新入社員の受け入れ準備、進んでますか?

立春が過ぎ暦の上では春。とは言え、列島には寒気が流れ込んでかなり肌寒い日となっており春を感じるのはまだまだ先の様相です。新型コロナウイルスも今のところ終息する気配もなく、春の到来が待ち遠しい今日この頃。

さて、4月になると期待に胸を膨らませた新入社員がやってくる季節となります。

新卒採用という一つの業務に区切りがつくことになりますが、目下総務や人事のご担当者たちはその受け入れに一生懸命な時期かとも思います。

で、タイトルです。新入社員の受け入れ準備の状況はいかがでしょうか?

受け入れというのは、新しい机を用意してあげることでも入社日の案内を出すことでもありません。社内一丸となって新入社員を迎え入れる体制になっているかどうか、です。

ここで取り上げるのは、備品の用意や最終的な入社意思の確認などではありません。いわゆる「社内の教育体制」の話です。

みんな最初は不安だった

初心忘るべからず。よく聞く言葉です。

しかし、こと新入社員の受け入れとなるとこれがなかなかできないものです。ついつい「上司」や「先輩」という肩書きに囚われてしまい、自分も昔は新入社員だったことなんて忘れてしまいます。

最近は特に働き方が多様化していることや転職への(精神的な)ハードルが下がっていることもあり、新入社員といえどもすぐに辞めてしまうご時世です。

上司や先輩という肩書きは一度捨てて、まずは新入社員がどんなことに不安を感じているのか。その不安を払拭するために何ができるのかという部分からしっかり考えていきましょう。新入社員に対していかに寄り添ってあげられるかがまずは精神的なキーとなります。

自分も不安だったように、皆不安です。まずはその「不安である」ということが正常だということを理解・共感してあげましょう。

社内研修の意味とは

そんな不安な新入社員に対して多くの会社はまず「研修」という形で手を差し伸べます。

さて、この社内研修の意味は何でしょうか。

社会人としての自覚を持たせ、企業の戦力となるための基礎知識を身に着けさせること。これも一つの正解でしょう。

しかし、これは明らかに会社側の都合を押し付けているだけに過ぎません。

昔みたいに、大上段から「社会人とは~」「この会社でやっていくには~」みたいな堅苦しいことを述べても敬遠されるのがオチです。

もちろん、それも大事です。しかし、少し研修しただけで身に着くようなものではありません。

先ほども述べましたが、新入社員は不安なんです。そして、期待も持っています。いきなり堅苦しい話ばかりではおもしろくないものです。

自分たちのキャリアビジョンに繋がる話や実際の仕事の醍醐味など、新入社員が「将来像」に期待が持てるような展開を用意していると研修の意味もぐっと増してきます。

ビジネスマナーなどはその後でも十分です。

先輩社員たちとの整合性はあるか

最初の研修はだいたい総務や人事などの間接部門が主導でしょう。研修部署などがあるような規模が大きな会社ならいざ知らず、たいていは業務の一環として総務や人事が受け持つことになるかと思います。

で、導入研修が終わればOJT(On the Job Training)などと称して現場の先輩社員や上司の元で実務を覚えていくというパターンが多いのではないでしょうか。

ここで重要なのが先輩社員たち。

先輩社員や上司から学ぶことは、紙に書いてあることよりも情報量が多く新入社員からすれば日々勉強という感じになるかと思います。

問題は、この先輩社員や上司が適任であるか否かです。

研修や教育を担当する先輩社員に必要な能力は、「仕事ができるか」ではありません。

繰り返しになりますが、新入社員の不安に寄り添える人が一番望ましいのです。

できれば年が近く、悩みや相談を受けやすい年齢層の方がいいでしょう。この人選は結構悩ましいものだと思います。

そして、人選が終われば先輩社員に対して研修を行っておきましょう。

これは、改めて会社が新入社員に何を伝えたいのかやどういう態度が望ましくないのかなどを研修しておくことで導入研修とOJTとの整合性を取るためです。

もっと言うならば、採用時に新入社員たちに伝えていた内容と実態がかけ離れていないかなどの確認の意味もあります。

「自由に意見が出せる職場です」といって採用したのに、いざ現場に配属されたら「とりあえず新人は黙って言うことを聞いておけ」みたいな対応をすることがないようにしなければなりません。

このようなことは社風にも関わってきますので、なかなか一朝一夕にはできないことかと思いますので日頃の行いが重要なんですが・・・

とは言え、改めて新入社員教育に関わる全ての人たちの意識統一を図るのは有意義だと思います。

禁句は「これがうちのやり方」

新入社員を育てるにあたってのNGワードがあります。それが「これがうちのやり方だから」です。

恐らく、最初の頃は新入社員に対して「どんどん質問してくれ」と言うでしょう。事実、新入社員たちはほとんど何もわからない訳ですからどんどん質問してきます。その方が健全です。

ただし、質問への回答には少し注意が必要です。

「なんでこうやるのですか?」と聞かれた時に「これがうちのやり方だから」と回答してしまうケースが結構多いのです。

世の中、会社の数だけその会社独自のルールやマナーがあると言っても過言ではありません。

書類のホッチキスの留め方からお茶くみの方法、グラフの配色などなど数えていけばキリがないくらいの「ローカルルール」で溢れています。

それはそれでいいのです。恐らく何らかの理由があってその「ローカルルール」が発生しているのでしょうから。

ただ、その「ローカルルール」をそのまま押し付けることはやめましょう。

人を育てる時に重要なのは、ロジックです。「なぜこうなっているのか」という質問に対して「こういう理由でこうなっている」と返せないのであれば回答すべきではありません。

それこそ新入社員に対して「自分で考えられるようになってほしい」みたいなことを言っているとすれば最悪です。

『先輩はなぜこういうやり方をするのか考えてないのか』と思われてしまいます。

このような言行不一致的状況が発生するのを防ぐためにも新入社員研修に関わる人に対しての研修が必要になってきます。

研修のための研修は何をするか

では、新入社員研修に携わる人に対しての研修は何をすればいいでしょうか。

最低でも必要なのは

・新入社員にどうなって欲しいのかというイメージの共有

・自分たちが新人の頃の不安点、疑問点の洗い出し

・想定される質問とその回答例

くらいは必須でしょう。

仮に部署や配属地域がバラバラであっても、「新入社員がこういう風に育ってくれたらいいな」という研修の目的やビジョンは必要です。

個性を伸ばすとか個性を活かすというのは「最低限の下積み」があった上からです。その「最低限の下積み」をどうするかというのは会社として明確にしておいた方がいいでしょう。

また、自分たちがどのようなことに不安を感じていたかや最初はどんなことに疑問を抱いていたかというのは非常に重要です。

恐らく同じような不安や疑問を新入社員たちも感じます。さらに、プラスアルファを付け加えて「想定問答」を考えておきましょう。これは教わる人が変わったら答えも変わるという事態を避けるためです。「最低限」の部分はブレてはいけません。

特に、法令関係や社内規則、根幹となるような業務スキルの部分などはブレが出ないように気を配りましょう。

これらに付け加えて、いかにして寄り添うかというのを皆さんで考えていけばいいと思います。

まとめ

ここまで読んでみて「え~めんどくさい」とか「最近の新人手がかかるなあ」という感想を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。

もっと言うなら「お客様でもないのにそんな扱いできない!」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。

簡潔に言えば、人を育てるというのは本来とても面倒なことです。

ただ、その手間を惜しむか否かが人が育つ環境か否かに直結するというだけです。

できることならば、勝手にニョキニョキ育ってくれたらもちろんありがたいでしょう。しかし、かかった手間以上のリターンが将来的に発生すると考えれば頑張れませんか?

新入社員たちが成長していつか必ず会社にリターンをもたらします。

一時の手間を惜しんだせいで、早期退職などされてしまえば採用から頑張ってきたすべての人の努力は報われないのです。

それに、人が育つ環境があればそれだけでも採用的にはアドバンテージです。

何であれ、新入社員への教育や研修は長期的な目線で考えましょう。

すぐに「あいつは使えない」みたいな烙印を押すことのないように、会社として育てる覚悟を持って取り組んであげてください。

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