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自分の価値観はひとつの軸として。決して押し付けない《CAの教訓》

こんにちは。《CA.jp》編集担当スタッフの栗野です。

CAを長年していればしているほど、良くも悪くも「このようなお客様はこう」「この便はこう」などと、なんとなくパターンや偏見を持って業務にあたってしまうことも少なくありません。

だけど、これ私はかなりリスキーだと思います。

たしかに、便によって客層に特徴があったり、客層によって望まれやすいサービスがあったりと「傾向」がある程度存在するのは事実ですが、必ずしもその「傾向」という名の「型」にハマることばかりではないです。

例えば、平日夜の羽田ー伊丹便は、お仕事帰りの方がほとんど。長い1日を終えてお疲れの方が多いため、ドリンクサービスなどはいらず、静かにお休みになりたい場合が多いです。

ただ、ここで「目を閉じてるからドリンク不要」と決めつけるのは危険ですし、中にはCAとの会話を楽しみたい方もおられます。

そのような感じで、お客様の様子をよく見て1人1人が何を求めていらっしゃるのか、観察するのもCAのお仕事のひとつです。

私が印象的だったフライトのひとつ、余命半年の車椅子のお客様が乗ってこられたときのお話をしたいと思います。

そのお客様の病状や、飛行機好きでとてもフライトを楽しみにされていること、ご事情からご家族も付き添いご搭乗されることなど、私たちは事前に地上職員から情報を受け取っておりました。

ここで難しいのが、そのお客様がどのようなフライトをご希望されておられるのか、ということ。

いくら飛行機好きでとてもフライトを楽しみにされているとしても、もしかしたらしっとりと静かに落ち着いてフライトを楽しみたい、そっとしておいてほしいかもしれません。

もしくは、CAからのお手紙や機内でのお写真を楽しみにワクワクされており、私たちともたくさん会話したいと思ってくださっているかもしれません。

この2つどちらをご希望なのかによって、まるで対応が異なります。

私個人としては、できる限りのことをして差し上げたい思いで山々でしたが、そこは一旦落ち着いて…

お客様がご搭乗されてから、よく様子を見て何を求めていらっしゃるのかをじっくり観察し、決して自分の「精一杯何かをして差し上げたい」との価値観は押し付けないことが何より大事だと考えています。

自分の「何かをして差し上げたい」気持ちは、注意しなければ、時として相手にとっては迷惑や不快に感じることも多いのです。

このお客様に関しては、ご搭乗されたときからずっと私たちとの会話を楽しまれているご様子で、機内でも景色のお写真を撮っておられたり、様々なドリンクを楽しんでおられたり、終始笑顔でむしろこちらが元気を頂く立場となってしまうほどでした。

とても素直に感情を出してくださり、私たちを楽しませてくださるほど陽気な方で、周囲へのご配慮も忘れず(それは本来、私たちのお仕事だったのに)、本当に素敵な方でした。

降機される際も、満面の笑みで「ありがとう」と感謝を伝えてくださり、周囲を元気にする方でした。

このお客様は、そのように感情を全面的に表に出してくださりましたが、真逆の方もおられます。正直な話、私自身もそちら派。乗客として飛行機に乗るとできるだけ静かに過ごしたいと思いますし、迷惑もかけたくないとの思いからあまり声がけはいらないと感じてしまいます。

中には、本当はたくさんお話をしたいと思ってくださっているけれど、なかなか感情が伝わりづらいシャイな方もおられます。私の父はおそらくこちら派です。

保安面だけではなく、サービス面においても「もしかしたら」との気持ちを持ってお客様と接することで、相手との距離感を上手に保ち、快適に過ごしていただけるようになるのではないかと考えています。

ほぼ職業病とも言えるような、「お客様にできる限りのことを」との気持ちは相手が求めているものを見極めなければ、残念ですが自分の気持ちとは真逆に受け取られてしまいます。

自分の価値観はもちろん大切です。ただ、自分の価値観はひとつの軸として、それを押し付けることなく相手と接することが鍵になると私は考えています。

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