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016‐区分所有法第3条に定められた組合とは何か

問題

016-区分所有法3条に定められる組合が権利団体と見なされる条件とは何か? 次に中から正しいものはどれ。
1、管理者の設置
2、管理規約の設置
3、管理者と管理規約の設置
4、わからない

解答

解説

団体はなぜできる

地域の町会や子供会と言った団体は自然発生するものではありません。
しかし、分譲マンションの管理組合は区分所有法3条の定めにより自然的に発生し、共用部分の滅失以外では解散することはありません。
では、なぜ分譲マンションの管理組合は自然発生するのでしょうか。
それは建物に共用部分があり、それぞれの区分所有者が共有する部分があるためです。
その管理を目的として管理組合は自然発生することは覚えておきましょう。

これを踏まえて上で民法、区分所有法、標準管理規約における管理組合を考えてみましょう。

民法におけるマンション管理組合

民法において法人ではない社団(団体、組合)に関しては、「権利能力なき社団」と言います。
ただし、民法このような団体に対する明文化はされていません。
では法人化しないマンション管理組合は民法上どのように捉えるべきなのでしょうか。
過去のいくつかの裁判の判例に基づいて権利能力の有無を判断しています。

権利団体と認める要件
1、団体として組織があること
2、意思決定に多数決の原理があること
3、構成員の変更に関わらず組織が存続すること
4、組織により代表決定の方法、総会の運営ルール、財産の管理ルールの定めがあること

この4点を備えた団体であれば権利団体と判断でき、第三者との契約等が行為ができると考えられています。

マンション管理組合は区分所有法3条に定められ、区分所有物件であれば組合は自然発生的に生まれ、管理者や規約を定めることができると定められています。
要は、できるであって必ず管理者や規約を定める必要はないと定めています。

区分所有法における管理組合

(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

区分所有法

区分所有法3条には区分所有者は全員で団体を構成すると定めています。
これがマンション管理組合が区分所有者が誕生することで自動的に発生するされる理由です。

一方で集会、規約を定めることについては団体の意志で決めることができると定めています。
集会を開催する義務、規約を定める義務、代表である管理者の設置も義務ではないと定めています。

ここで民法の考え方を思い出してください。
権利団体として第三者と契約することが可能であることの要件は、代表選出の方法、総会の運営、財産の管理の定め(規約)があり、管理者(組合の代表者)がいることになります。

区分所有法では管理組合は、民法の「権利能力なき社団」でいることも否定せず、かつ民法の権利団体としての要件を備えるためのルールも定めていることが理解できます。

過去のマンション管理組合

現在のようにマンション(住民用区分所有物件)の法整備が整っていれば、規約があり、管理者(理事長)がいることが当たり前ですが、法整備が整う以前は、規約もない、管理者もいないマンションはそれなりの数存在していました。

今でも築年数が経過した投資用のマンションでは、管理者、規約がなく、住民有志が自腹で昇降機の点検や壊れた個所の修理を行っているマンションは存在します。

このようなマンションも法律的に違法な存在ではないことは、これまでの説明で理解できるはずです。

組合の発生と管理は別なこと

区分所有物件があれば組合は自動的に構成されることは法律で定めていますが、管理については組合の意志によって選択する余地を残しています。

多くの組合は管理組合として第三者との契約ができる権利団体になるために民法の要件である4つを定めていることを覚えてください。

1、団体として組織があること
2、意思決定に多数決の原理があること
3、構成員の変更に関わらず組織が存続すること
4、組織により代表決定の方法、総会の運営ルール、財産の管理ルールの定めがあること

その上で区分所有法では管理者と組合の契約は委任契約と定め意思決定の方法を集会の議決、多数決、管理者に委任する権限を定めています。

基本は管理組合法人

区分所有法には、法人化されていない管理組合については管理者と区分所有者のそれぞれの権利と義務を定めています。
一方、区分所有法では管理組合法人は人格のある権利団体として扱いをしており社団に準じた運用を定めています。

このように区分所有法では、管理者による管理と法人格による管理を定めることでマンション管理組合の選択で「権利能力なき社団」にならずに管理運営ができる自主性を担保しています。

ただし、「権利能力なき社団」の第三者との契約はあくまでも過去の判例に基づいていることから、区分所有法の管理の基本は法人格の管理組合だと言えるでしょう。

標準管理規約における管理組合

管理組合法人では理事、監事を定める義務を定めています。
法人化は団体に人格を与え、権利能力のある団体にすることです。
その運営に一般的な社団法人と同じ理事会制度を導入することで組合員の意志によって運営する方法を定めています。

一方、管理者による運用では理事会による運用を定めていません。
元々、区分所有法に定めた管理者は、区分所有者である必要はなく管理会社やマンション管理士等でも可能であり、準委任契約であるとしています。

管理者=理事長は一般的ですが、居住を目的とした区分所有物件の管理者による運用は区分所有法の定めだけでは不十分です。
そこで、国土交通省は管理組合法人の運営を手本に法人化されていない管理組合でも適用可能な「標準管理規約」を指針として公開したのでしょう。

標準管理規約の1条は「この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等につい て定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を 確保することを目的とする。」と定めています。

そのために権利能力がある団体である必要があり、を区分所有法に定めた管理組合法人を手本に以下の4つの要件を決めるルールを定めていると言えます。

1、団体として組織があること
2、意思決定に多数決の原理があること
3、構成員の変更に関わらず組織が存続すること
4、組織により代表決定の方法、総会の運営ルール、財産の管理ルールの定めがあること

まとめ
区分所有法の3条団体の意味はわかりましたか。
土台に民法があり、権利能力がある団体として運営するために区分所有法を定め、法人化できない管理組合向けに実用性の高い標準管理規約を指針として公開していることを理解できたのではないでしょうか。

忘れていけないことは組合と言う団体は条件が整った時に自然発生しますが、権利能力がある団体として活動することは団体の意志で決められることです。
組合の発生と管理の実施は別な次元のことと理解できれば、3条の後半部分である「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」も理解できるのではないでしょうか。

*一部共用部分、団地共用部分と管理組合については別な問題を出題します。その際に理解してください。






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