えないと感じたのです。一つ例をあげると、選手が発言する際その見え方は多くの場合間違っていることがあります。(ファンは)選手がピッチ上でスペクタクルなものを見せてくれると期待しますが、実際は一人の人間で、愛情やクラブや周りの人の支えが必要です。サッカー選手は足だけではなく頭を使っているので、そういった本質を捉えて支えていきたいと思っています。

CJ:ホセさんはカディス出身ですか

ホ:カディス出身です。ディレクター陣はセビージャなどの周辺地域出身ですが、今はカディス出身は私だけです。


SNSの戦略と実績について

「カディスCFのSNSフォロワーはとても忠実で、スペイン国内で高いエンゲージメント数を出しています」


CJ:カディスCFのSNSフォロワー数はラ・リーガでトップ10に入るぐらい多いですが、その秘訣は

ホ:まず、カディスCFは創立110年というスペインの中でも歴史のあるクラブの一つです。1980年代の黄金期にはマヒコ・ゴンザレス(=ホルヘ・アルベルト・ゴンザレス・バリジャス)のようなマラドーナからも自分より上手いと評された選手が在籍していたり、夏の間行われるラモン・デ・カランサ杯は世界的に見ても由緒ある夏のカップ戦です。ペレやヨハンクライフもプレーしていました。カディスのサポーターは非常に忠実です。カディスCFはスペイン全体でも愛されていますし、各国のSNSチャンネルがあるのも愛されている証拠だと思っています。日本や中国、アラブ諸国で展開し、南米では第2のカディスと呼べるほど高いエンゲージメント数を出せていて、それがフォロワー数の獲得に繋がっていると思っています。

CJ:他のクラブと差別化を意識していることはありますか

ホ:1つはマーチャンダイジングといったマーケティング手法を使ってより多くの情報を様々なSNSに載せること。月に4,000〜5,000ぐらいの投稿をします。あとは魅力的な画像や動画を使い多言語で発信しています。カディスがどこにあって、どんな街で、何をしているのか興味を持ってもらい、ファンの獲得に繋がっていっています。SNSの発信に関して3つの評価をしています。社会的評価が上がること、カディスのファンがクラブに関わりを持ってくれるようになること、そしてフォロワーが増えて世界でファンを獲得していくこと。日本がいい例ですね。

CJ:SNSだけが領域ではないと思うので、普段の業務やミッションについて全体感を教えてください

ホ:クラブに関わる全てのメディア業務ですね。リーグとの窓口や、試合当日には運営側との調整も担い、例えば照明の配置などについても指示を出しています。

CJ:スペインだけではない各国でアカウントを開設していますが、その理由とSNS上のグローバル戦略があれば教えてください

ホ:現在Twitterは西・英・仏・日・印・UAEなどにあります。Instagramが西・日、Facebookやtik tokもありますが、中国やロシアではその国独自のSNSも立ち上げています。スペイン全クラブのSNSエンゲージメントをランキング化したものがありますが、今月(8月)の結果を見て分かるようにカディスCFはエンゲージメント数で8位に入り、バレンシアやビジャレアルといったUELに参戦するクラブよりも高い数値を示しています。TwitterやFacebookの他にも、ロシアでは独自のメディア、VKのアカウントを持っていたりもします。レアルやバルサ、セビージャ、ベティスなどの大きなクラブとSNSの結果で渡り合うには、たくさんの情報を掲載していかなければなりません。投稿数もバルサより多く、セビージャ・ベティスといった同じアンダルシアのクラブと比べても約3倍の数のコンテンツをポストしています。他のクラブをリスペクトした上で比べると、私たちよりフォロワーが多いクラブと同じレベルのエンゲージメント率を誇っています。カディスのフォロワーは忠実で、エンゲージメントをスコアにした場合、1部に在籍しているほとんどのクラブよりも高い数値を出しています。

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CJ:マジョルカのエンゲージが高いのは久保建英のおかげでしょうか

ホ:マジョルカにはドイツ人、イギリス人が多く住んでおりその影響が大きいですね。それでもカディスがレアルよりも上で、アトレティコの10倍、ビルバオの2倍、バレンシアの10倍という数値が出ているのはカディスのフォロワーが忠実なカディスタであることを示しています。スペインではバルセロナがSNSの活用でトップですが、カディスも大差ない結果を出しています。カディスは2部リーグの中でも秀でており、昨シーズンはピッチ上でもSNSの数字もトップでした。マーケティングやマーチャンダイジングの面で、フォロワーに適切な情報を届けることも心がけています。フォロワーを増やすにあたり、プレゼントキャンペーンの実施などは簡単で効果的ですが、重要な情報をたくさん届けていくことでクラブのことを知ってもらい、その上でフォローしてもらうことが大切だと考えています。

CJ:投稿数も多くリソースが必要だと思いますが、全て内製ですか?

ホ:コミュニケーション部には3人いますが、全てこのメンバーで行っています。日本語など全くわからない言語に関してはみなさんのような方々に力を借りますけどね(笑)。

CJ:内製でこれだけやっているのは素晴らしすぎます(笑)日本語のアカウントに関しても、スペインのコンテンツをそのまま出すだけではなく、日本人が何が好きかを考えながらやっています


フォロワーを増やした先の狙いとは

「スポンサーへの価値も見出したい。SNSエンゲージメントにおいては、カディスはラ・リーガで7番目に影響力があるクラブです」

CJ:フォロワーを増やすことだけが目的ではないと思います。カディスを知ってもらった先の戦略について聞いてみたいです

ホ:フォロワーが増え、エンゲージメントが高まったらまず私たちのスポンサーに向けた位置付けが高くなりますね。投稿数に対してのインプレッションなどを数値化することで、スポンサーの皆様に対してこのクラブがこれだけ価値があるよという見せ方ができます。また、私たちは新しいことにチャレンジすることに怖さを抱いていません。ロシア独自のSNSに関してもあまり期待していなかったのですが、エンゲージメントが思っていたよりも良く、こういった面でも広げていく力があると思っています。新しく出てくるSNSに対してはどんどんチャレンジしていきます。ここがマックスだ、というところがこういった分野にはないので、挑戦を続けていきます。大きなクラブではたくさんの人が働いていますが、決して大人数が必要だとは思っていないです。

CJ:例えば日本ではSNSの結果がリーグからの分配金に影響したりもします。スペインではどうでしょうか

ホ:リーグからの分配金は順位と観客動員数に影響されます。SNSの数も分配金に影響はしますね、なぜならそのエンゲージメント率がリーグへの関心にも繋がりますから。スポンサーも企業名が出れば出るほど買ってもらえるので、カディスは昇格したばかりのクラブですが、ラ・リーガ全体で7番目に影響力があるクラブとして位置付けされています。スポンサーにとって、他のビッグクラブと遜色ない影響力を持ったクラブだと言えると思います。

CJ:それでは最後に来季への抱負と、日本のファンにメッセージをお願いします

ホ:私たちのモットーは、「サッカーは商売ではない」ということです。新しいシーズンはファンのために戦えるNo.1のクラブになりたいと思っています。カディスのファンであることを語ってもらって、常に面白い試合が見られると思ってもらいたいです。そのために1日1日を戦い抜きます。

日本の皆さん、まずはサポートありがとうございます。カディスは世界でいちばんのクラブです。それを誇りに思ってもらえたら嬉しいです。


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#サッカー #ラリーガ #スペイン #スポーツビジネス

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