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<漫画作品の実例あり>日本⇔中国「”お色気シーン”のローカライズ」を語る

 皆さんこんにちは!中国語漫画翻訳者のもりゆりえです。
 日本の漫画作品は今や世界中で読まれ、各国で多くの漫画ファンを生んでいますよね。
 
 本日は、中国語→日本語漫画翻訳者として日常的に中国の漫画作品を見ている私が、日中両国の漫画作品で見られる「お色気シーン」が、それぞれどのように「ローカライズ(現地化)」されているかをご紹介しようと思います。
 
 まずは日本の漫画に見られる「お色気シーン」がどのように中国向けにローカライズされているかを比較するため、漫画『DRAGON BALL ドラゴンボール(中国語タイトル:『龙珠』)』のシーンを例に取り上げます。中国向けローカライズの比較対象として、同じシーンの英語版もご紹介しますので、国や地域によりどのように表現が変更されているかを見比べてみてください。

 その後は、現在の中国の漫画作品で見られる「お色気シーン」が日本向けにどのようにローカライズされているのかを、私自身の経験も踏まえてご紹介します。では行ってみましょう!


ローカライズ(現地化)って何?

「ローカライズ(現地化)」とは、商品などを販売、展開先の国や地域の文化や風習に受け入れやすい形に変化させることを言います。漫画作品のローカライズであれば、例えばキャラクターの名前をローカライズ先の国や地域の人々が読みやすい形に変えたり、作中で使われている紙幣のデザインをローカライズ先で使用されているものに変えたりします。

 次の、漫画『ドラえもん』の英語版のキャラクター紹介ページをご覧ください。

©藤子プロ・小学館 
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 『DORAEMON Vol.1』より引用

 それぞれのキャラクターの名前を見ると、ドラえもんは「DORAEMON」のままですが、のび太は「NOBY」、ジャイアンは「BIG G」、スネ夫は「SNEECH」と書かれていますね(しずかちゃんに関しては「SHIZUKA」と変化はありませんが、一部で「“SUE”と呼ばれている」という話も聞きます)。英語話者が呼びやすいよう、キャラクターの愛称を変えることもローカライズのひとつです。

日本語版→中国語(簡体字)版へのローカライズ:「お色気シーン」は隠される場合が多い

 では「お色気シーン」のローカライズとは、どのようなものなのでしょうか?
 まずは以下のシーンを比べてみましょう。

『DRAGON BALL ドラゴンボール』鳥山明 作 / 集英社 第1巻 P23より
『DRAGON BALL 龙珠』鸟山明 著 / 牟琳 等 译 / 中国少年儿童新闻出版总社 第1巻 P23より

 上下のシーンのどこが変わっているか、お気づきでしょうか?上の日本語版『DRAGON BALL』ではブルマの下着が見えていますが、下の中国語版『龙珠』では下着が見えないよう処理されていますね。
 
 このように、漫画の表現がどのようにローカライズされているかを比べると、その国の考え方や社会通念が垣間見えることもあります。この女性キャラクター(ブルマ)の下着が見えるシーンからは、中国が日本に比べ、性的な描写に関しては厳しく規制されていることがうかがえます。

 ちなみに英語版では、このようになっていました。

『DRAGON BALL』STORY & ART BY AKIRA TORIYAMA / Translation by Mari Morimoto / VIZ Media Vol. P23より

 下着は特に隠されていません。

 一昔前の日本の漫画作品でよく見られたように、日本語版『DRAGON BALL ドラゴンボール』では、至るところにブルマが入浴する姿などの「お色気シーン」が描かれており、中国向けにローカライズされるにあたって様々な修正がされています。実際にいくつか見ていきましょう。
 
 ※以下、現在の少年漫画の表現としては少々刺激が強いものも含まれますので、閲覧制限の意味も含めまして、有料エリアとさせていただきます<(_ _)>

どこまで見せる?どこまで隠す?日/中/英比較

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