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020‐一部共用部分管理組合と全体管理組合の関係とは

問題

020-一部共用部分管理組合があるマンションでベランダに衛星放送のアンテナの設置の許可が決定された時、全体管理組合はこの議案について認めない議決を行うことかが出来るか。尚、一部共用部分の管理は認められています。相談からの出題です。

解答

できる

解説

この問題は一部共用部分管理組合と全体管理組合の関係を理解するための問題です。
一部共用部分とはマンションの建物一部が排他的に利用できる共用部分のことです。
このような共用部分があると使用する組合員だけで構成される一部共用部分管理組合が発生します。
これまでも説明したように組合は、建物の構造と権利関係により必ず発生しますが、構成される組合だけで管理するかどうかは別問題です。

区分所有法で定める一部共用部分とは

区分所有法第3条に一部共用部分を次のように定めています。

(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

区分所有法3条

一部共用部分がある場合は管理する団体が発生するを定めています。
区分所有法第11条で権利関係について定めています。

第二節 共用部分等
(共用部分の共有関係)
第十一条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。

区分所有法11条

一部共用部分は全体共用部分とは共有関係が異なり、一部共用部分の所有者だけで組合が存在し、管理を行うことができると言うことです。
ただし、規約で管理を全体共用部分管理組合で行う定めをすることも出来るとしています。

その上で、管理者が所有することは出来るが、区分所有者以外に所有することは出来ない。
その場合、登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができないとしています。

*民法177条
第177条【不動産に関する物権の変動の対抗要件】 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

民法177条

ポイント

1、一部共用部分は一部共用部分管理組合が管理を行うことが基本。
2、全体で管理する場合は必ず規約に定める必要がある。


ひとつのマンション管理組合に2つの組合があり、管理をそれぞれに行うことと全体で行うことができることはわかりましたが、それぞれでどんな違いがあるのでしょうか。

一部共用部分管理組合を行う時

区分所有法30条に一部共用部分管理組合は次の場合、独自に規約を定めることが出来るとしています。
1、区分所有者全員の利害に関係しないもの
2、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて

全体規約に定めがなく、全体に影響しないことは規約に独自に定めることができるとしてます。

第五節 規約及び集会
(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
 第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

区分所有法30条

一部共用部分はあくまでも一部共用部分の管理に限定されます。
そのため、全体に影響すること、すでに全体規約に定めた内容を決めることはできません。

これだけを覚えれば大丈夫です。

規約で一部共用部分の管理を全体管理組合で行うと定めた時

一部共用部分管理組合は存在しますが、管理を行わないと定めた場合は、すべてを全体管理組合で決めることになります。

この時に注意することは、一部共用部分に関することを規約に定める際の区分所有法31条です。

(規約の設定、変更及び廃止)
第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

区分所有法31条

一部共用部分に関する定めを行う時、一部共用部分の1/4の組合員が反対した時は定められないとしています。

なぜ、1/4なのでしょう。

規約の改定等は特別議決3/4以上の合意が必要です。
一部共用部分の1/4とは、仮に一部共用部分管理組合があったとして、その1/4が反対すると一部共用部分の規約の改定等ができないことになります。
この考えを全体組合にも適用しているためです。
*よく考えられていますよね。

今回の問題

ベランダに衛星放送用のアンテナを立てることを一部共用管理組合が定めた時が設問でした。

以前は、ベランダに衛星放送用のアンテナを立てたマンションをよく見かけました。
しかし、最近では見かけなくなりました。
その理由は2つあります。
1、マンションの美観を損ねる
2、落下の危険があり、万が一落下した場合設置場所のベランダが共用部分であることから管理責任を問われる可能性がある。

マンション全体でベランダへの衛星放送用のアンテナの設置を禁止することを規約に規約に定める組合が多くなったためです。
さらに、CATの普及によりマンション管理組合としてケーブルテレビ会社と契約する方式が確立されたことによります。

そのため、今回の衛星放送用のアンテナの設置はマンション全体の問題となり、全体管理組合は一部共用部分管理組合が定めた規約内容を認めないことを決めることができることになります。






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