スクリーンショット_2019-05-22_19

誰もがモノを作れる未来

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第5回田中浩也さん

5月15日、SFC研究所所長田中浩也さんの講義を受けた。ファブの普及・テクノロジーの進化によって、社会がどう変わっていくか、という内容だった。

この講義を受ける前に、たまたまファブに関連する印象的な出来事があった。5月上旬、大学院のイベントで、3Dプリンターを使ってファブのイベントを開催している高校生に出会った。「ファブを使って、新しいコミュニティやコミュニケーションの形を模索していきたい!」と語る2年生で、社会人とも臆することなく社会やイノベーションについて議論したがっていた。
自分の高校時代を思い返すと、素直に「すごいなあ…」と感心するとのだが、一呼吸置いて考えると、「別におかしなことでもないか」と思った。身近に3Dプリンターがあり、使う機会に恵まれ、興味を持てば、なじんでいくのが当たり前だ。若ければ、なおさらだ。多分、これからファブはどんどん「誰もが参加できる」領域になっていくだろう。

誰もが参加できるようになると、道具やサービスの使い勝手はどんどん改良され、ごく簡単なスキルだけで、自分のイメージ通りのものが作れるようになる。
例えばアパレルに関して、自分が思い描く「こういうデザインの服」は、自分の頭の中にしかない。自分の頭の中にあるデザインを形にできるようになれば、イメージ通りの服が欲しい時に、イメージに近い既製服を探すより、自分で作りたいと思う人が増えてくるのは必然のように思われる(しかもその方が安い!)。

そうなった時に、プロフェッショナルに求められる能力・役割は、「顧客が望むもの・好みを高い精度で作れる力」ではなくなってくる。彼ら・彼女らに求められるのは「新しい価値や視点を提供できる力」だ。
これはAI進化の視点からも同じ見方ができる。Amazonは検索者が欲しいと思うものを、かなり正確に「オススメ」してくれる。テクノロジーやAIは、自分の好みを、自分と同じかそれ以上に正確に把握してくれる。
けれども、一方で、個別の最適化が進めば進むほど、「自分が出会ったことがな胃だけで、もしかしたら好きになるかも知れないもの」に出会う確率は低くなる。自分の価値観を変えてくれるものに出会う機会は、どんどん少なくなっていく。
専門家の役割は、生活者が欲しいものを作るのではなく、新しい価値観・視点を社会に提供し、生活者の世界を広げていくことになってくるのではないか。

最後に、SFC田中ゼミの「#SFCスピリッツの創造」の課題にチャレンジしてみる。内容は「いま現在は多くの人が同意しないが、未来になって明らかになる大切な真実とは何か?」というものだ。以下、労働に関する30年後の未来予想である。(ファブとはほぼ関係がなく、かつ、妄想)

---------------------------------------------------------------------------

働かなくても生活できる人が、人口のかなりの割合を占めるようになった。多くの仕事・作業がAIにとって代わられたが、それは物質的な貧困を助長することにはならなかった。AIは給料を要求せず(メンテナンス費用はかかる)、しかも生産性は向上。「働かざる者、食うべからず」という人はいなくなり、働かなくても食べていける社会になった。その反動なのか「賃金をもらわなくても働きたい!」という人が大量に出てきた。仕事が生活のためにするものではなく、「楽しみのため」「時間潰しのため」にすることに変わっている。

---------------------------------------------------------------------------

柞刈湯葉氏の『未来職安』(2018年 双葉社)という小説で、この未来予想に近い「働かないで生活できる社会」がコミカルに、かつリアルに描かれている。面白いので、オススメだ。


#田中浩也 #慶應義塾大学 #SFC #ファブラボ #SFCスピリッツ #柞刈湯葉 #未来職安 #武蔵野美術大学 #造形構想研究科 #クリエイティブリーダーシップコース

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?