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本が好きだなと思うとき

 私は本を読むのが好きだ。
といっても別に毎月何十冊も読むわけではなく、時折本屋を訪れて3~4冊まとめて購入して一気に読む程度で、その頻度もまちまちである。

 ある時、私が本屋でまとめ買いをするタイミングの共通点に気付いた。
それは、私が恋愛で苦しんでいる時だった。

 たとえば、失恋したとき。彼からの連絡がないとき。浮気されたとき。片思いで苦しいとき。
恋愛がうまくいっていない時、私はどうやら小説の世界に逃げ込む癖があるらしい。

 そんなときの私が選ぶのは決まって、ほっこりするような短編集であったり、前を向いて生きていこう、と思えるような本たち。どうにかして前向きな気持ちになりたいという本音が現れたようなチョイスだ。

おかげで私の本棚はそういう、一息つけるような、明日を生きる元気がでるような小説がずらりと並んでいる。



 苦しくてどうしようもなくてふらりと本屋に立ち寄って直感で選んだ本たち。
 こういう時に私が選んだ本は、不思議と一冊に一節はほぼ確実に私に響く箇所がある。
その一節を目にしたとたん、涙があふれてきて「ああこの言葉は今の私に必要な言葉だ」とじわじわ沁みてくるのだ。
 その瞬間、私は本を読むのが好きだなあと強く思う。

 何度本に救われただろう。
 何度本を読んで泣いただろう。
 
 そうやって私に必要な一節を見つけるたびに、傷ついて疲弊した心は少しずつ癒されて、数冊読むうちに気付けば前を向いている。

 これを繰り返して私は立ち直ってきた。

 私にとって読書は、心のデトックスのためになくてはならない存在なのだと思う。それも、できれば紙の本。(もちろん電子書籍も好きだけど)

 ページをめくる動作が、指先に触れる紙の質感が、インクの香りが、より一層「本を読んでいる」ことを実感させてくれる。

 少し前までは、本を読むのは自宅だけだった。
けれど、ある時、どうしようもなくつらい恋をした。
 彼のLINEの返信を待つばかりで、鳴らないスマホばかり見て、仕事にも集中できなくなった。

 そんな自分がいやで「せめて仕事の昼休みだけでもネットから離れよう」と思った。
 なにせ、仕事柄一日中PCとにらめっこで、家だろうがどこだろうが空き時間は鳴らないスマホを眺めて、いつ連絡が来てもいいように時間を空けるために、おでかけよりもネットサーフィンで暇をつぶす日々だったから。

 思い立ったが吉日とばかり、会社から一番近いカフェに、スマホを置いて財布と本をもって通うようになった。
 正直ランチ代は痛いけれど、これが思いのほかよかった。

 スマホがないから気にしたくてもできない。

 コーヒーを片手に目の前の本に向き合うだけの時間。
なんて気持ちがいいのだろう。
最初はつらい恋から現実逃避するためだったけれど、
気づけば「ネットから離れて本を読むだけの時間」もまた好きになっていた。
 
 本を読むためにカフェにいくようになって、苦手だった無糖のカフェラテも好きになったし、新しい喫茶店探してみようとか、そんなことも始めた。

 本が、私に新しい趣味をくれた。

 本の世界に入り込んだり、エッセイを読んで知らない誰かの考えを知ったり、ただ読むだけでも私の世界を豊かにしてくれるのに、この上新しい趣味までくれるって、いや、もう、最高としかいいようがないのでは?

 だから私は本が好きなんだよなあ…



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