見出し画像

ファーストクラスのメニューを覚えるために

こんにちは。お局CAのツッキーです。今日はファーストクラスのお食事のサービスで、「メニューを覚えるためにどうしたか」というテーマでお伝えします。と言っても、メニューを覚えるためのノウハウというよりは、会社が用意してくれたことで、私の「心」に変化が起きたというお話です。

当時ファーストクラスのお食事は洋食2種類と和食という3チョイスでした。洋食はアントレというメインデュッシュ以外は同じ内容なので、アントレの内容をお客様にご説明して、お食事のオーダーを取ります。他のクラスに比べて、ファーストクラスのアントレのチョイスにはポーション(数)に余裕があります。それでも何かのチョイスに偏った時には、上手にお声掛けするか、それでもどうしてもそれを食べたいというお客様にはアントレを上手に盛り分けて人数以上のお客様に盛り分けることもありました。

オーダーが終わって、食前酒とカナッペをお出しすると、いよいよ前菜からサービスしていいきます。サーブする際は、「○○産の○○仕立ての○○でございます。」とメニュー通りのご案内をします。そしてもう少し詳しい質問もあることもあるので、料理法を事前に調べておきます。まるで一流レストランのようなサービスですが、私たちは保安要員として乗務しているので、お料理に関しては専門ではありません。

メニュー名を書いたメモをお客様の前で見るわけにいかないので、ギャレーという台所のような準備スペースで、メニューを見ないで言えるまで練習してからキャビン(客室)に出ます。トローリーサービスの時は、トローリーの上にお客様に見えないように、メモをしのばせることもあります。

メニュー名を覚えることは、物覚えの悪い私にとっては至難の業です。ギャレーを出る時には、ブツブツメニュー名を唱えながらキャビンに出て、どうか誰からも声をかけられませんようにと祈る思いです。実際に声をかけられてると案の定メニューを忘れてしまい、いったんギャレーに戻ることもありました。(ほんとに暗記が苦手なんです。。。)

ある時、会社から、ファーストクラス、ビジネスクラスのメニューを担当しているシェフからの説明会があるとの案内がありました。ちょうど勤務が終わって参加できる時間帯だったので、シェフの説明を聞いてみました。

すると前菜からデザートまでの統一されたストーリーがあり、何故この食材でこの料理法なのかが理解出来ました。更には、機内で素人の私たちがヒーティング(温める)しても、おいしく食べられるように調理法やソースなどに様々な工夫をしていることを知り、シェフの調理が私たちの機内サービスにバトンを渡しているのだと感じました。

こんなに考え抜かれたお食事だったとはつゆ知らず、メニュー名を覚えることだけに必死になっていたとは、シェフに申し訳ない気持ちになります。ファーストクラスの料金には様々な思いや手間が含まれているのに、それを十分にお客様にご提供できているだろうか。反省しきりです。

会社がどこまで意図してこのメニュー説明会を実施してくれたかは分かりませんが、明らかに説明会に参加して自分の「心」が変化したのがわかります。メニューを覚える行為の、何のためにという「目的」が変わりました。

今までは、自分が失敗しないためにメニューを覚えていた。こえからは、お客様にシェフの思いを伝えるためにメニューを覚える。

人ってちょっとしたきっかけで気持ちが変わります。物事のストーリーを知り、自分の行動の理由がわかると、同じことも楽しくなったり、重要度が変わったりするものですね。

そのきっかけつくりをANAという会社はしてくれました。会社として、組織のリーダーとして、部下に魅力的で、納得のいく「目的」を与えることが大切だと感じます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?