オフロード仕様のEV三輪車

ここまでEV三輪車に乗りたいと私が思うに至った経緯にはじまり、前回は単に個人的な好みではなく日本の社会が抱える問題解決の方法の一つとして三輪車の活用が考えられるという話をしてきた。なお、ここで言う三輪車とは側車付軽二輪のことである。
それらを踏まえて今回は改めて私のEV三輪車に対する特別なカスタマイズについて語る。

前回の復習:道路の補修は後回し

前回の内容で、とりわけ今回の内容に関わる点は、「傷んだ道路の補修は後回しにされる可能性か高い」ということである。
高度成長期に作られたインフラの老朽化が進む。そこに追い討ちをかけるように、高齢化により福祉の予算が膨らむ。一方、少子化によって十分な税収が見込めない。どこかで予算を削る必要が出てくる。
そうして限られたインフラのメンテナンスに持ちいられる予算は、まずは疫病の発生に関わる上下水道が優先される。ヒビ割れが起きて剥がれたとしても、そのことがダイレクトに命に別状はないため、道路の補修は後回しになるだろう。

長持ちする三輪車

三輪車(側車付軽二輪)の場合、重量税が最初の1回しかかからない。車検もない。
自動車の場合、同じ自動車を乗り続けていると重量税が跳ね上がる。それで多くの人は10年ほどで新しい車に買い替える(資源の乏しい日本において実にもったいない!)。
それを思うと、しっかりメンテナンスを行えば、同じ一台の三輪車を長年に渡って乗り続けることが可能である。

私は、私の人生において、これが最初で最後の三輪車としたい。つまり、最低でも向こう30年は乗り続けるつもりで考えている。
正直30年後なんて、よくわからない。ただ、先に述べたように補修されずに劣化した道路が増えることを思うと、オフロード仕様にした方が良いのではないだろうかと私は考えた。

それで「オフロード仕様の三輪車」という、まるで漫画のネタみたいなカスタマイズをお願いすることになる。
ただでさえ三輪車というマイナーな乗り物にオフロード仕様なんて、アホらしく見えるだろう。でも、恐らくライト兄弟だって最初は「何アホなことやっているんだ」と思われていたに違いない。

オフロードはファッションではない

ここで一つ、お断りしておきたいことがある。それは「オフロードはファッションではない」ということである。
車に詳しくない私でも、かつてジムニーが流行ったのは覚えている。ジープも根強い人気がある。2020年あたりからはハスラーあたりだろうか。ただ、そういう流行やファッションといったノリでオフロードを選択しないでいただきたいと私は思う。
アウトドアもそうだ。ブームだからと安易に真似事をしないでいただきたい。

そんな流行り廃りは、事故の元だ。世間様に迷惑をかけることにつながりかねない。
大量消費社会の良いカモ・餌食である。

もっと言わせてもらえば、どうもアウトドアやオフロードというものは自衛隊的というか軍隊的な影がチラつくことも忘れないでもらいたい。私のような平和主義者がオフロードやアウトドアに手を出す時は、そういう「ニオイ」を極力排除したいと思う。

これは全くの余談であるが、私はトレンチコートはなるべく着ないようにしている。トレンチコートは元々は軍服だから。
バリバリの企業戦士をしていた時は、意図的に着ていたけどね。

機能美としてのオフロード

さて、これから私が注文するEV三輪車をオフロード仕様にすると決めた上で、細かい仕様の依頼を出すにあたり、実はちょっと思い悩んでいることがある。それは「モールシステム」である。
モールシステムが採用されたリュックサックを知らず知らずのうちに使っている人もいるかもしれない。リュックサックの、背中が当たらない部分に縫い付けられている1本のテープが、およそ3cmおきに縫い付けられていて、このテープの縫い付けられていない部分に指を入れられるのなら、それはモールシステムである。この縫い付けられていないところに、例えばカラビナを取り付けることでシェラカップやロープや手りゅう弾を持ち運ぶことができる。もし同じくモールシステムを採用されたポーチやコンテナを持っていれば、専用のパーツを使ってしっかりと固定することもできる。モールシステムがあることで手持ちのリュックサックやカバンの容量を拡張することができるのだ。
これは便利である。三輪車という小さな乗り物にモールシステムはさぞ都合が良いことだろう。しかしモールシステムは軍事用途で生み出されたものである。

モールシステムの採用を見送るとしても、例えばピックアップ(トラック)タイプの三輪車の荷台の壁に当たる部分にスコップを取り付けるのはアリだろう。色々と三輪車の情報を情報を集めていると、三輪車は意外と雪道も難なく走るという。スコップがあれば雪の日に他の人を助けることができるかもしれない(普段はせいぜい落ち葉掃除に使われるだけかもしれないけど)。
冗談はともかく、「他の人を助けることができるかもしれない」という点では、一番最初の記事で述べた通り、私はソーラーパネルからの電気で動く三輪車を手に入れようとしている。もし災害が起きて、復旧に相当な時間がかかり、他のガソリン車やEV車が燃料尽きたとしても、ソーラーパネルを積んだEV三輪車なら物資を届け続けられるかもしれない。非常時にはソーラーパネルを取り外してスマホの充電に貸し出せるかもしれない。そんな時は、草むらの中の土を掘って簡易トイレを作る必要に迫られる可能性だって十分に考えられる。
大震災を経験してアウトドアの知識が生きるということでアウトドアに興味を持ったという人も多いらしいが、知識で頭を一杯にしても意味がない。むしろ「どうやったらできるか」が大切である。ひたすら考えて実行の繰り返しである。考えなしに「アウトドアの知識は災害に役立つらしいよ」では生き延びられないどころか他の人のお荷物になる。だから私は、そんな流行やファッションのように流されるアウトドアやらオフロードやらを否定する。
ともかく、そういう具合に広い用途が想像できるので、私の三輪車にスコップは標準装備したい。

三輪車にシャコ上げとインチアップを

あれは2000年代初頭のことだろうか、走り屋さんの車といえば「シャコタン」という、車高を極端に低くした車が多かった。その反対に車高を上げるのを「シャコ上げ」という。
インチアップとはタイヤのサイズを大きくすることである。このインチアップにはホイールサイズも一緒に大きくする場合と、ホイールはそのままにタイヤのサイズだけを大きくする場合の2通りがある。後者の場合は、タイヤに入れる空気の量が増えることから、道路の凸凹を感じづらくなるというメリットがある。
実はインチアップを行うことで、自動的に車高も高くなることから、時折シャコ上げ=インチアップだと思っている人がいるらしい。タイヤだけではなく、タイヤと車体の間にあるサスペンション(サス)というバネによっても道路の凸凹による衝撃は吸収されるのだが、このサスの長さを長くすることでもシャコ上げは可能である。時々オフロード車の写真で、車体がタイヤよりも浮き上がった感じになっている写真があるが、そのようなケースはインチアップによらないシャコ上げである。

シャコ上げやインチアップを行うと、いかにもオフロード車という風貌になる。しかし私は見た目重視でオフロード車を作ってもらおうと考えているのではない。繰り返すがオフロードやらアウトドアやらキャンプやらというのはファッションではないし、そんな流行やファッションで手を出したら事故の元だ。
今回、私が購入する「EV BOSCO」という三輪車は、名前から察しが付く通りEV車である。スマホが水没して使えなくなったという経験のある人もいるかもしれないが、一般的に電気は水に弱い。
そして年々ゲリラ豪雨は激しくなる。さっきまで通れた線路の下をくぐる道路が、あっという間に冠水して通れなくなってしまったという話はしばしば耳にする。もちろん「安全のために雨の日は乗らない」という判断も大切なのだが、ピンポイントで襲ってくるゲリラ豪雨は回避が難しい。そこでEV三輪車のお腹周りを少しでも地面から遠くしてあげることで、故障を回避したいのである。まさかEV三輪車のお腹周りに「はらまき」をさせるわけにもいかないので。
ゲリラ豪雨でなくとも、道路が凸凹するということは、その凸凹(わだち)の部分に水溜りができる可能性が高い。運悪く水溜りに突っ込んでしまった時に上がる水しぶきからも、EV三輪車の大切な部分を守りたい。
テレビで流れている自動車のコマーシャルが「遊べる車」みたいなことを言っていたりするが、このEV三輪車のオフロード化はお遊びではない。私は至って真剣に考えているのである。

オフロード仕様のEV三輪車の懸念点

そのように熟考に熟考を重ねてEV三輪車のカスタマイズを考えているのだが、これら全てがスンナリ可能であるとは思わない。

まず、シャコ上げは重心が高くなり、安定した走行が難しくなる危険性がある。空気抵抗も増えるだろう。
それからインチアップは上手くハマれば最高速度が上がるかもしれないものの、大きなタイヤは小さなタイヤよりも重たいことを忘れてはならない。つまり、インチアップによって一度の充電で走れる走行距離が短くなってしまう危険がある。
今回、私の購入する「EV BOSCO」は、フルに充電した状態で75kmしか走れない。カスタマイズを施さない状態での最高速度が60kmなので、およそ1時間に1回のペースで充電することになる。しかしインチアップと引き換えにフル充電で走行可能な距離が短くなると、より頻繁に充電しなくてはならない。
私のお願いしているカスタマイズに、ソーラーパネルからの給電で走るというのがある。
本当にソーラーパネルからの給電で走れるのであれば、その分だけインチアップによる走行可能な距離の減少を補えればとは思う。とは言え、どれくらいソーラーパネルでカバーできるのか、現時点の私には全くわからない(物理学をしっかり勉強しておけばよかったと少し後悔している…生物・化学ではなく、物理・化学にしておくべきだった!)。
ソーラーパネルもスコップも、地味にその重さを無視できない。いくら軽自動車ではなく側車付軽二輪にダウンサイズして、人を乗せて走るのに適した乗用車のようなデザイン(パッセンジャーモデル)ではなく荷台に2人だけ乗せることのできるトラックのようなモデル(ピックアップモデル)にしたのは、軽量化のためだったとはいえ、カスタマイズでそれがチャラになってはもったいない。

なお、「EV BOSCO」は神戸にあるgarage BOSCOが取り扱っているのだが、このガレージはアルファロメオのような高級輸入車に強みを持つガレージである。オフロードを手掛けたとは聞かない。
ソーラーパネルを乗せると言い出すところから、本当にガレージ泣かせのカスタマイズばかり私はしている…これは本当に申し訳ないのと同時に、どこまで対応して頂けるのか少し不安に感じている。まぁ、仮に一切のカスタマイズを許さないという状況であっても、私はこの「EV BOSCO」というEV三輪車を買うつもりに変わりはないのだが…。

まとめと次回予告

単なる流行やファッションとしてオフロード仕様にするのは危険である。どうしたら良いのかを考えた上で実行に移すべきである。
熟考の結果、私の思い描くオフロード仕様のEV三輪車は、「シャコ上げ」「インチアップ」「スコップの装備」そして「ソーラーパネルによる走行と災害時の非常電源としての貸出」というカスタマイズを希望している。
カスタマイズは必ずしも思い通りに行くとは限らない。想定されるデメリットもしっかり見ておく必要がある。

次回はEV三輪車に限らず電気自動車の助成金について、私が怒りをおぼえたことを書きたい。ほんと行政って、誰得なのでしょうね。

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