それでも、生きてゆく

家にBDあるけどTVerで配信してたから久しぶりに全話見た。
無理やりだったり都合良かったりわざとらしい部分も多々あったけど、それでも全体的なテーマとか話の流れみたいなものはとても良かった。
他のドラマではぼかすであろう領域に踏み込んでいる感じがするので、実際のこういった事件の被害者遺族や加害者家族の方が観たら不快な思いをするドラマなのかもしれない。
現実はこううまくはいかないだろうしね。ただ、実際にはなかなかありえないからこそ、こうしてフィクションの世界で極めて生々しいタッチで双方を交流させ、少しわだかまりを解き、一区切りつけたことには大きな意味があるように思う。もしかしたら、もう少し何かが違っていたら、現実世界の当事者同士もこんな風になれた人たちだったかもしれないよねと思う。そういう意味で、比較的現実寄りな夢物語みたいなものなのかもしれない。
全体的にシビアで、全て円満で手放しに喜べるハッピーエンドでは決してなくて、だからタイトルが胸に滲みる。どれだけ心を砕いて言葉を尽くしても洋貴や双葉の想いは文哉に通じないし、文哉が亜季を殺したことを本当の意味で悔いる日は多分来ないどころか、また同じように人を殺す日が来る予感さえある。10話ラストで二人が感じた徒労感を瑛太の笑い声が表現していて良かった。
でも、少なくとも洋貴は父の死や双葉との出会いで止まっていた15年間が動き出したし、たくさんのけじめをつけることができた。響子も、自分が嫌がらせをしていた加害者家族に歩み寄って寄り添うような言葉をかけることができた。文哉と分かり合えなくたって、洋貴が事件と向き合ったことはとても大きな前進だったと思う。悲しみは消えなくても、きちんと向き合えば箱に入れることはできる。最後、藤村五月と釣り堀で話しながら洋貴がお菓子のゴミを箱に入れた時、ああここで一区切りついたんだなと思った。
ラストのレンタルビデオ返却、一見コミカルだし、え、ここで終わり?という幕引きなのだけど、それがまたニクい。洋貴は事件と向き合ったことでやっと15年前から延滞していたビデオを返却する決心がついた。それは要するに15年分の人生の延滞料だし、それを支払ってようやくここから新たなスタートをきるのだ。こんなにいい終わり方があるかよ…

あと、ものすごく重いテーマなわりに笑えるシーンがいくつもあるのが妙なリアルさを感じてそこもそれ生きの好きなポイントの一つ。

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