※注意※ 安易な『内定取り消し』はトラブルのもと!

コロナショックの影響が広範囲に及んでいます。

世界的に経済が不安定になっている中、中小企業は経営的なリスクを大きく回避しなければいけないフェーズに突入していると言えるでしょう。

既に、観光業を中心に倒産の報が飛び交う中各種経済指標も芳しくない情勢です。

経営不振を払拭するために、雇用調整を含めた経営再建策が検討されている頃かと思います。

雇用調整(いわゆるリストラ)については一定の制約があり、即座に『解雇』というのは難しいものです。(リンクは拙著別サイト)

要件を満たしていない雇用調整は無効どころか「不当」なものとして労働争議の火種にしかなりません。慎重な対応が求められるところです。

そこで、という訳ではないでしょうが内定取り消しという手段をとる企業も出てきたようです。

筆者が新卒就活生の時はリーマンショックが直撃し、この『内定取り消し』が社会問題となりました。また、東日本大震災の際にも改めて大きくクローズアップされました。

このような悪夢が再び繰り返されないことを祈り、なおかつ正常な経済活動が戻ってくることを祈願してこの記事を作成することとします。

「内定」とは何か

大学生活の一つの終着点がこの「内定」獲得です。

善悪はともかく、日本にはまだまだ新卒一括採用主義が大きく残っており多くの大学生は自身の志望企業から(あるいは業界から)「内定」を獲得するために就職活動を行います。

企業側としても、新卒一括採用+一斉教育は採用・教育に関するコストや手間の削減といった意味やその後の評価のしやすさなどから好まれており、当面この「新卒一括採用」という流れがなくなることはないでしょう。

それについては以下の記事で思うところを書いていますので興味があればぜひ。

話が逸れるので本題に戻しますが、果たして「内定」とは何でしょうか?

一般的には、「内定」=労働契約の締結と考えられています。

つまり、「内定」を出した時点で企業と就活生には「ここで働きますよ」「ここで働いてもらいますよ」という契約が結ばれたと考えるべきです。

現実的にはまだ労務が提供されていませんし、それに伴って賃金の支払いも発生していないためイメージが湧かないかも知れませんが、将来的に向けた立派な契約が成立していると思ってください。

『内定取り消し』その効果は?

これを『内定取り消し』という形で企業側が破棄するのはどういう意味となるでしょうか?

雇用契約を破棄するということですので、これは「解雇」に相当するものだと考えられています。

通常の労働者に対しての解雇と同様、企業は一方的に何の合理的な理由もなく解雇を行うことはできません。

つまり、『内定取り消し』をするのであれば、それなりの理由が求められることになります。

例えば、「重大な経歴の詐称をしていた」とか「怪我や病気などで就業そのものが不可能になった」といった理由であれば『内定取り消し』が認められる可能性は高いです。

ここで注目したいのが、単なる経営不振による『内定取り消し』は無効となる可能性が高い、という点です。

ひとまずの経営的な緊急避難として『内定取り消し』を行うのは訴訟リスクに発展する可能性がありますので、絶対にやめてください。(倒産が確定的などであれば別ですが・・・)

結局、雇用調整同様に①合理的な理由があるか②的確なステップを経ていたか、といった点は非常に重要な要素となります。

安易な『内定取り消し』は一時的な経営リスクを下げることができたとしても、その後の訴訟リスクなどを鑑みれば悪手にしかなり得ません。

リーマンショック後の『内定取り消し』騒動はその後の就活制度にも大きく影響を与えるに至りました。幸いなことに、現段階ではまだそこまでの大騒動には発展していませんが、今後の動向次第では安易な『内定取り消し』を実施したことによるトラブルが多発する恐れもあります。

経営者の皆さまにおかれましては、慎重なご判断をお願いいたします。

世代の空洞化は避けるべき

新卒採用にせよ、若手の中途社員採用にせよ企業にとっては年齢ピラミッド構造などを鑑みて定期的に手を加えていかなければいけない大きな課題です。

かつてのバブル崩壊後の長引く不況により、空洞化した世代が発生したため中長期的に人事構造に悩まされた企業があったことを思い返してみましょう。

今年4月入社予定者については何とか予定通り採用してもらい、その後の採用戦略をどうするかという部分でしっかりと作戦を練り直す方が建設的な判断です。

当面、コロナウイルスの影響が収まる気配はありません。ここで経済が縮小してしまうのは致し方ない面もありますが、一過性の経営リスクを回避するために採用まで縮小させてしまうと将来に対しての投資ができなくなってしまいます。

何が何でもダメだ、という気は毛頭ございませんがやはり慎重な判断が求められることは間違いないでしょう。

就活生も気をつけて

最後になりましたが、『内定取り消し』についてはネット上では散見されているものの、実態として確認できている情報はまだごく少数に過ぎません。

もちろん、これからの数週間で状況が変化すれば増加する可能性もありますが・・・

こんな時であるからこそ、就活生(内定者)には落ち着いて行動していただきたい。

①デマは絶対に流さない

面白半分で『内定を取り消された』というような書き込みなどはしないようにしましょう。本当に困っている人たちにとってはいい迷惑となりますし、悪質性が高ければそれこそ『内定取り消し』の原因になりかねません。

②仮に『内定取り消し』をされた場合は専門家へ相談しましょう

先にも述べた通り、『内定取り消し』は単なる経営不振ではできません。もしそのような対応を企業からされた場合は、その場で承諾することは絶対にやめましょう。しかるべき専門家(弁護士、社労士、労働組合、ハローワークや労働局等公的機関)に必ず相談してください。いきなり相談するのが不安であれば、まず当社に相談してもらっても構いません。

色々と不安な時期となるかと思いますが、企業側も就活生側も落ち着いて対応するようにお願いいたします。

繰り返しになりますが、早期に騒動が収まることを祈っております。

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