映画『キャラクター』を観た


 気になっていた映画を観たらオススメに出てきた作品。適当に感想を書いたら人に勧めるみたいな文章になったので置いておく。

 あらすじを簡単に説明すると、センスのない漫画家志望がたまたま遭遇した殺人事件をモデルに作品を描いた結果大ヒットし、本家殺人犯にも届いてオリジナル事件を模倣される話だ。
 以降はネタバレがあるので、ネタバレ踏みたくないぜ!という方は事前の視聴を推奨する。結構いろんなところで配信されているらしい。

 主人公である山城圭吾(演:菅田将暉)は「キャラがない」人物しか描けずアシスタント止まりだった男。恋人と同棲しており、作品の連載が始まってからもなんやかんや彼女を大切にしている。山城がアシスタントをしていた漫画家の本庄は彼を「優しい」と称していた。話が進むごとにそれは描写されていく。自作品を模倣した事件をこれ以上起こさせないために大ヒット作(多分未来のカグラバチくらいの立ち位置な気がする)を終わらせるのは優しくないとできないだろう。増える犠牲者と自分の生活を天秤にかけて後者が勝つ人は少なくないだろうから。
 両角と名乗る殺人鬼(演:Fukase)はサイコパスで、山城の作品に登場する殺人鬼「ダガー」のモデル。殺害のターゲットにするのは「幸せな4人家族」のみ。「3人でも5人でもダメ。4人が一番幸せ」といった発言から考えるにどうしても譲れないポイントらしい。こういった特定の考えに固執する殺人鬼はよくフィクション作品に登場するものだ。
 両角の思想は幼少期の環境に起因している。4人家族を素晴らしいものとするコミュニティ―おそらく小規模のカルト宗教に近いものだろう―が集まる村で育った子供。思考・思想というものは常に変化を続けるものだが、やはり幼少期の記憶が中心となって形成される。「ふつう」を知らないまま育った結果、歪んだ思想に固執する大人になったのだろうと考えた。とは言ってもそれだけで殺人を繰り返すような人間にはならないはずなので、彼の抱える殺人衝動は生まれ持ったものだろう。

 観ていて個人的に気になったのは山城の異常性。アシスタント時代、「サスペンスを描きたがっているけど悪人が描けない」という言葉が本庄から出る。致命的な弱点だ。なんせ、サスペンスには悪人がつきものだから。にも拘らず彼はサスペンスを描くことに固執している。
 両角は山城に、「先生は漫画の中で殺人を楽しんでる」と言った。山城が刑事に撃たれる直前、両角やダガーのような笑みを浮かべていた。人を傷つけて悦に浸っている、俗っぽく言えばネジの飛んだ顔。
 なぜ彼はサスペンスを諦めなかったのか?抱いた疑問の答えはおそらく前述のシーンにある。サスペンスであれば人を殺せるから。どれだけ残虐な殺人を犯しても合法だから。あくまでも私の考えだが、山城は両角が抱えるような殺人衝動を創作にして消化している。山城と両角は根本的に似ているのだ。

 つらつらと書いてきたけど、正直何よりもFukaseのビジュがメロすぎる。アマプラのオススメに流れてきたとき「え?!メロすぎる男……Fukase?!?!観るか……」になったので。蓋を開けてみたら全員方向性の違うメロさを持っていて最高。シンプルに癖。思わず監督と脚本家の過去作品を調べてしまった。
 Fukaseの演技力も凄い。少し興奮気味で絶妙に成り立たない会話、微妙な頭の揺れ、何かがおかしいと感じさせる挙動。完全に「関わったらヤバい人間」だった。役者と役は同一視しないよう心掛けているタイプなのだが、本当に上手過ぎてFukaseってヤバい人か?マジの社会不適合者か?と思ってしまった。どうやらFukaseはこの作品が俳優デビューらしい。そんなわけないだろ。上手過ぎる。
 視聴後ずっとFukaseもとい両角にメロっており、文章内でもその話ばかりしているが、バディの刑事などもかなり刺さっている。中村獅童演じる真壁と小栗旬演じる清田のコンビだ。捜査中、真壁が上司に「清田ならそうする」と言ったシーンで少し泣いた。
 脚本、構成、カメラワーク、演技、どこをとっても素晴らしい。最高という使い古された言葉しか出てこない自分の語彙力が歯がゆい。序盤数分で引き込まれる作品、本当に最高なので是非視聴してほしい。いろいろなプラットフォームで配信されているそうなので。是非。

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