働き方改革一定の効果か

リンク先の情報や内閣府の発表をもとに、色々所感などを。

そもそも「ゴール」はどこなのか

内閣府の発表によりますと、2019年の月間平均労働時間は製造業で3.5時間減(前年比)、非製造業で2.9時間減(前年比)ということです。

働き方改革の残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務が効いているという分析がなされています。

個人的には、もともと働きすぎな状態がようやく少しずつ是正されているのかなという程度の印象です。

現に、働く男性の27%が週49時間以上働いており欧州先進国と比べた場合、まだまだ働きすぎな傾向は見て取れることは内閣府も認めているところ。

また、男性が長時間労働することで女性の社会進出が阻害される側面もあり、今後は全体的な労働力の確保(女性の労働参加)と長時間労働傾向の是正を両輪的に進めていくことが課題としています。

このような「働き方改革」についてはおおむね賛成の立場ですが、しかしながら一抹の不安がないわけでもありません。

つまるところ、「ゴール」はどこなのかという点が不明確な気がするのです。

残業時間の上限規制については、昨年大企業からの実施となっています。中小企業は今年からの取り組みです。

経済的な事情、これまでの売上水準を維持しながら労働時間を削減していくというのはリソースに余裕がある大企業ならまだしも、地方の中小企業にとっては大きな課題です。

有給休暇の強制的な消化については昨年から全企業対象に取り組みが始まっていますが、恐らく地方の中小企業にとっては「どこ吹く風」状態であることは否めないでしょう。

社会全体として目指すべきロールモデルやゴールが不明確なまま制度だけ先行したとて、なかなか浸透はしないかと思います。

ドイツやフランスが目指すべきゴールなのでしょうか?それとも、日本独自のゴールを目指すのか。

厚労省によると、

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

ということですが、具体的な数値目標もなく時期の目標もありません。方向性を示すのは大事ですが、アクションプランとしてはやはり目標(ゴール)は欠かせないものです。政府の課題としては、具体性のあるゴールを明示していくことでしょうか。そして、大企業が先導して働き方を変えるという意識を社会全体の大きな流れにして欲しい。

その上で、中小企業の負担はどうするのが正解なのか。

一定の効果が見て取れる「働き方改革」ですが、まだまだこれからが大きな山場だと感じています。

労働力の確保は急務

今後の課題として内閣府が述べているように、女性の社会進出は大きな課題でしょう。そうでなくても「人手不足」が大きな影を落としている昨今、労働力の確保は急務です。

外国人の受け入れを行う前に女性や障がい者など国内の潜在的な労働力をどう活用するかが肝であるというのは度々主張してきたことですが、果たして今後はどうなるか。

そもそも共働きなど女性が労働するのは、ある種「生活費」を捻出するためという側面もあります。

ただでさえ、これまで残業代を「生活に必要なもの」として見越して必要悪的に運用してきた面もありますので「働き方改革」が女性の社会進出を妨げるという逆効果になる可能性もぬぐい切れません。

今回の内閣府の資料はあくまでパートを除いたデータ。女性が多いパートタイマ―の生活環境は非常にセンシティブなものです。

この辺については、また別の統計が出てくるかと思いますので注視したいと思います。

働き方改革の影響で事業を縮小しなければならないため、労働力が不要になる。などということが起これば本末転倒もいいところ。売上を下げずに労働環境を改めていくという難しい課題に取り組みながら、新たな労働力を確保していくという大変なかじ取りが求められている世の中です。

まだまだこれから

とは言え、一定の効果が見て取れる今回の発表。

改革の波を加速させながら、社会全体としていい方向へ向かえばいいと思っています。

奇しくも、コロナウイルスの影響でリモートワークや通勤時間帯の見直しなどに社会が目を向けています。そのような対応が取れる企業の数は限られているかとは思いますが、社会として真剣に考える契機となったのも事実でしょう。

4月からは中小企業も働き方改革の影響を受けます。どうせならプラスの影響として欲しいところですが、それはこれまでの準備とこれからの対応にかかっています。

来年の同時期にも同じようなデータが開示されるでしょうが、その頃には数値がどのように変化しているか。

まだまだ始まったばかりの日本の「働き方改革」のこれからに大いに期待したいところです。


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