春の夢 #シロクマ文芸部
「春の夢をテーマに描いてみてください」
絵画教室の先生から与えられた題材である。
春の夢か。
桜並木の下で、可愛い恋人と手つなぎデート?
…いや、42歳素人童貞の俺の脳内に、そんな夢を見るための原料などあるはずもない。
じゃあ会社の仲間とワイワイお酒を飲みながらお花見とか?
…いや、派遣バイトで食い繋ぎながら地下アイドルに投資している俺に、花見をする仲間などいない。というか花見とかしたことない。
そもそも別段絵を描くのが好きなわけでもないが、「アンタそれぐらいしか脳が無いんだから」などと同居する70過ぎの母に言われ、渋々描いている。
もうわからん!
感情に任せて勢いで描いて提出した。
「アナタ、やっぱりすごいわ」
先生がそう言った俺の絵画は、後日とあるコンペティションでグランプリを獲った。
優勝賞金の100万円は、勿論地下アイドルへの投げ銭で全て溶けた。
これからも俺は、かなぴょんへの投資だけをモチベーションに絵を描き続けるだろう。
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