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今さら聞けないマンション管理委託契約

契約解除って酷くない!

「やーめた!!」と急に契約を解除されたら迷惑ですよね。そこで解除する場合は、相手に3か月の告知期間が必要になります。

また、解除によって相手に迷惑が発生する場合は損害賠償をする必要があります。もちろん、業務に支障が生じないように引継ぎを行う義務もあります。
簡単に解除はできるわけではありません。

管理会社からの契約解除ってあるの?

ほとんどありませんが管理組合、住民があまりにも理不尽な要求をする場合や社会的常識を大きく逸脱した行為が横行するような場合には管理会社から契約解除の申出がある可能性があります。特に採算割れになるような大幅な減額要求を繰返すと管理会社も手を引くケースはあると聞いています。

追記(2022/3)
最近は契約の更新をしない管理会社も多くなっています。理由は人手がかかる割に儲けがないため、極端な値下げや過度な業務要求をする管理組合は契約をしない流れがあります。

合意解除って何?

合意解除は一方から契約の解除の意思表明があった時に、相手が「わかりました、解除に応じます」と合意する方法が合意解除と言います。

この時は猶予期間の必要はありません。すぐに契約を終了することが可能です。この時でも引継ぎの義務はあります。

法定解除って何?

お手元にある管理委託契約書にある契約の更新について記載がありませんか?

契約期間が終了する前に相手に契約継続の意思を伝えると前契約と期間以外を継続する旨の条文が記載されているはずです。

この継続の意思を伝えずに契約が終了することを法定解除と言いますが、せっかめが知る限りこの方法で解除に至ったケースは知りません。

契約更新の話合いが不調に終わっても1カ月程度のその間の暫定的規約(短期契約)をすることを認める条文も併せて記載している場合がほとんどで契約の解消まで発展しないように配慮がされています。

この時も引継ぎの義務はあります。

契約終了期日を忘れるとか・・・そんな管理会社がある時は契約の見直しをした方が良いかもしれません。

会社更生、民事再生って何?違いは?

どちらも破産手続きのひとつです。
どちらも「再建型」と言われ倒産させるのではなく、もう一度負債を処分して債権を行うことを前提にしています。
両者の一番の違いは誰が再建を主導するかです。
会社更生は大企業を対象にした方法で更生管財人が財産の清算を行います。これに対して民事再生は企業の大きさに関わらず中小企業や個人でも利用でき、裁判所が主導して財産の清算を行う点です。
処理期間も全く違います。

再委託って何?

受託した契約を受託者(管理会社)が他の人に仕事の全部、あるいは一部を委託しなおすことです。ただし、勝手に他に人に仕事を委託しなおすことはできません。必ず委任者(区分所有者、管理組合、理事長)の承諾が必要になります。

管理委託契約の再委託の制限

国は管理委託契約で3つの業務を基幹業務としています。

  1. 会計業務

  2. 出納業務

  3. マンションの維持・修繕の企画、実施の調整

この3つの業務の1つでも行っている会社を管理会社としてました。
その上で基幹業務のすべてを1社に再委託することを禁止しています。
この意味は中間搾取(手数料だけ儲ける行為)を禁止する意味があると考えてください。

会計と出納って何が違うの?

違います。
会計は管理組合の資産の管理のこと、出納はお金の動き(金銭と物品の流れ)を帳簿で管理することです。
会計管理を行うためには出納業務が必要になります。

管理業って誰でもやれるの?

個人でも出来ます。
しかし、社会的信用が高い管理業者になるためには国の登録制度への登録が必要になります。
皆さんも大切な管理費と修繕積立金を預ける以上、信頼できる会社を選びたいですよね。

国の登録制度に認められるには経営基盤や前科、反社会的勢力との関係を一定期間(5年)以上無関係であること、管理業務主任者の配置義務があります。
登録すると毎年国に報告する義務も生じます。
その上、何か問題を起こした時には、業務停止命令やもっとも重い場合は登録の抹消までされます。

管理会社の業績はチェックが必要?

出来れば確認しておくべきでしょう。

皆さんが契約している管理会社の業績については管理会社の事務所で営業時間内であれば閲覧を要求できます。
この要求を拒否することはできず、閲覧用の資料を常設しておくことを国土交通省は義務化しています。
違反すると業務改善命令等の勧告を受けます。

倒産って事前にわかるの?

う~ん、はっきりお答えできません。
知る限り従業員であっても倒産をテレビ等で知ることは珍しいことはありません。
経営陣も何とか続けられる努力をするため最終的な倒産は決済当日になることが多いと聞きました。

マンションの管理組合が事前に知ることは難しいのかもしれません。

反社会的勢力って名簿があるの?

これについては調べたことがありますが明確な答えはわかりませんでした。ただ、特定の人物が反社会的勢力に指定されているかどうかは警察で相談できるとのことです。

再委託時の責任の所在

管理会社が再委託する時でも管理組合に最終的に責任を負います。

再委託するのは管理会社の都合であり、管理組合にとっては契約書に定めた業務を確実に履行してくれれば良いことです。
再委託は認めるけど、責任は契約当事者として管理会社が負うべきと考えます。

再委託先の過失で区分所有者等に損害が出た場合の損害賠償請求は当事者(加害者)と管理会社に行われます。

当事者に支払い能力がなければ管理会社が支払う義務があります。
(実際は両者で話合いが行われるのでしょう)
被害者に支払った後に当事者に管理会社が請求することも可能ですがそのことは被害者には関係ないことです。

区分所有者からの直接質問について

区分所有者が管理会社に直接質問することは可能か?
また、質問があった時にその都度、個別に区分所有者への説明責任(報告義務)があるかと言うとありません。

質問すること自体は可能です。
また、理事会や理事長に質問することも可能です。
管理会社は質問への回答を理事長、あるいは理事会に回答します。契約の当事者間で行われると考えてください。

理事会や総会では管理会社が直接回答することはよくあることなんですけどね。
契約ルールとしてはこのように解釈されます。
管理会社によっては個々に対応するケースもあるようですけ。

善管注意義務をもっとわかりやすく

マンション適正化法70条(業務処理の原則)に記載されています。

信義誠実の原則って聞いたことありますか?契約は約束です。
約束は当事者が信頼を裏切らないように誠実におこなうことを大原則にしています。
そのため民法では契約(約束事)の大原則としています。

「当事者は権利の行使、義務の履行にあたっては、信義に従い誠実に行わなければならない」
このひとつに善管注意義務があります。

善管注意義務を怠ると損害賠償や契約の解除ができるので軽んじてはいけない義務です。

ちなみに役員も委任契約です。
そのため、組合員に対して善管注意義務があります。

委託契約って無料なの?

委託契約の基本は無償です。また諾成契約と言って口約束で成立します。

「ねーこれやってくれない」「いいよ」って仕事上、あるいは私生活で同僚、友人などに頼みますよね。それが委託契約です。

理事長や理事、監事も委任契約になります。契約書などは作成しませんよね。
それでも契約は成立して委任者、受任者にはそれぞれ責任が生じます。
また、報酬も一般的には無報酬ですよね。
もちろん、有償にすることも可能ですがその場合は契約が必要になります。
規約や総会で決定することもできます。

このように私生活には民法で規定されている契約がたくさんあります。
中高大学時代にもっと真面目に勉強しておけば良かったと資格試験の時は深く思ったことを思い出します。

面白い本を1冊紹介します。

2018年改訂第4版「民法がわかった」著者:田中嗣久、田中義雄

決して読みやすい本ではありませんが、民法の専門書としては比較的簡単に書かれている本で資格試験の時に利用しました。
図書館にもある本です。
家庭に1冊あると便利だと思いますよ。
各章毎に「基本知識チェック」問題があり面白い設問が付いています。
「へぇ~」「なるほど」と思える内容がたくさんあります。

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