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Eagle's Eye 〜第1節vs青森ワッツ〜

第1戦 FE名古屋 85-68 青森ワッツ

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第2戦 FE名古屋 74-79 青森ワッツ

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課題はありつつも地力の差を見せた第1戦と、現時点での弱点をさらけ出した第2戦。
この2試合で何が変わったのか、青森ワッツ側の変化という観点から紐解いていきたいと思います。

1.FE名古屋のディフェンスについて

2試合での青森ワッツの変化を語る前に、まずはFE名古屋のディフェンスの概要について少しだけ説明します。

プレシーズンの試合やこの2試合を見る限り、FE名古屋は「マッチアップゾーン」と呼ばれるディフェンスに近い形を採用しています。
詳細に説明しようとすると本が一冊書けるくらい長くなるので割愛しますが、簡単に言うと、ボールを持っている選手に対してディフェンスの選手1人がマッチアップし、他の4人の選手は人ではなくエリア(ゾーン)を守るというディフェンスです。
マッチアップゾーンの特徴として、マッチアップする相手や守るエリアを固定化せず、オフェンスの選手の位置関係に応じて適宜ポジションチェンジを繰り返すことが挙げられます。このポジションチェンジを適切に遂行できれば、常にボールマンに対してプレッシャーをかけつつ、特に重要なエリアでは1人の選手に対して2人以上の人数でディフェンスできる、というマンツーマンディフェンス(*1)とゾーンディフェンス(*2)のいいとこ取りのようなディフェンスをすることができます。

(*1)オフェンスの選手1人に対してディフェンスの選手1人がそれぞれマッチアップするディフェンス
(*2)ディフェンスの選手5人がそれぞれ定められたエリアを守るディフェンス

では、マッチアップゾーンの弱点はなんでしょうか。それは、「ポジションチェンジを適切に遂行することがとにかく難しいこと」です。
上述した通り、マッチアップゾーンでは「誰を守ればいい」「どのエリアを守ればいい」というのが固定化されているわけではなく、オフェンスの動きに合わせて常に最適なポジションを取ることが求められます。よって、身体だけでなく脳ミソも常にフル回転させなければならず、誰かが間違えれば簡単にフリーの選手を作られてしまいます。
今季のFE名古屋はそんなディフェンスを採用しているということを頭に入れつつ、この2試合での青森ワッツの変化を見ていきましょう。

2.青森ワッツの変化

まず結論から述べてしまうと、青森ワッツの変化は「ゴールにアタックしている選手以外の動きが増えたこと」です。

第1戦の青森ワッツのオフェンス、特に8点しか取れなかった第2Qのオフェンスを見ると、ゴールに向かってドライブをしている選手や、ポストプレーを仕掛けている選手「以外」の選手の足が止まっているシーンが多くみられました。
上述した通り、FE名古屋が採用している「マッチアップゾーン」は「オフェンスの選手の位置関係に応じて適宜ポジションチェンジを繰り返す」ディフェンスです。このため、当然ながらオフェンス側の選手の動きが少ないほどディフェンスは楽になります。第1戦では、FE名古屋のディフェンスを大きく崩すことができたシーンはそう多くはありませんでした。

これに対し、第2戦の青森ワッツのオフェンスでは、ゴールにアタックしている選手以外の選手同士でスクリーンを掛け合ったり、細かいポジションチェンジを繰り返したりしているシーンが増えました。
これにより、FE名古屋の選手たちがポジショニングを間違えることが増えました。ゴールにアタックしている選手への対応に気を取られるあまり、それ以外の選手の動きに気が付かない、または、気が付いていても自分がどこにポジションチェンジするべきかにまで頭が回らないことによるミスです。このため、青森ワッツは、3Pラインの外で完全にフリーの選手を作ることができたり、ディフェンスの選手につかまることなくオフェンスリバウンドに飛び込んだりすることができました。
第1戦に比べて第2戦では青森ワッツの得点が11点増えましたが、ラキーム・ジャクソン選手がフリースローをことごとく失敗した上でのその結果ですので、場合によっては20点近く得点が増えていてもおかしくなかったと思います。

3.今後どうするか

以上のように、第2戦でのFE名古屋の敗戦の理由の1つは青森ワッツのオフェンスの変化に対応しきれなかったことが挙げられると思います。
ただし、「ゴールにアタックしている選手以外の選手が積極的にポジションチェンジをすること」は、さして特別なことではありません。バスケットボールの競技レベルが上がれば当たり前のプレーだと思います。もちろん、それを徹底した青森ワッツが素晴らしかったということにはなるのですが、B1クオリティを合言葉にB2優勝を目指すチームがそれに対応できないようでは、目標など達成できるわけもありません。

一番簡単な解決策は、もっと単純なディフェンスのシステムを構築することです。しかし、それでは個人のスキル・身体能力が低いチームには勝つことができるものの、自分たちよりも個人のスキル・身体能力が高い相手に勝つことはできません。また、試合後の宮崎キャプテンの「自分たちのバスケットができるように準備をしていきたい」というコメントからも、少なくとも現時点でチームの方向性を変えることは考えていないと思われます(まだ開幕して2試合なので当然ですが)。

であれば、今のディフェンスのシステムの精度を高めていくしかありません。鍵となるのは、第一に「普段の練習の質・量を高めていくこと」、そして「試合中のコミュニケーションを増やすこと」だと思います。

「普段の練習の質・量を高めていくこと」については、正直言って個人的には不安が残ります。ACを高村選手が兼任しており、専任のACを採用できていないというチーム事情がその理由です。シーズン60試合およびその後のプレーオフという長丁場を戦う中で川辺HCにかかる負担は相当大きく、選手の指導に割ける時間をどれほど確保できるかが心配です。また、アマチュア選手を複数人抱えているという点も、全体練習の質や量を高める上では足かせになりかねません。
とはいいつつも、もちろん「だから絶対に無理」というものではないので、チーム全体で工夫しながら練習の質・量を高めていってくれるものと信じています。

一方、「試合中のコミュニケーションを増やすこと」については、今後どんどん良くなっていくだろうと楽観的に捉えています。試合以外の場面を含めて外から見ている印象では、意見の風通しがとても良いチームです。選手間の会話も活発ですし、Bリーグのチームで"まれによくある"、HCが外国籍選手をコントロールするのに一苦労、というようなこともありません。きっと今以上に互いにコミュニケーションを取り合って、チームプレーの精度を高めていってくれるはずです。

さて、開幕節では現時点での弱点をさらけ出す結果となってしまったFE名古屋ですが、次の試合はすぐにやってきます。次節はアウェイで東京Z戦。どう修正してどんなプレーを見せてくれるのか、楽しみにしています。

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