「きのう、何読んだ?」2024/8/4(日)~2024/8/8(木)
いったい何年振り?というくらい久しぶりに浴衣を着て盆踊りへ。銀座で開催されていた夏祭りに遊びに行ってきました。レモンサワーを飲みながら音楽に体を揺らす…非夏女の私もなんだか心が浮き立ちますね。
『ベル・ジャー』2024/8/4(日)読んだ本
「きのう、何読んだ?」
前情報が何もなくとも、「これはきっと素敵な本だ」と分かる時がありますよね。
『ベル・ジャー』(シルヴィア・プラス著、小澤身和子訳/晶文社)
川上未映子さんがインスタのストーリーでこの本の発売を予告していたのをみて、30歳で自殺してしまった詩人のことも、60年前に発売されて以来430万部以上売れている稀代の名作だということも、「I am I am I am」シリーズのことも何も知らなかったけれど、無条件に私も読むのが楽しみになった。
ピュリツァー賞を(死後に)受賞した詩人、シルヴィア・プラスさんの自伝的小説。シルヴィアさんは初めての長編小説である本作を書き、その後程なくして自ら命を絶ったそうです。
成績優秀の優等生、女子大生のエスターは、ニューヨークの有名雑誌編集部でインターンを始める。都会で出会った華やかな人々、から騒ぎ、うまくいかない恋、思い出される不誠実な元婚約者。次第に精神のバランスを崩した彼女は、精神科医の診療を受けはじめる…。
なんて陳腐な感想だろうと思うけど、エスターがなんだか自分のようで。むなしいむなしいむなしいと、心の中でつぶやく言葉がこだまのように反響して、わんわんと響くその音に自家中毒のようになってしまうエスター。どうしたらここから出られるのだろう…。呆然とする彼女の横顔が、ページの向こうに確かに見えた気がしました。
そして、不謹慎かもしれないけれど、なんて美しい本なんだろう。週末になったらまた読み返します。
さっき数えたら2024年ベストブックは既に10冊に近付いていた。どうしたことでしょう。困ったわ。
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『谷から来た女』2024/8/7(水)読んだ本
「きのう、何読んだ?」
「これ読んだ?」
昔の上司から聞かれた一冊ですが、その人のキャラクターとのギャップが面白く感じてすぐ購入。あぁ確かに、女性作家さんの本を結構読むと言っていたな。桐野夏生さんや金原ひとみさんの話もしたことがあった。
『谷から来た女』(桜木紫乃/文藝春秋)
『アイヌの女性の話だよ」の一言がさらに背中を押す。ちょうど『アイヌがまなざす』を透明書店で見つけて読んだところで、自分があまりにもアイヌについて知らないことを痛感したばかりだった。
桜木紫乃さんといえば、やはり『ホテルローヤル』。
ご自身の実家が経営されていたラブホテルを舞台に性愛を描いた本作で、桜木さんは「官能小説家」というイメージを確立されたと思う。エロスを扱いつつ、ひんやりしたムードが通底にあるという独特の温度感と湿度は、特に女性が読んで心地よいものではないかな。
『谷から来た女』でもそのさらりとした肌触りは健在。赤城ミワというアイヌ紋様デザイナーがその妖艶な魅力で周囲の人たちを次々と魅了していくが、彼らから見たミワはどこまでも一定の距離の先にいる。
ミワのことがどうしても知りたくて、アイヌであることが現代においてどういうことなのかを読者も探り、想像して読み進めることになる。
最初に読んだノンフィクションもしっかり重みがある素晴らしい力作でしたが、こういうふうに人を自然と考えさせる・想像させるのが、魅力的な物語のひとつの機能だなと思います。
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『夕べの雲』2024/8/8(木)読んだ本
「きのう、何読んだ?」
体力が限界に迫ってきました。
これ以上なにも刺激はいらない。そんな気持ちと、ミモレ編集室のお友達の投稿を見て久しぶりに開いたのが、庄野潤三の『夕べの雲』。丘の上の家に住む、夫婦と子供三人の大浦一家の暮らしを描いた小説です。
庄野潤三、大好き。特にこの、物書きの父を中心として一軒家で暮らす日常シリーズがたまらなく好きです。大きな出来事は何も起こらない淡々とした、でも豊かで滋養のある物語。
庭の植木のこと、子どもたちの宿題の進行状況、近所の人々との交流。庄野潤三自身の暮らしぶりが多大に反映された、これも一種の私小説なのかな。夏葉社さんが出している『山の上の家』で写真たっぷりに紹介される庄野さんの住まいは、私の憧れの家であり書斎。山梨で暮らす文筆家、寿木けいさんも庄野潤三が好きだと言っていたような。Instagramで紹介されている寿木さんの暮らしの様子も、いつもうっとりしながら見ています。
いつまで私は、仮暮らしのアリエッティな生活を続けるんだろう。