「ポピュラー」というヒゲ剃り
「ポピュラー」という名前のヒゲ剃りをご存知だろうか。
冒頭の写真は、メーカーの商品紹介のサイトから拝借したものであるが、そのポピュラーというヒゲ剃りの画像である(近いうちに自分で撮影した画像に差し替えたい…しばしご了承を)。
今回は私がポピュラーを買うに至った経緯と、使ってみて思うことを述べたい。
そもそもポピュラーとは
ポピュラーは、フェザーという日本のメーカーの出しているヒゲ剃りである。このヒゲ剃りは、両刃カミソリをセットして使う。
両刃カミソリは、薄べったい金属で作られている。長方形みたいな形状をしており、その長い辺の部分が両方とも刃になっている。両刃カミソリの中央部分には細長い穴が開いている。
この穴をホルダーに差し込み、ホルダーを閉じて使う。冒頭の写真の一番左に写っているのがホルダーに両刃カミソリを差し込む様子で、ホルダーを閉じると右側のような形状になる。ホルダーの開閉は、ホルダーの軸についているネジを回して行う(冒頭の写真では黒い軸の付け根にある銀色の部分がネジになっている)。
ポピュラーを買うに至った経緯
私は自宅のお風呂は滅多に入らない。銭湯に行く。
それでヒゲやムダ毛の処理を銭湯で行いたいのだが、そこで問題となるのが「どうやってヒゲ剃りを持ち歩くか」という問題である。
今まで使っていたのは、ジレットの3枚刃のもので、これは20年ほど前に購入したのだが、キャンペーンで専用のプラスチックケースがついていた。ところが度重なる移動と自粛生活の末、このヒゲ剃りがケースごと行方不明になってしまった。
自粛生活をいいことに、私のヒゲやムダ毛は絶賛「生え放題」中となっていた。しかし、緊急事態宣言も解除され、さすがに「生え放題」では不都合となってしまった。
お風呂場で使うことを前提としているため、いくら丸洗いできるものが出ているとはいうものの、電動シェーバーを使う気はない。そもそも「生え放題」をやった後の状態で電動シェーバーが機能するとも思えない。
それで刃だけ交換するタイプのヒゲ剃りを探すのだが、私の場合は「持ち運ぶ」ことを前提にしているため、専用のケースがついていることが購入の決め手となった。
元からフェザーというメーカーは知っていた。というのも、一頃、肌を傷つけないことを強調したヒゲ剃りを出していて、そのTVコマーシャルを何度か見た記憶があるからだ。余談だが、あのCMは秀逸だった。今でこそ芸能人ではなくアニメのキャラクターが登場するCMは珍しくないが、当時にしては珍しく『はじめの一歩』というボクシング漫画を使っていた。特にBGMはなかったと記憶しているが、男性の声で「ガード」を連呼するだけといった感じのTVコマーシャルである。なお、当の漫画の主人公である幕ノ内一歩はフェザー級の選手で、守りが堅い選手という設定である。
そんなメーカーだということは知っていたものの、お店でこのポピュラーという髭剃りを初めて見た時、「どうやって使うのだろうか」という不安がよぎった。今まで使っていた3枚刃のヒゲ剃りだと2枚目3枚目の刃がついているであろう部分が若干膨らんでいる。てっきり私は、このホルダーの開閉する部分の先端に刃があると勘違いしたのだった。
一旦お店を出て、ネットで検索して、Amazonレビューもざっと目を通した上で、ようやく買うことに決めた。まぁ間違って使えないものを買ってしまったとしても1000円でおつりが来るんだ、ものは試しで買ってみよう、と。
それにしても不思議である。いわゆるドラッグストアを数件ほど見て回ったのだが、ジレットもシックもその他のメーカーも、専用ケースがセットになった商品を1個も出していないのである。洗面台に立てておくのに便利そうなスタンドはセットになっているのに、である。
髭剃りは持ち歩かないのだろうか?
確かに銭湯で見ていると、家から髭剃りを持ってくる人はレアだ。フロントで売られている100円くらいの髭剃りを買って使う人はそれなりの人数がいる。
出張の時は、どうするんだろう…ホテルにある使い捨ての髭剃りを使うのかな? あるいは出張の時だけ電動シェーバーなのかな(そういえば私の父は旅行や出張の時だけ電動シェーバーだった…そういう時こそ故障が嫌だから私は電動シェーバーなんて持って行かないけど)。
たとえ出張先でも私は普段使っているのを使いたいのだが、世間一般の普通の人は、そういうことは思わないのだろうか?
剃り心地は最高
買って、さっそく実際に使ってみる。
恐る恐るホルダーの軸についたネジを回してホルダーを開ける。紙に包まれたステンレス製の刃を、横から挟むような感じにそっと取り出し、ホルダーの上に乗せる。ネジを回してホルダーを閉じる…1個1個の動作が不安と緊張の連続である。しっかりと石鹸を泡立てている間も、この奇妙な形のヒゲ剃りから目を離さない(私はシェービングフォームを使わない)。
そして、いざ、肌に当ててみる。
…極めてよく剃れる。
その剃り心地は、まるで床屋さんみたいな感じさえする。物凄く気持ちが良い。
そもそも私はヒゲ剃りを使わなくて良いなら使いたくない。時間がもったいないし、面倒くさい。サボれるものならサボってきた。自粛生活は天国だった。そんな私でも、この気持ち良さには「毎日剃りたい」と思ったほどである。この記事を書いている今、その気持ち良さを思い出して「剃りたい」と思っているほど、実に気持ち良いのである。
とりわけムダ毛は、サボれる限りサボっていた。というのも、剃った後2,3日すると決まって痒くなるからだ。生えてくる時に痒いのが嫌で、生えっぱなしにさせていたかった。
ところがこの両刃カミソリで剃ったら、生えてくる時に全く痒くない。どうして痒くないのか理由は不明である。考えられることとしては(1)替刃にジェルがついていない、(2)1枚刃で深剃りできないから、の2つが考えられる。
改めてヒゲ剃りを問う
ヒゲ剃りを買い替えただけで、あれほどサボりたかったヒゲ剃りがすっかり気に入ってしまった。申し訳ないが今まで見たことも聞いたこともなかったヒゲ剃り1本で、ここまで価値観が変わってしまった。
それと同時に、このヒゲ剃りを使うようになって思うことが、大きく分けて2つある。
まず、そのヒゲ剃りは本当に体にとって問題がないか、ということ。
剃った後に痒く感じたのはジェルのせいかもしれないけど、そのヒゲ剃りについているジェルは何でできているのか。謎なカタカナ物質でできているのではないか。
この記事を書くにあたり、「髭剃り」「健康」なんてキーワードで検索をしてみると、意外と剃った後に肌荒れを起こしている人が多いということに気付いた。私の場合、今まで肌荒れをしたという記憶はないものの、このヒゲ剃りに変えてから今まで以上に一段と肌の状態が良くなったように感じている。美容に全く関心のない私ではあるが、そんな私でも気付くくらい状態が良い。
謎なカタカナ物質で作られたジェルやフォームを使ってヒゲ剃りをし、これまた謎なカタカナ物質で作られたアフターシェーブローションを使って肌を整えたはずが、何やらワケのわからない肌トラブルを引き起こしているかもしれない。
私はジェルやフォームではなく石鹸を使う。それも「最後は工場長が自ら食べて安全性を保障する」というアレッポの石鹸を使っている。そしてアフターシェーブローションとして、自家製のドクダミチンキを使っている。このドクダミチンキは色々と使えるので、栄養ドリンクの空きボトルに入れたものを救急バッグに入れて常に持ち歩いている。
この記事を書く中でいくつか調べてみて、深剃りについても疑問を感じはじめている。確かにヒゲの濃い人なら、朝剃って夕方にはゴマがついているような具合になるのは困るだろう。それで深剃りして夕方に出てくるヒゲを抑えたいのだろう。ただ、それは本当に必要なことだろうか。見栄えを気にして肌にダメージを与えるのは、よろしくないだろう。
このポピュラーのように持ち運べるヒゲ剃りなら、昼食後に歯磨きをするみたいにヒゲ剃りだってできるのではないか。これなら電動シェーバーのようにうるさくないから職場でも使えると思う。
もう1点は、そのヒゲ剃りはエコか、ということ。
私の場合、最初から電動シェーバーは考慮していない。というのも、電動シェーバーは電気を喰うし、電動シェーバーの替刃なんて聞いたことがないから。どうせ故障したらゴミになるだけでしょうし、それ以前に剃り味が悪くなったら捨てることになるのだろう。リサイクルだって満足にされているとは思えない。
これまで何の疑問も持たずに、ホルダーに替刃が何個かついて売られているようなヒゲ剃りを使っていた。今になって思えば、あの替刃にはプラスチックと金属が使われている。分別が難しい。
その点、ポピュラーはシンプルだ。何しろステンレス製の刃は、その刃だけ取り外しできるのである。ホルダー部分が故障しない限り、ずっと使い続けられる。そもそもホルダーだってシンプルな構造だから、故障することがイメージできない。
ついでに、そのヒゲ剃りは財布に優しいか、ということも付け加えておこう。
もちろん別のメーカーの替刃を選ぶことも可能ではあるが、とりあえずポピュラーの替刃をAmazonで見たところ、10枚入りで高くても600円である。単純計算で1枚60円ということになる。
それに対して、今まで私が使っていた替刃は、同じくAmazonで見たところ8個で1800円する。これも単純計算で1個225円する。
ヒゲ剃りの替刃が高い理由として、ヒゲ剃りメーカーのビジネスモデルというものが知られているらしい。これは、ヒゲ剃り本体を安く売った後、替刃を高くすることで収益を上げるというビジネスモデルであるらしい。確かにそういうビジネスモデルは存在するだろう。例えばウォーターサーバー本体は無料でも中のミネラルウォーターは高い、といった具合に。ところがポピュラーに関して言えば、そういうビジネスモデルのヒゲ剃りよりも本体価格が安いのである。
これはエコとお財布の双方にも関わる話になってくるが、そのヒゲ剃りは使い続けられるか、という問題も付け加えておきたい。
私はずっと3枚刃のものを使っていたが、今は6枚刃なんてものもあるらしい。同じ3枚刃でも肌当たりが優しいモデルの替刃があるらしい。そして、そういうモデルチェンジされた替刃は古いホルダーでは使えないことも多々ある。実際、私はかつて適合する替刃を探すのに苦労した記憶がある。
それに対し、wikipediaによるとポピュラーは1965年に発売されたヒゲ剃りとのこと。今が2021年だから、実に半世紀以上モデルチェンジしていないのである!
それを知った時、つい「じゃぁそれ以前の人はどうしていたのさ?」と私などは思ってしまうのだが、半世紀以上に渡って愛用されているというのは、それだけ信頼できる商品だと言えるのではないだろうか。
私のように単にその商品を知らなかっただけという人もいると思う。あるいは次々と流れてくるコマーシャルに、こういう古き良き商品がかき消されてしまうのかもしれない。本当に良いベストセラーは宣伝しなくても売れるからね。
今更だけど、これは間違いなく私の2021年「#買ってよかったもの」だな。
それにしても、何でこんな「ポピュラー」なんて名前にしたんだろう? この名前だけ聞いて、それがヒゲ剃りだって、すぐに誰もわからないんじゃない…芳香剤みたいな名前だな(あ、あれは「車にポピー」か)。
お後がよろしいようで。