イベント主催者の手記/オンライン同人即売会をやってみた

オンライン同人即売会の企画から開催までの日々をまとめた、2020年末に作った同人誌です。当時、協力してくださった方、手に取っていただいた方々、ありがとうございました。

つい先日この件で質問をいただき、読み返しました。懐かしいような、笑えるような。この気持ちを忘れないために、手直しと黒塗りをして公開します。試行錯誤した日々の思い出です。



プロローグ

2020年2月、東京の同人即売会にサークル参加したのが最後だった。

4月、緊急事態宣言が行われ、予定していた即売会は延期か中止。人が密集してはいけない。外出を自粛しなければならない。
即売会がなくても、頒布手段が通販になるだけだ。同人誌は作れる。締め切りは自分で決めればいい。

でも、私は即売会が好きだ。会場に行くとワクワクする。好きな作家やフォロワーと会える。なにより会場にたくさんの新刊がある。新刊が読みたい。即売会に行きたい。

5月、緊急事態宣言が解除される。

7月、再び感染者が増えはじめた。外出の自粛ムードが続く。マスクがなければコンビニへ行くこともできない。夏コミも冬コミも中止。新刊は出ない。印刷所の悲鳴を聞くようになった。この騒動が年内に収束する見通しはない。

8月、タイムラインで「オンライン即売会」というサービスの感想を見かけるようになった。バーチャルな会場をアバターが歩き回る。見た目は数十年前のロールプレイングゲームだ。リアルタイムで交流できる。個人が主催者となって、10スペースから会場を作れる。

もし、オンライン即売会があれば、みんな新刊を出してくれるだろうか。



2020年8月

8月4日 火曜日

自ジャンルと自カプのオンライン即売会が行われていないか探した。ない。次に、立ち上げてくれそうな人や発言をタイムラインで探した。「オンライン即売会」を気にしている人はいたが、自ら立ち上げる様子はない。


8月5日 水曜日

私が同人誌を作り、即売会でサークル参加するようになって二年が経つ。フォロワーに「自カプオンリーのオンライン即売会」に興味を持つ人はいるだろうか。ツイッターで二十四時間のアンケートを取ってみる。


8月6日 木曜日

「オンライン即売会」に興味を持ってくれたのは156人。一般参加が七割、サークル参加が三割。アンケートに答えた全員が参加してくれるとは限らないが、この中の数人でも参加してくれるなら十分だろう。やるなら早いほうがいい。私は一刻も早く新刊が読みたかった。

自ジャンルは、公式からの供給が定期的にある。██曜日の██時に原作、██曜日の██時からテレビアニメ。タイムラインに人がいる時間にあわせて、即売会の告知をしようと決めた。██曜日はダメだ。原作の盛り上がりに水を指したくない。テレビアニメがいい。自カプが登場しない回。明々後日、テレビアニメが終わった直後にしよう。私はオンライン即売会の「新規作成」をクリックした。中身は空っぽだ。

即売会には名前が必要だ。████████、██████、████、█████、自ジャンル・自カプで行われてきたイベントの名前だ。ここに並んでも違和感のない名前がいい。自カプらしいワードが欲しい。人が集っていそうなイメージも欲しい。既に同名のハッシュタグはないか。エゴサしやすいか。表記ゆれはどうか。覚えやすいか。

考えた末に「████████」にした。略称の「████」は友人が提案してくれた。

オンライン即売会にはウェブページが必要だ。サークル参加の申し込みも、会場へ入るのも、そこからする。バナーとヘッダーの画像が必要らしい。即売会の顔になる。
しかし、自分の絵を即売会の告知に使うつもりはなかった。私の絵はクセが強い。マンガにしてもストーリーが薄暗い。どんな内容であれ注意書きをしない。よくブロックされている。
せっかくのオンライン即売会も、主催が私だとわかれば、参加を躊躇されるかもしれない。それは避けたい。私の絵も名前も出さずに進めよう。

画像は全てロゴにする。友人にロゴを作って欲しいとお願いした。締め切りは明後日の午前中、近すぎる。ごめんなさい。

参加者に向けて、情報の発信が必要になるだろう。ツイッターで運営アカウントを作った。フォロワーはゼロ。私の個人アカウントからフォローした。


8月7日 金曜日

アンケートではサークルの大半が「新刊を出したい」と答えていた。原稿する期間を考えれば、開催は10月が妥当だろう。しかし、一般参加者の半数は8月の開催を希望していた。一般参加者とサークル参加者の足並みが揃わない。

二回にしよう。8月23日(日)は体験版、10月25日(日)を本番とする。

8月23日(日)は大阪で即売会がある。本来は5月に予定していた即売会が延期され、最終的に8月の即売会と合体したものだ。私もサークル参加を予定していたが、既に辞退している。タイムラインでもサークルの欠席報告が相次ぐ。せめて、気がまぎれればと思い同日に設定する。

10月25日(日)はリアル即売会と重ならないように設定した(後に名古屋の即売会と重なっていたことに気づく。結果的に名古屋の即売会は延期となった)

オンライン即売会の多くは、同人誌も通販も必須ではない。特にオンライン即売会あわせの同人誌は稀だ。気安く参加できる展示が中心の文化。わかっていたが私は気安さを捨てて、リアルな即売会に近づけたかった。盛り上げたい。強制はできないが、サークルに新刊を出して欲しい。

リアルな即売会に少しでも近づけるため、一部は企業のやり方に倣うことにした。開催時間は午前11時から14時。スペース配置の発表は開催日の一ヶ月前。オンライン即売会では、類を見ないスケジュールだ。配置は申し込み順の自動配置にもできるが、それではスペース確定の盛り上がりを作れない。手動で配置しよう。募集スペースは24。もし足りなかったら、拡大すれば良い。サークル参加条件は、カップリングにまつわる作品が一点以上あること。オンライン即売会に必要な情報は揃った。


8月8日 土曜日

友人が高級感のあるロゴを作ってくれた。黒と金、バラのモチーフ。雰囲気を崩さないよう必要な画像を作っていく。ウェブページのバナーとヘッダー。運営アカウントのヘッダーとアイコン。マシュマロのアイコン。

運営アカウントの投稿に、いくつかルールを作った。重要な情報にはアイキャッチ画像をつける。色とフォントは統一。文章は短く明朗に。

██時██分、アニメを見終えた後に、運営アカウントでオンライン即売会の案内を投稿。それを私の個人アカウントで拡散する。根拠としてアンケートの集計結果も出す。またたく間に拡散されていく。絶え間ない通知にスマホが熱くなる。いろんなマシュマロが来る。主催がわからない。リアル即売会と開催日を被せるな。スペースが少なすぎる。

██時██分、50スペースへ拡大。主催の名前を明かす。
██時██分、100スペースへ拡大。
██時██分、10月開催を200スペースへ拡大。
██時、8月23日(日)から8月29日(土)へ開催日を変更し、同時に230スペースへ拡大。8月開催は体験版だ。もう拡大するつもりはない。

私は5月ごろから、不定期にラジオ配信をしている。外出自粛で人と喋る機会が減ったからだ。フォロワーとゆるやかに交流できて面白い。この日も配信した。

██時██分、10月開催を300スペースへ拡大。案内の投稿から5時間。申し込みサークルには、壁やシャッターの常連も含まれている。一般参加者が殺到するだろう。百単位のスペースで開催するオンライン即売会も少ない中、どうなるのか想像できなかった。

タイムラインは盛り上がっている。運営アカウントのフォロワーは500を超えた。もし、大きな問題が起きたときは、個人アカウントを削除して静かに消えようと思った。


8月9日 日曜日

大量の空リプとマシュマロを眺める。想像以上に拡散されている。対応できる範囲で多くの人が楽しめるように、募集要項や開催時間を見直すことにした。

9時30分、無人スペースのサークル参加枠を用意する。
9時40分、イベント会場クローズの時間を23時30分に変更する。仕事や家庭の事情で夜間開催を希望する声は多い。14時終了は概念として残す。オンライン即売会の界隈ではコアタイムと表現するが、一般的に伝わらないので使わない。

14時、「差し入れ」についてアンケートを行う。目的はオンライン即売会の独自機能である書き込みボード(各スペースにある伝言板。書き込んだ人とサークル主だけが内容を確認できる。匿名ではない)の周知。少なくとも、アンケートに答えた全員に書き込みボードの存在を伝えられた。

17時、10月開催を400スペースへ拡大する。
21時、通販のないサークル参加枠を用意する。避けようとしていた展示参加だが、この時点で同人誌中心のサークル申し込みが百を超えている。展示参加の方がマイナーだ。もう十分だろうと思い、参加方法の多様化を優先した。

みんな勤勉だ。情報収集のスピードと適応力が凄まじい。有志による自作アバター配布が始まった。オンライン即売会のデモ会場にフォロワーがたくさんいる。いや、フォロワーしかいない。チャットの会話がタイムラインのようだ。人が急に増えたせいか、デモ会場の動作が不安定らしい。デモ会場は、一次二次ジャンル問わず広く使われるパブリックな場所だ。不安になった。


8月10日 月曜日

8月開催のサークル受付終了は8月16日。申し込みは141/230スペース。

相変わらず、デモ会場が界隈の人であふれている。時間が立てば落ち着くだろうと楽観視していたが、苦言のマシュマロが来る。やむを得ず、注意喚起を出す。

オンライン即売会の会場には、エリアという区切りがある。10、24、50、100スペースの4種類。エリア内は、アバターを操作して歩くしかない。広くなるほど、端から端までの移動に時間がかかる。リスポーン位置は固定であり、エリア内ワープのような機能もない。

会場への入り直しが起きる前提で、10秒以内に元いた場所に戻れる広さ。1エリアにつき、24スペースが限界だった。24スペース以上のエリアは使わない。

ラジオ配信のリスナーが不自然に多い。アンチがいるらしい。アンチも聞く前提で喋ることにする。


8月11日 火曜日

スペース配置に必要なサークル情報が足りない。出力できるデータにサークル名と作品傾向しかないのだ。作家名やSNSの欄を追加して、入力を促す。


8月12日 水曜日

8月開催の申込みは、193/230スペース。
10月開催を500スペースへ、拡大。申込みは、303/500スペース。

10月開催のスペース拡大について、苦言のマシュマロが来る。相次ぐ拡大が不安らしい。8月開催を待ってからの拡大を勧められた。内容からして、一般参加の方だろう。
しかし、10月あわせで新刊を作るのなら、今のうちから検討しなければ厳しい。サークルにとって「参加申し込み」は、イベントあわせで作品を作る覚悟がいる。8月開催を待っていては、間に合わない人もいるはずだ。

頒布物の見せ方で悩む。通販アドレスの入力欄がひとつしかない。オンライン即売会では、頒布物が「複数ある」ことが稀なのか、ノウハウが見当たらなかった。私も含め、頒布物が複数あるサークルが圧倒的に多いのだ。このままではいけない。


8月13日 木曜日

8月開催の申し込みは、200/230スペース。
███████の差し入れを禁止する。書き込みボードの利用を促す。マシュマロが来る。ラジオ配信。


8月14日 金曜日

8月開催の申し込みは、209/230スペース。
オンライン即売会において、頒布物が複数ある場合の解決策を見出す。参加サークル向けに動画とマニュアルを作った。自分の頒布物を例にした動画が他ジャンルや逆カプの方にまで拡散されてしまう。「わかりやすい」と好評なのはいいが、頒布物はダミーを使うべきだったと後悔する。


8月15日 土曜日

8月開催の申込みは、216/230スペース。
頒布物の█████と████████を禁止する。マシュマロが来る。ラジオ配信。


8月16日 日曜日

8月開催の230スペースが満了した。
スペース拡大を希望するマシュマロが来る。拡大はしない。

申込みのあった全てのサークルをチェックする。SNSのプロフィール。直近の投稿。作品や頒布物の傾向。過去に参加したリアル即売会の配置。スプレッドシートを埋めていく。それらを元にサークルを10のエリアに配置していく。

エリアにも名前が必要だった。リアルな即売会に少しでも印象を近づけるため、実在する会場から拝借した。
オンライン即売会のスペース配置には、下書きのような機能も、一括で反映するような機能もない。配置情報をひとつずつ入力していく。それらは即反映され、誰にでも配置が見える状態になる。230スペースの配置が完了したが自信はない。明日、あらためて友人と見直そう。

オンライン即売会の運営へメールする。運営として想定外の規模だろうと思ったからだ。第三者が見てもわかるように、具体的な数字も伝えておく。


8月17日 月曜日

スペース番号に気づいた人が出始める。見直している場合ではなくなった。確定したことにして、配置完了の告知。サークルカットが一望できる会場マップの公開。タイムラインが盛り上がっている。ラジオ配信。


8月18日 火曜日

参加者が、著作物をトレスしたアバターを配布している。大型匿名掲示板にそれを指摘する書き込み。このまま炎上すれば権利元に突撃されかねない。該当の参加者にアバターを取り下げるようDMする。


8月19日 水曜日

10月開催に向けて、いくつかの印刷所に支援を依頼する。


8月21日 金曜日

オンライン即売会のサークル参加費が有料化。この日を境に、新規作成する即売会は全て有料となった。


8月23日 日曜日

大阪で企業主催の即売会。一般参加に、事前予約が必要になった。検温、マスク、パーテーション、手洗い場、感染症対策は万全。

しかし、会場は空いていたと現地に搬入した印刷所から電話で伺う。話の流れで、8月開催も支援していただくことになった。急遽、自分の本を8月あわせで作ることにする。

オンライン即売会における書店納品について悩む。当日は通常注文でなければいけないのか、予約注文でもいいのか。注文から手元に届くまで、ラグが少ないことが理想だ。家で戦利品を読むまでが即売会だろう。強制はできないが、運営アカウントでそのように促した。ラジオ配信。


8月27日 木曜日

再び、著作物をトレスしたアバターと店舗外観。DMする。全ての参加者に向けて注意喚起を行う。
自分の本を脱稿する。8月あわせの新刊が書店に並びはじめた。予想外だ。みんな、10月あわせじゃないのか。自分も新刊を出せて良かった。


8月28日 金曜日

開催前日。一般参加者への案内が必要だ。

オンライン即売会は、会場への入り方が特にわかりづらい。自分も初見のときは迷った。帰り方とあわせて周知。自作アバターを用意するサークルが多いため、萎縮する参加者もいた。アバター作成が必須でないことを周知。

とにかく、気軽に参加して欲しかった。他ジャンル、他カプ、アンチでも、マナーを守ってくれるなら、誰が来ても構わないと私は思う。

自分の新刊の書店通販が始まった。完売した。当日まで在庫が持たないとは。書店に対して販売開始日時を指定できないため、こういうことがよく起こる。やむを得ないとはいえ当日に新刊がないのは辛い。

しかし、読み手として当日まで待つわけにはいかないのもわかる。躊躇している間に完売してしまう。同人誌は一期一会だ。通販できるなら、迷わず入手するように運営アカウントでも促した。
オンライン即売会において、あえて会場から頒布物を入手する必要はないと私は思っている。会場はあくまで「即売会ごっこ」であり、雰囲気を楽しむものだろう。そもそも、会場が正常に動いてくれるかわからない。

10月開催に向けて、書店に支援を依頼した。「オンライン即売会」を書店が大々的に支援してくれるのはありがたい。専用のタグや特集ページを作ってもらえる。
10月あわせの新刊であれば、販売開始日時も指定できる。新刊を見つけやすくなるだろう。当日に新刊が完売している事故も避けられる。書店へのアクセスは瞬間的に集中するだろうが、自分には懸念を伝えることしかできない。

サークル参加者は、会場に事前入場できる。全てのエリアを歩いてみる。みんな店舗外観の作り込みがすごい(再び著作物をトレスしたアバターと店舗外観。DMする)。しかし、アバターはエリアにいても数人だ。明日は、ここに人が来るのだろうか。予想できない。

運営本部スペースで行う予定の満足度アンケートを作る。10月開催に向けて、良いところと悪いところを把握しておきたかった。

原稿で寝不足だ。ラジオ配信をして、ドラマを見て寝る。運営アカウントのフォロワーは1500を超えた。



イベント当日

█████████████
2020年8月29日(土) 11:00 〜23:30
10エリア 230スペース

8時00分、起床。会場オープンまであと三時間。
開催中はやることが多い。運営アカウントの告知。界隈のタイムライン、会場内にある運営本部と自分のスペースは注視しておきたい。デスクトップパソコン、スマホ、タブレット二台、の四画面で挑むことにした。

9時00分、オープンまであと二時間。
マシュマロが来る。スペースに列があれば並ぶべきなのか。オンライン即売会なら、並ぶ必要はないだろうと周知。

11時00分、オープン。
直後にオンライン即売会のウェブページへアクセスできなくなる。データベースエラー。会場に運良く入っても、動作が止まり、弾かれてしまう。同日開催中のオンライン即売会も影響を受けている。申し訳ないが自分にできることはない。運営の対応を待つだけだ。

エラーの様子

11時30分、書き込みボードが不安定。書き込みが成功したり、失敗したり。徐々に会場内のアバターが増え始める。

12時00分、相変わらず会場の動作は不安定だ。人数表示を信じるのなら、各エリアに数百人のアバターがいる。

13時00分、会場の動作が安定しはじめる。弾かれることは少なくなってきたが、アバターの残像が消えない。10分で消えると聞いたものの数時間は残っている。本体と残像の見分けがつかない。

14時00分、イベント終了(概念)。タイムラインで拍手が起こる。この区切りはサークルが気兼ねなくログアウトして、休憩するタイミングを作るためのものだ。

会場は、まだ賑わっている。リアル即売会なら撤収作業で閑散としている頃合いだ。自分の体力がまだ残っていることに驚く。いつもなら、飲まず食わずトイレも行けず、撤収中はフラフラしている。オンラインなら、会場を横目にお茶を飲んだり、食事ができたり、好きなときにトイレへ行ける。

運営本部のアンケートに回答が集まり始める。開催中のラジオ配信を期待されているらしい。ラジオ配信を聞いて参加を決めたというメッセージもある。それは予想外だった。

15時00分、アバターでイベント会場を徘徊する。タイムラインやアンケートの回答を見ている間は、アバターを会場の隅に置いておく。通りすがりのアバターに、二度見される。

18時00分、お寿司を食べる。

18時30分、ラジオ配信。この時点で累計参加者は二千人を超えていた。オンラインで良かった。リアルだと、個人主催が不可能な規模だろう。

22時00分、西4エリアのサークルが会場限定の作品を公開。作品を読みたい参加者が集まりはじめる。

23時30分、西4エリアが大盛況のまま終了。密集するアバターと大量のコメント。どなたかが発言された「渋谷か?」はお気に入りだ。様子を収めた動画は運営アカウントで公開した。

イベント終了時の様子(ぼかし済)

アバターや店舗外観が写り込んでいるため、公開には許諾かモザイク処理が必要だろう。しかし、写り込んでいる量が多すぎる。オンライン即売会が気になっている人、参加できなかった人にも盛り上がりを少しでも共有したかった。反感があれば取り下げるつもりで公開した動画は、他ジャンルにまで拡散されていく。

この日の参加者は、累計3107名だった。約千人が夜間に訪れている。開催時間を拡大して良かった。参加人数は四捨五入も切り捨てもせず、運営アカウントで公開した。隠したり丸めたりすれば、不信を生むと思ったからだ。
10月に向けて準備しているサークルに「盛況だ」と安心してほしかった。人の来ない即売会に新刊は作れないだろう。

運営本部で行ったアンケートは、891名から回答があった。メッセージは累計184757字。選ぶだけで答えられるアンケートであり、メッセージは全て任意回答だ。この量は想定外だったが、大半がポジティブな内容で安心した。

オンライン即売会の告知から開催まで一ヶ月もなかったが、参加サークルの行動力は凄まじかった。会場でアバターや店舗外観を見ているだけでも楽しい。会場限定で再録や新たな作品があるのも嬉しい。

なにより楽しんでくれる一般参加者がいてくれて、本当に良かった。一般参加の方は一般参加であることを卑下しがちだが、楽しんでくれるだけで十分だと私は思う。推しの作家や作品をできる範囲で応援して欲しい。
書き込みボードも良かった。普段よりもサークルと一般参加者の間で、気軽に交流ができていたと思う。アンケートでも、書き込みボードを喜ぶ声が多かった。

開催してから見えた問題もある。████████、██████の販売。幸い大きな問題には発展しなかったが、自ジャンルでは許容できない。そして、時間帯によって人の少ないエリア。やむを得ない場合もあるが望ましくはない。

終了後もタイムラインは盛り上がっている。オープン直後は不安定だった会場の動作も、午後には回復していた。今日の開催は成功だろう。しかし、8月は体験版であり、正直なところ多少の失敗を期待していた。本番のほうが盛り下がるようなことは絶対に避けたい。



2020年9月

9月某日

サークル申し込みが加速している。8月の盛況ぶりを見て、オンライン即売会に可能性を感じる人がいたのかもしれない。ジャンルやカップリングを問わず、個人主催の即売会が8月末から急速に増え始めた。

開催まであと2ヶ月間、中だるみが一番の心配だ。8月は告知から開催まで約4週間だった。これからの2ヶ月は長い。即売会の存在を忘れられてしまう可能性もある。

週に最低一回は、新しい情報を告知しようと決めた。同じ告知の繰り返しなど、誰も求めてないだろう。運営アカウントがブロックされかねない。中だるみを防ぐのであれば、新しい情報もしくは必要とされている情報だ。おそらく9月に作れるであろう盛り上がりは「スペース満了」と「スペース配置完了」のみ。捻り出さなければいけない。

そして、当日をどう盛り上げるか。8月から考えていたのは「ギャラリー」と「ノベルティ」だった。

オンライン即売会の会場に、交流以外の楽しみを作ろうと「ギャラリー」を考えた。描き下ろしイラストの展示スペースを各エリアに設ける企画だ。
会場でしか見られないイラストなので、参加者が各エリアを訪れるきっかけになる。ギャラリーに向かう道中で偶然の出会いも起こるかもしれない。参加者には会場を楽しみながら歩いて欲しかった。

オンライン即売会は現実味がない。同人誌と同じように、手元に残る思い出を用意したいと「ノベルティ」を考えた。
8月の運営本部で行ったアンケートはとても参考になった。回答は「実用品」と「記念品」に大きく二分している。実用品は選択肢が広すぎるし、クオリティが不安なので避けたい。
いただいたメッセージを読むと、█████の世界観や、バラのモチーフを好んでいる人が多い。朗報だ。世界観を表現した記念品を作ることに決めた。

ロゴと同様に、ギャラリーもノベルティも協力者が不可欠だ。8月が盛況だったので、少し心穏やかに依頼できる。

10月の会場は、エリアが少なくとも20個。全エリアにギャラリーを設けるのであれば、相応の人数へ依頼しなければいけない。イラストを依頼する上で失礼がないように、要項をまとめたクローズドなウェブページを作る。
友人に推敲をお願いすると、秒でフィードバックが返ってきた。依頼の準備が整う。連絡をして返事を待つ。約一週間後、イラストを執筆していただく20名が決まった。


9月3日 木曜日

運営本部で行ったアンケート結果を公開。


9月4日 金曜日

ギャラリーには、スペースの店舗外観も必要だ。友人がドット絵を作ってくれることになった。アバターと、運営本部の店舗外観も一緒にお願いする。要項と参考資料をまとめた依頼書を渡した。夜に友人と打ち上げ。


9月5日 土曜日

ノベルティは封筒、プラスチックカード、それがセットされた台紙の3点セットを考えていた。イメージは、架空のラウンジから届くメンバーズカードだ。試作を作る。
友人に試作を見せながら打ち合わせ。友人の提案で「ラウンジなら飲み物だろう」と、コースターを入れることにする。追加でステッカーも入れることにした。私が欲しいからだ。最終的に5点セットになった。デザインは後日。先んじて印刷所へ頭出しをする。


9月6日 日曜日

リアルな即売会の会場では、常にアニソンが流れている。開場の瞬間に流れる一曲目は、特に印象深い。参加者全員が耳を傾けている、あの雰囲気が好きだ。
しかし、オンライン即売会にBGMを流すような機能はない。音楽をリアルタイムで配信することは、権利上むずかしい。参加者が各自の端末で再生する前提で、音楽配信サービスのプレイリストを作ることにした。楽曲はアンケートで募集する。期限は一週間。マシュマロが来た。


9月7日 月曜日

書店の支援内容を公開。書店の用意してくれた説明は、残念ながら大変わかりにくい。自力でサークル向けに書店委託マニュアルを作る。8月に作った頒布物の設定マニュアルも一緒に改善しよう。運営アカウントだけでは、伝える情報に限界がある。情報ポータルサイトを作ることにした。


9月8日 火曜日

情報ポータルサイト公開。ラジオ配信。


9月9日 水曜日

サークル受付終了は、9月25日。申込みは465/504スペース。早期満了するかもしれない。
ギャラリー用に20スペースを確保。オンライン即売会の主催だからといって特殊な機能はない。運営へ問い合わせた上で、アカウントを20個作成し、サークル申し込みを20回行った。


9月10日 木曜日

9時30分、申込みは487/504スペース。
14時、505/528スペース。諸事情によりエリアを拡大。
20時、528スペース満了。拡大の希望があっても、もう拡大できない。

2019年、自カプオンリーのリアル即売会は1000スペースを超えていた。しかし、体感では半数がダミーサークル(事前入場できるサークルチケット目当ての申し込みを指す)だった。無人スペースは見ていて物悲しい。
オンライン即売会にダミーサークルはないはずだ。これ以上のスペース拡大は「満了しない」という盛り下がりになりかねない。

申し込みのあった全てのサークルをチェックする。今回は問題があれば参加をご遠慮いただくつもりだ。企業や団体が主催する即売会とは違う。主催は私だ。リスクは背負たくない。


9月13日 日曜日

月見バーガーを食べる。サークルチェックをする。ラジオ配信。


9月14日 月曜日

申し込みサークルの一次チェックが完了。リスクがあると判断したサークルを数件お断りした。空いた分だけ追加募集。約3時間で満了した。スペース配置作業を開始。


9月16日 水曜日

自分の本のネームに着手する。即売会の作業に思ったより時間がかかっている。もともと予定していた話は間に合いそうにない。ボリュームを抑えた別の話にする。

この即売会は面白いのか、大丈夫なのか、不安になる。ラジオ配信。


9月19日 土曜日

今日から四連休だ。政府から施設収容人数の制限緩和が発表された。自粛ムードが和らぎつつある。

申し込みサークルの二次チェックが完了。数件お断りして追加募集。約30分で満了。

友人とノベルティの打ち合わせ。デザイン初稿へのフィードバック。その場で話しながら、デザインの方向性と文言を決めた。友人とふたりでラジオ配信。


9月22日 火曜日

四連休の最終日。テレビでは空港の様子が流れている。先月と比較して外出する人が多い。ノベルティのデザインにフィードバック。ラジオ配信。


9月23日 水曜日

ネームが終わらない。ラジオ配信。


9月25日 金曜日

オンライン即売会のメンテナンス。開催しているジャンルを問わず、週末はサーバーが重いらしい。


9月26日 土曜日

スペース配置作業。終えた直後に、スペース確定の案内を出す。会場マップを公開。今回はサークルリストとしてスプレッドシートも用意した。タイムラインが盛り上がっている。開催まであと約一ヶ月。

リアル即売会のプチオンリーに倣い、ツイッターのアイコンを装飾する専用フレームを用意することにした。デザインを依頼する。ラジオ配信。


9月27日 日曜日

主にサークル参加者に対する案内を行う。スペースに関する基礎知識。事前入場の仕方。店舗外観の設定方法。エリア移動の仕方。プロフィールの設定方法。数日に分けるつもりが、計画が面倒になり、一日で案内してしまった。自分の本のネームを終える。


9月28日 月曜日

ノベルティの完成データを印刷所に入稿。


9月29日 火曜日

参加サークルの頒布物に████████を発見。申し込み情報の作品傾向には小説とあったため見逃していた。自ジャンルでは許容できない。メッセージを添えて参加をお断りする。

頒布物の設定マニュアルをしつこいくらい案内しておく。


9月30日 水曜日

友人と旅行に行く。雨のはずが快晴だった。



2020年10月

10月2日 金曜日

ギャラリーのイラストが到着。今月はリアル即売会が多い。禁止事項に抵触するサークルが増えはじめた。


10月3日 土曜日

ツイッターアイコンのフレームが到着。色合いやモチーフが完璧なデザインに感動する。すぐにでも公開したいが、10月はリアル即売会が多い。水を差さないよう、10月11日(日)の即売会が落ち着いたころに公開を決めた。


10月4日 日曜日

東京でリアル即売会。企業主催の自カプオンリーだが、参加サークルは多くない。タイムラインはおだやかだ。ラジオ配信。


10月5日 月曜日

ノベルティの書店委託に伴う手続き。自家通販ではなく書店を選んだのは、物量と送料と、個人情報の取り扱いに懸念があったからだ。誰かの同人誌と一緒に注文してくれれば、余計な送料はかからない。

支援により書店で販売開始日時を指定できるようになったが、前例は少ない。手続きは終わったのに、本来あるべき通販ページのアドレスが見つからない。書店へ問い合わせる。ようやく見つかった。わかりづらいので、書店委託マニュアルを更新する。

サークル参加者に対して無配(リアル即売会に倣う表現。実態は会場限定で無料公開する作品を指す)の頒布方法を案内する。ラジオ配信。


10月6日 火曜日

会場のギャラリースペースから、アクセスするウェブページを作る。イラストの見せ方を考えなければならない。

ギャラリーの壁に飾られている感じにしよう。余白を使ってライトアップしたような雰囲気を出す。イラストの上から額縁を重ねる(イラストの保存防止も兼ねる)。額縁のデザインは、主張しすぎないようにシンプルなもの。額縁の内側に落ちる影も薄く細くする。

パソコンで見た時のギャラリー(イラストはダミー)

マルチデバイス対応も必要だ。参加者の六割は、スマホを利用している。三割がパソコン、一割がタブレット。横長と縦長の画面が混在する。出し分けが必要だ。画面が縦長の場合のみ、イラストが画面いっぱい表示されるように余白を消し、横長のイラストは90度回転させる。これでどんなデバイスから見ても、イラストが大きく美しく見えるだろう。

あとは数字だ。ウェブページの下部にそれぞれ数字を置かなければならない。20個の数字を足し算すると、ノベルティを注文するためのパスコードになる。当初は謎解きめいたギミックを考えていたが、友人のアイデアで足し算にした。簡単でいて「全て集める」要件を完璧に満たしている。明快で素晴らしい。

数字はなんでもよかったが、乱数では味気ない。自カプがテレビアニメに登場した話数を使うことにした。


10月7日 水曜日

頒布物の入手に、会場は必要ないことを改めて周知。オンライン即売会は雰囲気だ。期待値は下げておきたい。

ギャラリーの予告サムネイルを作る。お名前の50音順で、イラストの全貌が見えないよう、顔周辺の一部をトリミングして並べていく。

並べ終えて、同じ「顔の向き」が多いことに気づく。黄金比だろうか。似た印象のイラストが隣り合うのはよくない。どこをトリミングすべきか、パズルがはじまった。一部のイラストはやむを得ず回転させていただく。
カラーとモノクロのイラストが混在するのも、印象がよくない。サムネイルは、全てモノクロで統一する。黒く沈みすぎたイラストは補正をかける。

大型台風の進路が危うい。週末のリアル即売会に直撃するかもしれない。ラジオ配信。


10月10日 土曜日

ギャラリーのデータを、サーバーにアップロード。協力者の方々に告知内容の確認依頼と御礼のご連絡。

ギャラリーのアクセス数を考慮していないことに気づく。一般的なレンタルサーバーにはアクセス制限がある。瞬間的にアクセスが殺到すればエラー。
例えオンライン即売会が正常に動いても、ギャラリーが見られない状況もあり得る。早急に対策する。


10月11日 日曜日

東京でリアル即売会。大型台風は幸い進路が逸れてくれた。参加者が元に戻りつつあるようだ。壁やシャッターのサークルも参加している。追加椅子はないが、スペースに立てる人数制限はふたりまで、に緩和された。

タイムラインが撤収の空気になったのを確認して、ツイッターアイコン専用フレームを公開。タイムラインのアイコンが変わっていく。好評でうれしい。開催まであと二週間。


10月15日 木曜日

ギャラリーのドット絵初稿。モチーフは架空の美術館だ。色合いや雰囲気を伝えて、方向をすり合わせる。ラジオ配信。


10月17日 土曜日

参加サークルに対して告知ハッシュタグを案内する。同人誌向けに「新刊」ハンドメイド向けに「新作」さらに「ウェブ公開」と「お品書き」。
運営アカウントは参加者の告知に対して、拡散支援をしないポリシーだ。重要な情報がまぎれてしまう問題もあるが、なにより数が多すぎて支援しきれない。

テレビアニメを見終えてから、ノベルティの告知。ノベルティの告知画像だけは、友人に作ってもらった。プラスチックカードと台紙のデザインはお楽しみとして伏せながら、魅力的にまとめてくれた。

しかし、有料で実用性もない記念品だ。需要があるのか不安だったが、予想よりもポジティブな反応が多くてよかった。ラジオ配信。


10月18日 日曜日

ギャラリーのドット絵が完成。世界観が完璧だ。高級感があって素晴らしい。

書店とは「オンライン即売会の支援」について何度か連絡している。今日は「通販ページ」に関してメールが来た。販売開始日時を指定した通販ページ、検索結果の反映に時間がかかる。
要するに、当日の夕方まで通販サイトが使いものにならない。ラグを解消するつもりはあるのか、丁寧に質問する。期待せず、返信を待つ。


10月19日 月曜日

運営本部のドット絵が完成。原作に登場する███████がモチーフだ。テレビアニメのライトアップを参考に、少し明るくしてもらう。

立て続けにマシュマロが来る。どうやら、新刊ハッシュタグのついた告知に「同軸リバ」があるらしい(ひとつの作品の中で攻めと受けが肉体的に逆転することを指す)
ハッシュタグが意外と機能していたことに驚きながら、確認する。事実だった。逆のカップリングも、同軸リバも想定外だ。

私は「固定」ではない。逆カプも同軸リバも読める。しかし、カプオンリーの参加者は固定の方が圧倒的に多い。傷つく人が多いのは明らかだ。主催として許容できない。当事者にDMする。この日は明け方までマシュマロが止まらなかった。


10月20日 火曜日

当事者と話し合い、該当の告知は取り下げていただいた。

参加者全員に向けての案内も必要だろう。「逆カプ」と「同軸」リバの作品について、会場での頒布を見つけた場合は追放する、と周知。それが他ジャンルまで拡散される。「追放」という言葉が強すぎるようだ(追放とはオンライン即売会に用意された機能名であり他意はない)。「主催が強火の固定」「楽園追放」と揶揄される。

自分の原稿が進まない。印刷所と電話で話す。


10月21日 水曜日

「追放」の件について、拡散が止まらない。拡散されはじめると落ち着くまで最低二日はかかるようだ。ギャラリーを土曜日に告知する予定だったが、拡散するには時間が足りないかもしれない。金曜日に予定を変更。

自分の本を脱稿した。ラジオ配信。眠い。


10月22日 木曜日

開催まであと三日。書店から返信があった。ラグは解消されないようだ。このまま、当日になれば混乱は必至だろう。人力で対策するしかない。

書店内の検索が機能しない以上、サークル自ら通販ページのアドレスを告知するしかない。新たに新刊の通販ページ専用ハッシュタグを作り、協力を仰いだ。書店側の事情であることも、全て説明する。参加者にはハッシュタグから、通販に臨んでもらうしかない。

タイムラインは混乱を極める。「日時指定をしなければ良かった」という声もあった。マシュマロが来る。何を言っても、書店の仕様は変えられない。

ハッシュタグは「新刊」の通販専用だ。既刊は言外に対象から外している。既刊のみで参加するサークルを貶めるつもりはないが、限られた時間の中で原稿と向き合い、新刊を出したサークルは称えるべきだろう。ラジオ配信。


10月23日 金曜日

開催まであと二日、ギャラリーの告知。ギャラリーの数字がノベルティの注文に必要であることも同時に告知する。

ギャラリーは最も反響が大きい企画だろうと予想し、ラジオ配信でも喋らずに隠してきた。あっという間に拡散されていく。マシュマロが来る。タイムラインが盛り上がっている。運営アカウントのフォロワーは2500を超えた。

主催アバターとして、自カプのドット絵が完成。とてもかわいい。会場では利用できないポーズや表情を付けてもらい、告知画像に使用した。キャラの性格まで反映されていて素晴らしい(別ジャンルの友人であり、自カプに明るいわけではない)。


10月24日 土曜日

開催まであと一日、アバターのお披露目。「ドット絵がかわいい」と好評だ。ギャラリーの件は、まだ拡散されている。告知を金曜日にしてよかった。

12時。会場のエリア選択がわかりづらい。視認性を上げるため、エリア名に区切り線を足したところ、スペース配置がリセットされてしまう。事故だ。明日のために店舗外観や、頒布物を確認しているサークルも多い。
とにかく、運営アカウントで事実を伝える。配置を一括で反映する機能はない。全スペースの配置情報を慌てて入力し直す。幸い一時間で入力を終えた(後に仕様変更。配置リセットが起きづらくなった。配置の一括反映もできるようになった)。

13時。長らく放置していた会場BGMのプレイリストを作る。アンケートと照らし合わせて一曲ずつ聴いていく。ほとんど知らない楽曲だ。
申し訳ないが、別作品の印象が強い楽曲は除外。過激と思われる歌詞や音色の楽曲も除外。あとは曲順の調整だ。自ジャンル公式の楽曲は、まんべんなく散らす。一曲目はインストにしたい。
自カプが活躍する映画の主題歌は、最初と最後にする。序盤の数十曲は万人受けしそうな楽曲やアーティストを多くして、同じ曲調が続かないように並び替えていく。全108曲、7時間48分のプレイリストが完成した。

16時、会場BGMプレイリストを公開。当日朝の公開予定だったが、音楽配信サービスの学習コストや環境構築にかかる時間を考慮して前日に早めた。想像以上の反応だ。タイムラインが盛り上がっている。楽曲に対して共感や笑いが起きていて面白い。プレイリストを作って良かった。

18時、告知ハッシュタグと頒布物の設定マニュアルを念押し。これで最後だ。ラジオ配信。自分のスペース用に無配マンガを用意する。明日は盛り上がるだろうか。早寝する。



イベント当日

████████████
2020年10月25日(日) 11:00 〜23:30
22エリア 528スペース

8時00分、起床。運営アカウントでカウントダウンを予約投稿しておく。シャワーを浴びる。

9時00分、タイムラインを見守りながら、書店の通販開始に備える。どうしても欲しい本がある。

10時00分、書店の通販開始。アクセスエラーだった通販ページが表示される。全ての本が「再販希望」ボタン。もう完売したのか。いや、おそらく在庫が反映されていない。書店の公式アカウントから宣伝のメンションが飛んでくる。それどころではない。

10時05分、在庫が反映された。しかし注文ボタンから先に進めない。タイムラインは阿鼻叫喚だ。504エラー。ワンクリック注文。ログインできない。重い。カートに入れられない。ページが表示されない。

504エラーの様子

販売日時指定の是非はわからない。大惨事だが、一斉開始ならではの盛り上がりはあった。日時指定を利用したサークルが「イベント当日に新刊が在庫切れ」という状況を避けられたのも事実だ。ラグやサーバーエラーの問題は、書店の企業努力に委ねるしかないだろう。

10時30分、会場のオープンまであと30分。書店はまともに使えそうにない。ワンクリック注文の連打により、重複注文も起きているようだ。

注文が決済できない様子

11時00分、会場オープン。重くはない。弾かれもしない。エラーもない。8月とは大違いだ。徐々に会場内のアバターが増え始める。
ギャラリーも問題ないようだ。アナリティクスから全てのエリアに等しく人が訪れているとわかる。ただし、横着防止のためにページアドレスを乱数にしたので、どのページがどなたのイラストなのか、自分も全くわからない。

12時00分、書店の動作が安定してきたように感じる。今回も運営本部スペースに「満足度アンケート」を用意したので案内を出しておく。店舗外観もアバターも、会場では画質が劣化する。ギャラリーと運営本部のドット絵は高画質でも見て欲しい。運営アカウントで公開する。

適当なアカウントとアバターで各エリアを巡回する。別ジャンルの頒布物しかないスペースを見つけた。自分も楽しみにしていたサークルなので、残念だ。当事者のツイッターは動いていた。息災で良かった。メッセージを添えて追放する。
しかし、イベント開催中であるため追放しても頒布物の表示は残ってしまった。それを見た参加者からのマシュマロは続く。問題のあるスペースやアバターのスクショを撮りながら、シャインマスカットを食べる。

14時00分、イベント終了(概念)。タイムラインで拍手が起こる。やはり、この時間でも会場は賑わっている。

それにしても、無配の有無でスペースの盛況ぶりが大きく違う。新刊があっても無配がなければ、スペースにアバターがいない。サークル主が不在であれば、なおさらだ。書店で日時指定したかどうかも関係ない。会場のスペースに行く理由がないのだろう。
オンライン即売会では、新刊がなくても無配があれば、スペースを盛り上げられる。書き込みボードに感想がもらえる。

17時00分、即売会が夜間も開催していることを改めて周知。集中力が切れてきたので仮眠を取る。一時間後にアラームをかけた。

18時00分、アラームで起床。寝起きでラジオ配信。直接お話したことのない方も、来てくださるのが面白い。ギャラリーの数字に触れている方がタイムラインにいなかったのでヒントを出して気づいてもらう。
この時点で参加者は、三千人を超えている。8月と比較して夕方から無配を公開するサークルが多い。みんな、当日に無配を作っているのが面白い。無配公開をツイッターで告知し、会場から作品を読んでもらうのが定石になっている。

20時00分、イベントノベルティの頒布開始まで、あと一時間。パスコードについて念押しする。ギャラリーの数字がテレビアニメの話数だと、自力で気づいた方を数名見かける。

20時30分、イベントノベルティの頒布開始まであと30分。会場内のアナウンス機能も使って周知する。

21時00分、イベントノベルティの頒布開始。約十分で在庫切れ。ノベルティに需要があるのか、長らく不安だった。完売に安堵する。絶対にあるだろうと身構えていたパスコードに関するマシュマロや問い合わせは、一件もなかった。

22時00分、終了までのこり1時間30分。ギャラリーを見逃さないように念押しする。イラストを再公開するかどうかは、執筆者におまかせしている。再び見られるとは、限らない。

23時00分、終了までのこり30分。西4エリアに人が集まりはじめる。8月の終了間際を知っている人が、自然と西4エリアに集まっているようだ。運営本部のアンケート回答も加速している。エリアの人数がどんどん増えていく。

迷ったが会場内アナウンスで参加者を西4エリアへ誘導する。最後の盛り上がりを見逃して、悲しむ人がいるかもしれない。会場の動作は重くなるかもしれないが、ちゃんと伝えたほうが誠実だろうと思った。

23時30分、エリアの人数が千人を超えた。感謝のコメントで画面が埋まっている。会場から弾かれてしまったり、挙動が重くなったりもしたが、なんとか終了時間を迎えることができた。

終了時の様子(ぼかし済)

終了と同時に友人が、イベントの感謝を伝えるハッシュタグを作ってくれた。サプライズだった。自発的に広まっていくことに感動する。みんな楽しんでくれたようだ。

この日の参加者は累計4626名。ギャラリーのページビューは累計64792。運営本部で行ったアンケートは1262名から回答があった。メッセージは累計155207字。

参加してくださった方からのメッセージ

終了から数日後、イベントノベルティが参加者の手元に届き始めた。糊付けされた封筒に戸惑っている。制作中に印刷所から「本当に糊付けしていいのか」と確認の電話があった(美品で届けたかったのだろう)が、糊付けしてもらって良かった。封筒の中身も楽しんでもらえているようだ。みんな素敵な写真を撮ってくれる。

長いような、短いような三ヶ月をやりきった。

8月の立ち上げから、8月の体験版開催、9月の準備を経て、10月の本番開催。良いことばかりではなかったが、友人がいつも相談に乗ってくれた。たくさんの人が協力してくれた。メッセージがありがたかった。目立ったトラブルもなく終えられたことは奇跡だ。



エピローグ

手探りのオンライン即売会だった。主催もサークルも一般参加者も、みんな経験したことがない。特に8月初旬は身内向けの開催が多く、参加サークルが百を超えるオンライン即売会は片手で足りるほどだった。

考えることは多かったが、自由に企画できて楽しかった。待ち望んでいた新刊が出た。逃していた本のウェブ再録を読めた。たくさんの作品や人と出会えた。

リアル即売会に参加者が徐々に戻りつつある。しかし、感染者はまた増え始めている。こんな状況下だが「オンライン即売会」という遊び場をみんなと楽しむことができて、私は少し救われたと思う。

███████████を主催して良かった。




(2022/09/10 追記)
後日談として3・4回目のイベントと、こぼれ話を書きました。


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