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役割分担

我が家の次女、いつも元気でご機嫌である。2歳を前にして母である私が仕事に復帰し、父である夫が専業主夫になった。毎朝私が出かけるとき、にこにこと見送ってくれる。一時保育と父子分離の運動教室にも楽しそうに出かけていく。特に一時保育は先生方が思いっきり遊ばせてくださるので大好きだ。毎回泥だらけの水浸しで「たのちかった!」と帰って来る。

そんな次女、お盆休みが明けた頃から急に登園渋りが始まった。夫が送って行くとすごい声で泣き叫ぶらしい。その日はなんとか先生に託したが、園でもしばしば泣いていたとのこと。家で園の話が出るだけで、「行かない」とべそをかくようになってしまった。仕方がないので園を休ませた日もあった。先生方は「パパとママがいないことに気づいたんじゃないかしら?心配要らないと思います。」とおっしゃってくださったが、見たことのない情けない泣きっぷりに夫婦とも参ってしまった。運動教室でも、なんとか最後までいるものの、見学する夫のところに度々戻って来てしまうらしい。

我が家には専業主夫がいるのだから、本人が嫌がるのであればわざわざ父子分離する必要はない。不安が強いのに無理矢理分離すれば次女の心が傷ついてしまうかもしれない。しかし、休ませて二度と行きたくなくなってしまうのはもったいない気もする。遊びや運動をあんなに楽しんでいたのだ。毎日次女と公園をはしごする夫が、自由に使える時間も大切だ。どうしようか。夫婦で話し合っても答えは出ない。

そんな折、4度目の緊急事態宣言が出された。少人数制の運動教室は休みにはならないものの保護者の見学ができなくなった。運動教室の先生に、ここ数日、分離不安が強いことを伝え、何かあったら電話をもらえるよう頼んだ上で、いっそ二人でお茶をしようと夫を誘った。仕事を終えた私と、泣きわめく次女をなんとか教室に送り込んだ夫は、喫茶店で待ち合わせた。久しぶりの喫茶店に浮かれる妻を見て夫は「次女が泣いているかもしれないのに何でこんなに脳天気なんだ」と思ったらしい。私はというと「心配したってしょうがない」と思っていた。

「あ、これの逆パターン、私の専業主婦期間にあった気がする。」

4月から専業主夫をしている夫とサラリーマンをしている私。不思議と夫は「お母さんらしく」、私は「お父さんらしく」なっている。父らしい、母らしいという言葉が適切かどうかは難しいところだが、細かいことを気にしない性格の夫は、なんだか細やかに娘たちの気持ちに寄り添うようになった。家族や家事のことばかり心配していた私は、まあなんとかなるでしょ、と思うことが多くなった。その人の性格はその人のものだと思っていたが、どうやら違うようだ。環境や役割に大きく影響される。

夫婦でゆっくりコーヒーを飲んでいる間、次女は運動教室の60分間のプログラムから離脱することはなかったらしい。夫が見えなくなったらすぐに泣き止んでご機嫌だったとのこと。迎えに行ったら誇らしげに「たのちかった!」と言った。

その後、一時保育はめそめそ登園を2回ほど経て、泣かずに登園できるようになった。帰宅後は「たのちかった!」と話してくれる。今回はうまくいったけれど、登園しぶりの2歳児に適切な対応ができたのかは結局よく分からない。でも、次女が心配でそばについていたかった人と、まあなんとかなるでしょと構えていた人が両方いたことが良かったんじゃないかと思っている。夫婦をやっていると、感覚や行動の違いがたくさんあって、もっと私と同じ気持ちになって欲しい!と思うこともある。それでも、自分が悩んでいるときに全然悩んでいない人がそばにいることはありがたいときも多いのだ。

リビングの整頓をしていたら、長女の通学グッズが入っている箱から、何かの包装ビニールが出てきた。薬箱からは、夫が飲んだ薬の包装ビニールが出てきた。私は「何でゴミを捨てないんだろう?」とため息をついてしまう。でも、「ついつい置きっぱなしにしちゃうんだよね。」と笑う夫がつくってくれる居心地の良さもあることを、私は知っている。

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