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Drums

昨日の投稿を思ったよりたくさんの人が読んでくれたのでうれしくてまた今日も書きます。仕事終わりに友達と話しながら、思いついたフィクションです。

楽器のドラムについて、お話することもある友達について想像しながら書いた短編小説です。

良ければ一読ください。
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僕らには、共通の話題がたくさんある。

僕とこうちゃんは、友達としての歴は短いけれど、それぞれの会話を楽しむだけの共通認識がある。

共通認識ってのは、つまり、こうちゃんとだから「できた」ことであって、他人と簡単に構築できるものじゃない。そんなにほいほい他人と共通認識なんて持つもんじゃない、と僕は思うし、きっとこうちゃんもそう言うだろう。

一回聞いてみようかな。電話で。

プルルルルル、プルルルルル…。

「もしもし、タロちゃん?」こうちゃんの声が聞こえた。

「こうちゃん、僕とは共通の話題が多いよね」と、僕は言ってみた。

「ん、どうした、タロちゃん急に」こうちゃんは、少し驚いて声が裏返ったようだった。電話の裏で、こうちゃんの息遣いが聞こえる。それは、短く、それでも深い呼吸だ。

ふっぅ…、ふっぅ…、ふっぅ…。

「こうちゃん、大丈夫っすか、いま電話。」

「うんうん。大丈夫よ。なんか珍しいなぁ。タロちゃんから電話かけてくるなんて。」

「初めてですよ、電話は、こうちゃん。ちょっと僕、ドラムについて話したくって。」

「おうおぅ、ドラムね。また始めたん?」

「いえいえ、そういう訳ではなくて…。なんだろう、こうちゃんと話したかったんっす。ほんとは。」

ここに来て、この電話を後悔するだけの余地が、僕にはあった。年上の友達に急に、電話をかけて「ドラムについて話したい」なんて、たぶんまともじゃない。

「僕、ちょっとまともじゃないですね」と、僕は言った。

「いやいや、そんなことないよ。大丈夫やで。ちょっと、コーヒー飲んで、ゆっくりしてたわ」と、こうちゃんは答えてくれた。

「何がしたいんでしょうね、僕。」

「セッションちゃうか。タロちゃんはドラムについて話したいんやろ。それって音楽で言ったら、セッションやで。」

こうちゃんにとってみれば、この会話も、僕との雑多な話も、全部、「音楽で言うところの、セッション」なんだろう。

「なるほど。僕はセッションしたいんだ。」

「さぁ、それはホンマのところわからんよ。うん」と、こうちゃんは言って、煙草に火をつけた。

いつもなら聞こえない、その「火」をつける音が、心地よく響いた。

カチッ…。

「じゃあ、セッションしましょ。」

カチッ、カチッ…。

「うん。ええよ。」

ふっぅ…、ふっぅ…、ふっう…。

ふっぅ…、ふっう…。

「ほんで、タロちゃん。なんの電話やったん。」

ふっう…。

そうだよな。なんの電話だったんだろうな…、僕。

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