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忘れちゃいけない大事な気持ち
料理を作る上で大切なことは、「食べてくれる人のことを想うこと」、そして「食材を慈しむこと」
先日仲の良い先輩との飲み会で「もう少し料理をがんばれよ」と叱咤激励をいただきました。
その先輩は日頃から仕事のことや将来のこと、副業や投資のことなど、様々ことを教えてくれる方で僕の一番の理解者でもあります。
今回もお説教というよりは、僕に期待してはっぱをかける意味合いで言ってくださったと思います。
料理人として普段仕事をしていると、段々と薄れがちになっていくことがあります。
それは生産者さんや漁師さんの苦労です。
もちろんそうじゃない料理人さんもたくさんいますし、僕も感謝の気持ちを忘れたことはありません。
ただ、「この野菜はどれほどの苦労があって僕のところに届いたのか」とか「この魚は漁師さんがどんな想いで釣り上げたのか」といった現場の方の気持ちに関しては時々忘れがちになっていました。
野菜を見る時は「ここがイマイチだからこっちのにしよう」魚を見る時は「こっちのサイズの方が使い勝手がいいから」といった感じで選んでいることが多くあります。
仕事柄当然といえば当然ですが、現場の生産者さんや漁師さんからすればどれもみんな使ってもらいたいはずです。
それを僕らはついつい値段と鮮度と使い勝手という物差しで選んでしまいます。
理由はやはり現場がわかっていないから。
そこに尽きると思います。
お互いプロでやっている以上相手の要求に応えられければそれが自分の評価となって返ってくることはどの業界にも往々にしてあることですが、我々料理人と生産者さんや漁師さんはある意味パートナーのような存在です。
もっと密な関係にあると思うのです。
僕らは生産者さんや漁師さんがいなければ料理が作れませんし、その逆もしかりで我々が食材を買わなければ彼らも生活していけなくなってしまいます。
こういった当たり前のことですら日常になると意識が薄くなってしまうものです。
*
今年の春からうちの両親は畑を借りて野菜をいくつか作り始めました。
トマト、なす、きゅうり、ししとう、かぐら南蛮、大葉、ピーマン。
そして僕はバジルを育てています。
ほんのわずかな畑ですが、毎日の手入れや収穫作業は待ってもらえず、一日サボるだけでお化けのような大きさになってしまいます。
他にも今年は水不足による生育の不調や虫対策など、あらゆるトラブルに見舞われました。
当然サイズなど揃えられるわけもなく、色や形も不揃いな野菜たちに育っています。
それでもその日に収穫したばかりの野菜たちはどれも瑞々しく、味もなかなかです。
きゅうりやトマトなどは洗って塩を振るだけでも十分美味しいです。
こうやって実際に自分たちの手で食材を育ててみると本当に生産者さんの苦労が身に染みてわかります。
まず同じように育つことがないということ。
これは本当に大変です。
同じ日に植え、同じように肥料や水を与えてもその成長は一本一本違ってきます。
それは日を追うごとに差が開き、成長の早いものと遅いもので手入れも変えるなど、また新たな仕事が増えていくのです。
我々が日頃サイズだの使い勝手だので選んでいる野菜たちも畑の中のエリートたちの集まりだったんだと改めて気づかされました。
それに対して優劣をつけていた自分…
農家さんや野菜が悪いのではなく、それを生かしきれない自分の技量が悪いだと深く反省しました。
*
こうして我が家なりに苦労した末に収穫した野菜たちで、今日はスープカレーを作りました。
まかないなので野菜も素揚げして煮込んでしまったので色合いも茶色一色になってしまいましだが、こだわってスパイスを炒めるところから作ったので味は抜群です。
そしてなにより自分たちの手で育てた想いがここには詰まっています。
土を作るところから始めて苗を植え、水やりや草刈りもやってきました。
これまで何度蚊に刺されたかわかりません。
夏の暑さで野菜の元気がなくなったり、雨が少なくて水不足を心配したり。
畑のことを考えない日はありませんでした。
それだけに今日の喜びもひとしおです。
これも現場の苦労がわかったからこそですね。
僕たち料理人という商売は本当に楽な商売です。
大勢の方の努力と情熱、そして苦労の末出来上がった食材を使って料理するだけでお客さんからお金をいただいているのですから。
だからこそ僕たちは、ここまで繋いでくれたバトンを「美味しい料理」に仕立て上げ、「お客さんの満足」にまで持って行かなくてはいけません。
それが我々アンカーの仕事だと思います。
お客さんの喜ぶ顔はもちろんのこと、食材を届けてくださった生産者さん、漁師さんの想いを胸に改めて料理人向き合っていきたいと思いました。
今日のスパイシーな味を忘れずに、これからも料理をがんばります!
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