supercalifragilisticexpialidocious
使い古された表現だが、心が震えるのを感じた。
東急シアターオーブにて上演された『メリーポピンズ』を観劇した。
文字通り、心が震えた。これまでミュージカルを観劇することはほとんどなかったので、今日の体験では、今まで体験したことのあるエンタメから得られる感動とは異なる感動を得られた。涙を流した回数が感動の大きさの尺度になるとしたら、これまでの人生でもトップクラスのものであった。
これは、個人的に印象的だったポイントを記録するものです。
生演奏
当たり前のポイント過ぎるやろ、と言われそうですが、生演奏のオーケストラに合わせて歌う、また、演技中のBGMが生演奏される、というのが驚きだった。
そして、改めて生演奏される音の持つ力の偉大さを感じた。その場で発せられた音が身体に浸透してきて心を揺さぶるのを感じた。
これは、オーケストラに限らず、歌声・ダンスのステップの足音についても同じだ。音が空間をつくり、音によって包まれていく快感って本当にあるんだろうなあという認識を強める体験になりました。
舞台上だけにとどまらない演出
舞台と客席、ではなく、劇場全体をひとつ、として考えている演出がいくつかあった。
星空を見上げる場面では、客席の方にまで照明を使った星を散りばめたり、メリーポピンズが飛んでいく場面では、客席にまで飛んできたり。
こういう演出で、自分たち観客が、ストーリーに没入しやすくなるんだろうなあと感じました。
『メリーポピンズ』のストーリー
『メリーポピンズ』をどのような形でも観たことがなく、ストーリーを全く知らなかった。観劇後、感じたのは「いまだからこそ、メリーポピンズを演ったのかなあ」ということだ。
「見た目で人を判断することがどれほど愚かなことかまだわからないのか」
「愛を持って接しないと愛されない」
「金を生み出すことよりも大切なことがある」
「金の価値は金額ではなく、それをどう使うかにある」
「家族はときどきあべこべになる」
「想像力はどこまでも伸びるゴム」
など、印象的なセリフが多い。
ストーリー・セリフからは、【人としてどうありたいか】とか【人を愛すること】に関わる問題提起がなされているように感じた。
そして、このストーリーの持つメッセージを、生の音・迫力ある歌声・華麗なダンス・観客を没入させる演出を駆使することで、最も伝わりやすく、最も鮮明に、表現できるのが舞台の良さなのかなあと感じた。
メッセージ性のあるストーリーで心を内部から震わせることと、音や演出の迫力で心を外から震わせることのコンボで攻められる。逆に言えば、そのどちらかに油断が出てしまうと、全体としてあまりいいものにはならない。
今日の『メリーポピンズ』は、「周りの人にどう接するか」とか「人を愛すること」とかいうメッセージが個人的に刺さったし、劇場に充満したエネルギーがその刺さり具合を助長した。その結果、心を震わせられっぱなしで、涙も鼻水ダラダラだった。
クサいけど、その現象を、〈supercalifragilisticexpialidocious〉と呼びたい日でした。
[補足]
U25というチケットシステムを利用した。客席を見ても若い人が多く、このシステムを利用している人はかなり多いと思う。チケットが他のエンタメに比べて比較的高価なことを考えると、このシステムは今後のミュージカル業界に貢献するものだと思う。
観客と俳優の一体感を高めるために、劇場の真ん中に客席があって、その周りで演劇が進行していくというものをつくったら面白いかもと考えた。もうあるか?
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