思い出は夢の中で #シロクマ文芸部「逃げる夢」
「逃げる夢がずっと続いていて、それで困ってるんです」
目の前の女が言った。歳の頃は三十前後ってところか。名は柄沢早苗と名乗った。
「夢の中で何かに追われるのかい」
だとしたら、それほど珍しかねぇ予知夢の類いだがな。
「いえ、そうではなくて、夢を見ようとすると、その夢が逃げて行くんです」
「夢が、逃げる」
「はい」
はい、じゃねぇのよ。
「するってぇとアンタは、夢を見たいのに夢に逃げられて、夢を見れなくて困ってるってことかい」
「はい」
なんでケンちゃん毎度こんなのばっか寄越す