見出し画像

006-理事長に与えられた専有部分の修繕工事の認可について

問題

マンション管理組合の理事長が自身が所有する専有部の内装工事を行う際、自身の権限で工事許可を出すことができる。

*この問題は多くの方が勘違いしている点です。 これは実際のマンションでもよくあることでトラブルになるケースも多い事例です。

解答

「できない」です。

この問題を解くためには区分所有法17条を知る必要があります。

区分所有法17条

(専有部分の修繕等)
第17条
区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物 に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)を行 おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。 以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。

2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付 した申請書を理事長に提出しなければならない。

3 理事長は、第1項の規定による申請について、承認しようとするとき、 又は不承認としようとするときは、理事会(第51条に定める理事会をい う。以下同じ。)の決議を経なければならない。

4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、 専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。

理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、 修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合にお いて、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

区分所有法17条

解説

17条で覚えることと併せて解説します。

1、修繕を行う場合、誰に許可を求めるのか?

理事長です。
理事長が申請の受付を行います。
多くの場合は、管理会社がこの業務を代行しています。

2、どのような方法で申請するのか?

書面です。
どこをどのように改修するかがわかる資料になります。
多くの場合は工務店が組合に用意された書式に従い記入し提出しますが、工務店は申請者にはなれないことは注意してください。
必ず、組合員が申請者が書面です申請をします。

3、申請書面に必要なものは?

必要な書面は次の3つです。
〇 設計図
〇 仕様書
〇 工程表

この資料が必要な理由は、共用部分への工事がされないことを確認するためです。
共用部分は区分所有者全員の所有物です。
勝手に改修を行うことはできません。

次に規約に定められている仕様を確認します。
多くのマンションは上下階の騒音問題をなくすために、各戸の床材のD値を決めています。
その仕様をクリアーしていることを確認にします。

工程表は全面リフォームでは工事期間は2カ月程度必要になることもあります。
その間は設備の入れ換えによる搬出搬入、騒音、作業員の出入りがあり、各階の皆さんの生活に少なからず影響を与えることが予想されます。
そのため、工程用を提出させ、管理会社に影響を最低限できるように依頼します。

4、誰が承認するのか?

これが問題です。
区分所有法では理事会が承認をすると定めています。
理事長は受付けの窓口に過ぎず、個人として承認を出すことはできません。
この項目は「別途規約で定めることができる」とは記載がありません。
区分所有法は法律です。

しかし、実態は理事長に権限があると勘違いをしている組合、管理会社が多く、管理会社が「この内容であれば大丈夫でしょう」と理事長に返事をすることで承認してしまっているケースが多いようです。

本来、理事会で承認を受け、議事録に記録として残さなければいけません。

5、工事は承認後

リフォームの申請者は必ず工事の承認を受けた後に開始します。
工程表を住民に知らせ、工期の長さと工事内容を周知することも必要になります。

6、自主管理で多い、専門家の利用

管理会社に委託している組合は、管理会社の営繕に依頼することで工事の影響を確認できます。
しかし、自主管理の場合、工事の影響を素人である理事会が判断することはできません。
そこで、近隣の工務店等にアドバイスを求めることがあり、その際に発生する費用はリフォームを希望する人が支払うことになります。

7、工事中、工事後

理事長には工事を監視する権利があります。
修繕工事が周辺へ想定を超える影響を与えた場合や住民からクレームが多発した場合などは理事長は、自身で修繕現場を確認する権利があります。
管理会社や建築の専門家に依頼して状況を確認させることもできます。

これに対して修繕工事の施主は、正当な理由なくこれを拒否することはできません。

以上が17条と今回の問題の解説です。

ポイント

1、専有部分の改修工事の承認権は理事会にあり、理事長が単独で判断することはできない。

2、リフォームの申請窓口は理事長である。

3、理事長には工事中、工事後に現状を確認する権利があり、代理を立てて調査させることも出来る。

4、リフォームに関する調査は施主に請求することが出来る。

以上の4つのポイントが重要です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?