一つに
夜と夕とが口づけしてる、その瞬間を見上げるたびに、藍でも黄金でもない、青磁がぺろりと舌を出す。絡ませたいと、わたしは思う。だけど届かず、立ち尽くす。文字通り、灰となってく流れの底へ、沈んでいったそのつやを、どれだけ追っても、唾液は混ざらず。ほしいほしいと口を開け、キスしてください、そう叫んでも。わたしの舌では物足りませんか。わたしの唾液は苦いんですか。問いは呑まれる。音もなく。口元を、腕で拭って色はそのとろむ瞳を、冷たくつむって。
夜と朝とが抱き合い垂らしたその秘色は、眠ったまぶたを乱暴にこじ開けて。肌に巻きつく青白磁は、青臭く。閉じよう閉じよう。力を入れても、まつ毛に絡んだ臭味が邪魔で。手を伸ばしても、色は変わらず。汚れた腕の、皮のやわらかさが、ただただ染みて、くるばかり。いっそこのまま。そう開き直り、混ざろうとしたって、溶け込むことは、かなわない。吐息を濡らすことができるのは。甘味を蒸発させられるのは。
重なり合った色彩の不純物にさえなれず、色でもなければ透明でもない。ただただ見ていることだけを強いられるわたしは、美しいなんていう肉のない言葉をつぶやきながら、同時に醜いとも思い、こぶしを作って。
(了)
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