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CACAノオトvol.7 「ARTの現住所④」

書アートとは? 岡本 光平


岡本 光平書「慈母」


筆という、簡単に味のある線が引ける便利な道具に甘えてしまって、かえって線の本質に気づかずにいるのでは…・・・・・。


書を、古典を、科学する方法論がなければいつまでたっても個人的な情緒的見解に終始し、誰でも平たくわかる普遍性が生まれてきません。


色、素材、表現技法と何でもありの直接生理に訴えるアートに比べて、書の墨色は寡黙であり、間接的表現です。しかし書を厳選する人々が多くいてもなぜ滅びないのか、そこを真剣に考えれば答は自ずとあります。


字は誰でも書けるが、“書”は誰でも書けない、そこには古典という伝統のバイブルと鍛練というハードルがあるからです。感性やセンスだけではどうにもならないのが本来の書です。


書が書道であるうちは単なるローカルなエスニックアートです。西洋の伝統にはない線の美しさ、余白の美しさ、東洋の哲学の存在をアピールする。さすればローカルではなく普遍性をもつインターナショナルなアートになるはずです。


書の原点はデザインであり、イラストレーションであり、シャーマニズムです。戦後の少字数や近代詩文や墨象が原点ではありません。


書に材料学や造形学、心理学などの基礎がいまだになくて現代の大衆にアピールできる表現芸術になれるわけがありません。一体、今まで何をやっていたんだと言いたくなります。


欧米の人たちは岡倉天心の予言した通り、東洋の素晴らしさに気づき、東洋に学ぶ姿勢はすでにあります。むしろ嘆かわしいのは肝心の日本人の意識が低いことです。残念ながらその代表が書でしょう。


岡本 光平書「甘露彩雨」

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