五年越しのCDレビュー

何年か前、私より一世代上の人気のあるアイドルグループの子がCDを買ったことがないと話していた。 少し前、私と同世代の今年デビューした子が「CDを今まで購入したことがなかった。初めて買ったのが自分のCDだよ。」と話していた。

それもそうか。時代はインターネット、動画サイト、サブスク。

そんな時代を最前線で生きている私は今でもCDを買う。少ないほうではあると思うが今現在、50枚近くを所持している。

そんな収集のはじまりがSEKAI NO OWARIのアルバム「Tree」だ。

2015年1月14日。私は駆け足で学校から帰宅し、その日休みだった父を連れて近所のCDショップに向かった。無事にお目当てのもの見つけ、何週間か前にもらったお年玉と交換した。

ジャケットは紙ジャケ。黒く、マットな質感のジャケットだが、私にはえらくきらきら輝いているように見えた。

ドキドキしながら再生する。その日から私の音楽人生は始まったんだ。

イマジネーション

SEKAI NO OWARIは無限大だ。

そんなことを思いながら数年ぶりにCDを聞いていた。
想像力を掻き立てる歌詞と音使い。

私は昔から与えられたものに対し、そこから想像して自分なりの空間を作るのが好きだった。音楽を聴いてこの曲は【夜道で明かりは街灯しかない、観客はいない。でも一人、予定調和でないダンスを踊る】と映像を思い描いたり、小説を読んで主人公は【こんな部屋に住んでいてここにこんな家具が置いてあって】と物語に直接的な関係はなくとも隅々まで想像することが多かった。今思うと、こういう道に進んだのも若干納得できる。

こんな私にとってSEKAI NO OWARIの「Tree」というアルバムは最高のスパイスだったのだ。


収録曲4曲目のムーンライトステーション。当時とても好きな楽曲で現在聞いても古く感じないというのか、色褪せないというのか、十分時代に追いついている。そしてこの楽曲こそ頭の中が目まぐるしく回るもののひとつなのだ。

古来は竹取物語、現代で異言うかぐや姫を題材にしたのではと強く感じられるこの楽曲には、箏や三味線、篠笛といった昔から伝わる伝統的な楽器が使用されている。「J-Popにというか、しっとりとしたのはまだしもこのポップな曲調でこの楽器を使うのか」と幼いながら感じたし、このアンバランスな組み合わせこそが世界観を作り上げるものだったのだ。
また、イントロや曲の所々で使われる列車の発車ベルと走行音は曲名の「ムーンライトステーション」や歌詞の「銀河列車」象徴するものだし、シャンと音を立てる鈴はこの曲のヒロインである「君」が歩く様子にも思われる。
このように、音だけで既に世界観を作り上げる発想力に度肝を抜かれたのだ。

世界観を作り上げるのは音だけではない。歌詞も隅々まで構成されている。これは、SEKAI NO OWARIあるあると言っても過言ではないが地名が山ほど使われているのだ。この曲にはTokyo YOKOHAMA UENOと3つほど地名が登場し、これもまたリスナーの頭にダイレクトに情景を出させる手立てとなっている。

UENOのガード下の屋台で焼き鳥とビールを頼んだ君はだいぶ酔っ払って、また泣きながら、”帰りたくないよ”と

そしてこの歌詞。当時は「あ~寂しい」という感情だけだったが、世の色々を知った今は「は~!策士!かわいいやつだこれ!絶対目が潤んでる。ここでどう出る?」と少し薄暗い空間にいる二人を想像(というか妄想)する頭が止まらない。。。


と、こんな感じで自分の想像を話しつつ世界観を作り上げる構成力についてムーンライトステーションを例にお話ししましたが、この結末はぜひご自身で聞いてご自身なりの解釈をして頂きたいと思います。音楽にしろ何にしろ手に取った数だけ、体験した数だけ解釈があるのも楽しみのひとつですから。

まみれた人生を

そんなこんなでまとまりのないレビューを行ったが、やはりSEKAI NO OWARIの表現の幅と構成力には圧倒だなと熱狂的に好きだったあの頃と変わらない気持ちを持った。
そして私の音楽に溺れるはじまりであり、いまの自分を形成したモノなのだと改めて実感した。

購入して帰路で「早く開けたいな、内面やCDデザインどうなっているんだろう」という期待と高揚感で早足になる。あの時間がどれだけ幸せか。

CDへのトキメキはいつまでたっても褪せない。
次は、だれのどんな曲を買おうか。

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