ガラスコーティング
たとえば糸が垂れてきて、それが銀糸であろうとも、掴まぬようにしています。
たとえば糸が垂れてきて、それが金糸であろうとも、触れないようにしています。
どれだけ指に絡ませたって、いつかはちぎれる、そのことを、この目で知っているからです。
いっそ、ガラスの粉でコーティングした糸を、そっと垂らしてくだされば、裂けてあふれる、あふれる熱が、すべてを呑んでくれるのに。
垂れてくるのは銀糸です。垂れてくるのは金糸です。
いらないのです。きらつく一条も、それをきれいだと感じる左胸も。
わたしは見たく、ないのです。
微笑みたくも、ないのです。
(了)
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