EV三輪車という選択肢
数日後(2021年10月27日)に、EV三輪車「EV BOSCO」の試乗をする予定である。
今の日本で「側車付軽二輪」と呼ばれるタイプの三輪車を見かけることは稀である。このタイプの三輪車は、ピザ屋のバイクではない。普通免許で運転できる上に高速道路も走ることができる三輪車である。後部座席があれば運転手のほかに人を乗せることができる三輪車である。更にこのタイプの三輪車は車検も車庫証明も不要である。
今回は、通常のEV車ではなくEV三輪車を私が選ぶに至った経緯について説明する。
木村氏のEV軽トラに憧れて
木村俊雄『電気がなくても、人は死なない。』(2015, 洋泉社)という本の最後のほうに、木村氏本人が自作したというEV車の写真が出ている。それはソーラーパネルを積んでおり、太陽光で走り続けることができる、災害に強いEV車である。
このEV車に憧れて、純粋に「欲しい」と思ったのが事の発端である。
中古の軽トラなら、20万円も出せば状態の良いのが手に入る。エンジンを取り外してモーターとバッテリーを積むのだから走行距離も年式も関係ない。
だが、そのモーターとバッテリーのところで壁にぶち当たった。
EV車のモーターとバッテリーのジレンマ
私の場合、自宅の近くに高速道路の真下を走る国道がある。ついでに隣の県に出掛ける際は、高速道路と並走する国道を走る。どちらの国道も時速80kmは出さないと他の車に迷惑である。そうすると、それなりにパワフルなモーターが必要になる。
パワフルなモーターは値段が高いというのは仕方ないとしても、パワフルなモーターは電気を大量に消費するというのが厄介である。電気を大量に消費するということは、同じ規格のバッテリーを積んでいたのであれば走行距離が短くなるということである。もちろん都合よく充電スポットがあるとは限らないから、モーターに合わせてバッテリーの容量も大きくすることになる。
要は沢山の電池を積むことでパワフルなモーターの消費する電気をカバーすれば良いのだが、そうすると今度はバッテリーの重さが電気の大量消費につながってしまう。これはガソリン車でも積荷が重たい時はアクセルを深く踏み込む必要があるのと同じことである。
モーターのスペックと、バッテリーの容量の間には、そのようなジレンマがある。
そこに加えて、例えば高速充電に対応できるかどうか、(鉛蓄電池やリチウム電池など)どんなタイプのバッテリーを積むかといったことがコストに跳ね返る。
恐らく大手メーカーさんは、そこを吟味した上で、そういうEV車をそういう価格で出している。「理にかなった」という意味ではリーズナブルなのだろうけれど、そもそも私はセダンである必要はないし、軽で十分である。
ともかく、私の場合、実際に中古車を弄くり回すよりも前に仕様の段階で激しい壁を感じたのだった。
EV車の軽量化のための三輪車
モーターやバッテリーのカタログを時折チラ見してはため息をつく生活を3年は続けたと思う。ふと私は素朴な疑問を抱いた…
「なんで軽トラなんだろう?」
そう、木村氏のEV車は軽トラである。車のサイズが同じなら、別にミニカのような軽自動車だとか、ディアスのような軽のバンでもよかったはずだ。
この素朴な疑問に対する正解は、木村氏本人にしかわからない。ただ、この素朴な疑問を抱いた次の瞬間、車体そのものの軽量化という発想が浮かんだ。壁がない分だけ車体が軽量化できるから、その分だけ多くバッテリーを積むことができる。
このことに気付いた次の瞬間、私の頭の中には「だったらトゥクトゥクで良いのでは?」とひらめいた。トゥクトゥクというのは、タイなどの東南アジアで走っている三輪車のことである。
調べてみると、日本でもトゥクトゥクのような三輪車を走らせることができる。最高速度は時速80kmに制限されるものの、高速道路も走ることができる。さらに側車付軽二輪という扱いのため維持費が安い上に車庫証明も不要である。
「これならいける」と確信した。
まとめと次回予告
EV車のモーターの性能が上がれば消費する電気が増えてバッテリーが重くなり、消費する電気が増えるという悪循環を断ち切る方法の一つとして、EV車それ自体の重量を減らすことが考えられる。車体重量を減らす方法として、軽自動車よりも維持費の安い三輪車の利用が挙げられる。
次回は、欲しい三輪車を効率的に探すコツを述べる。
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