土偶

 水を含んだ濃い茶の土へ、乾いた真白い砂をかけ、地面を掘っていたときです。

 隣に誰かしゃがみ込み、この手に絡んだ深い色、冷たいねってつぶやいて。

 敷衍という名の土偶を持って、遊び始めたその子見て、砂をぎっしり握ります。握らぬわけには、いきません。

 赤黒い指が、ただそうだからと、青黒い指も、きっとそうだろうと、土のおもちゃに微笑ませ。笑顔のしわに溜まった垢を、疑心の雨で流さずにいて。それで平気でいるんです。かゆくなりさえしないんです。

 黒マジックと濁った紙が、キスしたときのあの音は、押し広げても、押し広げても、二つの耳は拾わずに。青い指が燃えてるだなんて、つゆも思わず。凍る凍ると、薄笑い。

 そうして土偶を放り投げ、この手を不意に握ってきては、指を絡ませ力入れ、強く強く、いうんです。でもまぁ大丈夫。でもまぁ大丈夫。

 その指頭は油まみれで。この手はさらに燃えさかり。

 振りほどこうと歯食い縛り、それでも腕力の差は埋まらず、焼けて焼けて。この手は焦げつき、動かなくなり。

                               (了)

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