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Eagle's Eye 〜FE名古屋の変化〜

19-20シーズンのBリーグ開幕を前に全国各地で開催されたアーリーカップ。FE名古屋はアーリーカップ東海に参加し、vs茨城、vs三河、vs東京Zと試合を行いました。その3試合から見えてきた今季のFE名古屋の変化について書いてみました。

0.ミスマッチとは

今季のFE名古屋の変化を語るにあたって、まずは「ミスマッチ」について説明します。とっくに理解しているという方は読み飛ばしてもらって構いません。

「ミスマッチ」を言い換えると、「オフェンスとディフェンスとの間で身体能力やスキルに差が生じている状態」となります。
「ミスマッチ」には、例えば身長の低い選手が2mを超えるような身長の高い選手をディフェンスしている状況(高さのミスマッチ)や、足の遅い選手が素早い選手をディフェンスしている状況(スピードのミスマッチ)があります。
バスケットボールは、コート全体で5vs5を繰り広げながらも、より狭い局面で1vs1の戦いを繰り返す競技と言えます。このため、「ミスマッチ」が発生したときには、それを利用して攻めるのがセオリーとなります。

1.ミスマッチが発生する状況

「ミスマッチ」が発生するとディフェンスは不利になります。であれば当然、ディフェンスは「ミスマッチ」が発生しないように守ります。
ではなぜ「ミスマッチ」が発生するのか。原因はいろいろありますが、その1つに「スクリーンプレーに対処するために仕方なく」というものがあります。

(注)スクリーンプレー…オフェンスの選手が壁(スクリーン)となってディフェンスの選手の動きを邪魔をすることで、別のオフェンスの選手をフリーにするプレー。

スクリーンプレーを適切に仕掛けられると、どうしてもディフェンスは対応が遅れてしまいます。それではいけないので、ディフェンスは守る相手を交換することで(スイッチ)、オフェンスの選手をフリーにしないように守ります。このときに、例えば身長の高い選手と身長の低い選手で守る相手を交換してしまうと、「ミスマッチ」が発生することになります。

2.FE名古屋の変化①〜オンボールスクリーンの増加〜

さて、ここから本題に入ります。
まず、今季のFE名古屋の変化の1つは、「オンボールスクリーンの増加」です。

(注)オンボールスクリーン…ボールを持っている選手のディフェンスに対してスクリーンプレーを仕掛けること。逆に、ボールを持っていない選手のディフェンスに対してスクリーンプレーを仕掛けることを「オフボールスクリーン」という。

昨季までのFE名古屋は、「オンボールスクリーン」よりも「オフボールスクリーン」を多用して「ミスマッチ」を生み出そうとしていました。その理由の1つは、「機動力の低いビッグマンの存在」だったと思います。具体的には、ソロモン・アラビーやギャレット・スタツといった選手です。
彼らは、ゴールに近いところでボールを持たせることができれば圧倒的な力を発揮する選手です。一方で機動力が低く、また外のシュートも得意ではないため、ゴールから遠いところでフリーにしたり「ミスマッチ」を発生させたりしてもその力を充分に発揮できません。
そして、「オンボールスクリーン」はボールのあるところでしかできません。このため、必然的に3Pラインよりも外で行われることが多くなります。これではゴール下で彼らにボールを持たせることはできません。
対して、「オフボールスクリーン」はコート上のどこでもできるため、ゴール下で彼らにボールを持たせるには効果的です。したがって、昨季までは「オフボールスクリーン」が多用されていたわけです。

しかし、今季のFE名古屋は「オンボールスクリーン」を多用するようになりました。それはなぜか。「ベンジャミン・ローソンの加入」がその理由になると思います。
ローソンは、身長こそ高いもののアラビーやスタツと比べてゴール下での得点能力が高い選手ではありません。しかし、彼らよりも機動力に優れており、3Pラインの外からゴールに向かって走り込んでくるプレーを得意としています。
このような選手が加入したことと、先に説明した「オンボールスクリーン」と「オフボールスクリーン」の特徴とを照らし合わせて考えると、「オンボールスクリーン」を増やした理由がわかると思います。

3.FE名古屋の変化②〜スピードのミスマッチの利用〜

もう1つの変化は、「スピードのミスマッチの利用」です。

前述した通り「オンボールスクリーン」と「オフボールスクリーン」の違いはあるものの、スクリーンプレーを使ってフリーの選手を作ったり「ミスマッチ」を発生させたりするのは昨季も今季も同じです。
しかし、今季のFE名古屋は「ミスマッチ」を発生させた後の攻め方が変わりました。
「ミスマッチ」が発生するとき、多くの場合は「高さのミスマッチ」と「スピードのミスマッチ」が同時に発生します。身長の高い選手と身長の低い選手でディフェンスを交換した場合、身長の低い選手が身長の高い選手を守ることになり、身長の高い選手が身長の低い選手を守ることになりますが、一般的に、身長の高い選手は身長の低い選手よりもスピードで劣る場合が多いからです。
このような場合に、昨季までのFE名古屋は、「高さのミスマッチ」を利用することを重視する傾向がありました。理由は上述した通り、ゴール下でボールを持たせれば圧倒的な力を発揮するビッグマンがいたからです。
しかし、ローソンはそういうタイプの選手ではありません。ゴール下での得点力はまだ発展途上で、「高さのミスマッチ」が発生したとしても、彼にボールを持たせて後はおまかせというオフェンスでは効率的に得点を積み上げることはできません。

そこで今季のFE名古屋は、「スピードのミスマッチ」を利用して攻める機会を増やしました。
この狙いはもちろん「スピードで相手をかわしてシュートを決める」ことですが、それだけではなく「シュートまでいけなかったとしても身長の高い選手を引きつけた上で周りにパスを出す」「シュートが外れたとしても高さのミスマッチを利用してオフェンスリバウンドを確保する」ことまで考えた2段構えです。
3Pラインの外で「オンボールスクリーン」を仕掛けた場合であっても、素早くゴール下まで移動してパスを受けたりオフェンスリバウンドに参加したりできるローソンが加入したことによって、このようなオフェンスが可能となったわけです。

4.まとめ

以上のように、今季のFE名古屋は、ローソンの加入をきっかけにオフェンスの考え方を大きく変えてきていると感じました。
この変化は、単にFE名古屋という1つのチームだけの変化にとどまるものではなく、オフェンス面で外国籍ビッグマンに頼り過ぎてしまう傾向があるチームの多いB2全体に変化をもたらす可能性があるものだと思います。
今季のFE名古屋の変化が、今後のB2における戦略の流行の先駆けとなるか否か、にも注目していきたいと思います。

5.今季のFE名古屋の見どころ

まとめの後に書くのもおかしいかもしれませんが、上述したような変化によって今季のFE名古屋の見どころとなるであろうポイントを紹介して終わりにしたいと思います。

僕の思う今季のFE名古屋の見どころは、「ダイナミックなプレー」と「日本人選手の積極性」の2つです。

今季のFE名古屋では、「オンボールスクリーン」を増やし「スピードのミスマッチ」を利用して攻めることで、3Pラインの外からゴールに向かってアタックするダイナミックなプレーが増えることが予想されます。
具体的には、
・スピードを活かしてディフェンスを一気に抜き去るドライブ
・大きな選手の頭の上から放つ3P
・ビッグマンがゴールめがけて走りこんでくるプレー
が増えると思います。
もちろんゴール下での身体のぶつかり合いもバスケットボールの魅力の1つですが、今季のFE名古屋は、そういったプレーよりも上に列記したようなダイナミックなプレーが見どころであり強みとなるチームになりそうです。

また、「スピードのミスマッチ」を利用するということは、必然的に小柄な日本人選手が大きな外国籍選手を相手にオフェンスを仕掛ける機会が増えることにつながります。
結果的に数字としては外国籍選手の得点が増えるかもしれませんが、相手のディフェンスを崩すきっかけは日本人選手の積極的な仕掛けにかかってくるはずです。
「外国籍選手に立ち向かう日本人選手」というストーリーに魅力を感じる方にとっては、きっと今季のFE名古屋の戦い方は目を引くものになると思います。

今季のFE名古屋の試合を見るときには、そんなところにも注目してみると面白いかもしれません。

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