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デザイナーの発明

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 川上デザインルーム 代表 川上元美さん

2020年6月8日、川上デザインルーム 代表 川上元美さんのお話を伺った。川上さんのデザインは発明である。川上さんはがつくるデザインには、常に新しい試みが施されている。それは形状・形態であったり、構造であったり、単に素材であったりと様々だが、川上さんのデザインからは、今までにないものを生み出そうとするための実験を行なっているように感じられた。「こうしたらどうなるだろう」「こうしたら新しいものができるのではないか」というマインドを持ちながら、デザインしている様子が想像できる。だから、川上さんにとってデザインすることは新しいものをつくりだす発明的な行為なんだなあと思った。

デザイン起点での発明、ということから想起されたのはイタリアのデザイナーで「役に立たない機械」などを制作したブルーノ・ムナーリ(1907〜1998)だ。

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彼は、その著作「ファンタジア」(2006年 みすず書房)で、ファンタジアという概念について説明している。ある人が将来クリエイティブな人間になるか、記号の反復者(知っていることをただそのまま再生産する人)になるかは、ファンタジアを活用するかどうかにかかっているという。ムナーリはファンタジアを「これまでに存在しないものすべて。実現不可能でもいい」と暫定的に定義している。つまり実現性や機能性を考えずに、自由に新しいことを考えることである。もう少し詳しく言うと、知っているもの同士を変形させたり結合させたりして、新しい関係を頭の中で作り出すことである。だから頭の中にある知識の総量が多いほど、ファンタジアの源泉は豊かになるが、ただ知識量が多ければ良いということでもない。新しい関係を考え出すことをしなければ、それは蓄積された知識はもとのままで止まるだけである。
川上さんが生み出すものは、彼のファンタジアをカタチに落としたもの、という印象がある。ファンタジアが発揮されているデザインはみていてワクワクする。

川上さんは東京藝大在学中にアンジェロ・マンジャロッティー氏に感銘を受け、卒業後イタリアに渡り3年間支持したそうである。ブルーノ・ムナーリもマンジャロッティーもイタリアのモダンデザインの巨匠である。両者がお互いに影響を受けあっていたのかは分からないが、イタリアのデザインにはこうしたファンタジアが宿っているのかも知れない、と勝手に想像した。

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