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【白書発行】モビリティを梃子とした住民QOL向上のためのプレイブック(前編)

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターは「Mobility as a Leverage to Improve Quality of Life with Resident Participation」を2023年6月15日に公開しました。白書は英語ですが、本note では日本語で前後編に分けてお示しします。
なお、当センターは、2023年6月16日から18日まで開催される G7 三重・伊勢志摩交通大臣会合官民セッションおよび会場展示に参加します。本プレイブックの内容も現地でご紹介予定です。


要旨

  • 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター(C4IR Japan)は、地方MaaSの実装、ならびにモビリティを梃子とした“住民参加型”QOLの向上に向けて取り組んでいる。2021年10月から広島県庄原市において、地方MaaSの実装について、実際の現場において検証すべく、“包括的データ[i]をもとに議論し、課題を見定め、アジャイルにアクションを起こす”ことを目的とした研究会(以下、「庄原研究会」という。)を立上げ、活動してきた。

  • 1年半あまりの活動により得られた最も重要なことは、地域住民の方々自らが問題解決に向けた議論に参加し、データ解析により可視化された課題を肌感覚と合わせることによって、全体での共有化につながり、ジブンゴト化されるということ、更にはソリューションを議論し、小規模でも素早くアクションに移すことによって、活動参加者の熱量が増大するということである。本プレイブックにおいては、データ解析をどのように行えばよいのか、庄原研究会の事例をもとにそのプロセス・視点を紹介するとともに、地域で活動を進めるための仕組みづくりについても提言を試みる。

  • 仕組みづくりについては、“オープン”で“フラット”な組織が適切であり、さらには参加者間で相互トラストを構築・担保し、それを深化させていくことも欠かせない。本プレイブックでは、庄原研究会の事例を踏まえながら、どのようにデータ連携基盤を構築・運用してきたか、その管理体制・各主体の役割、更にはデータ加工・解析に関するルールを詳述するとともに、地域住民が安心して関わることができる枠組みの重要性について触れる。

  • 最後に、“住民参加”から“住民主導”に発展させるための今後の展望について、以下3点について触れる。

  • 1点目は、専門家もおらず、AI手法などの導入が容易でない環境下で、どこまでデータの活用ができるかを追求する中、ある程度の経験とスキルがあれば取り組めそうなこと、そして地域主導でデータ管理・活用を可能にする“地域完結型データ連携基盤”構築でカギとなる要素について概観する。

  • 2点目は、自家用車に頼らず、気軽に外出ができること、行きたい場所が増えて外出が楽しみになるような環境を作ることは、地方の生活や生態系を維持する上で急務となっていることを踏まえ、“共助”のモビリティネットワークを構築・実装するアプローチの検討と実証を紹介する。

  • 3点目は、多様なデータを地域で管理・活用する“地域完結型データ連携基盤”や“助け合い交通ネットワーク(仮称)”などを住民主導で進めていく取組みは、住民や来訪者などが安心・信頼して使える体制・仕組みの下で、透明性の高い形で運営・運用されることが不可欠であり、また、持続可能な事業として構築される重要性を考えると、地域に根差し、官民一体となって進めることが必要であることから、官・民からも自立した第三者組織が適切であることに触れる。


[i] 「包括的データ」とは、本プレイブックでは、「人々の行動やモノの動きに係るデータ全般、移動に閉じず、消費行動・医療・健康・余暇活動等、利活用可能なデータが共有されている状態」と規定する。


Ⅰ.“誰一人取り残されない”モビリティ社会の構築に向けて

1.地方モビリティを取り巻く課題認識

地方の特に過疎化が進む地域におけるモビリティは、高齢化、若者・働き手の流出、都市との格差拡大等を背景に、高コスト化・担い手不足に陥る等、「多様な要請に如何にモビリティが対応できるか」、そして「それを如何に持続可能にしていくか」という課題を抱えている。自治体予算が限られる中、日本の地方部の多くで、公共交通の持続可能性が厳しい状態に陥っている。

こうした課題は日本固有のものではなく、多くの先進国にも当てはまる。G20各国の人口は、日本に加え、ドイツ・イタリア・中国・韓国・ロシアが2030年までに減少傾向に転じると予測されている[i]。また、OECD ITFは地域構造・人口密度に対するシェア型モビリティを図1のように定義しており[ii]、“誰一人取り残されない”モビリティ社会の構築が、世界共通の課題であることが伺え、その解決に取り組むことは、エクイティ・インクルージョンの観点からも意義が大きい。

しかし、地方のリーダーがモビリティ変革に取り組もうとしても、いくつかの障壁が存在する。例えば、必要なデータを集め、シナリオを作成してシミュレーションするといった最適なソリューションを選択するための一連のプロセスが確立されていないことや、その結果旧態依然の意思決定が行われていること、ベストプラクティスの共有が進んでいないことなども、取組みを難しくしている。[iii][iv]

【図1:地域構造・人口密度に対するシェア型モビリティ】 
出所:OECD ITF “Innovations for Better Rural Mobility”

[i] 国際連合、「World Population Prospects 2022」https://population.un.org/wpp/
[ii] 国際交通フォーラム、「Innovations for Better Rural Mobility[より良い地方モビリティのためのイノベーション]」、2021、https://www.itf-oecd.org/sites/default/files/docs/innovation-rural-mobility.pdf 
[iii] 経済産業省・国土交通省支援のものだけで延べ130以上行われている。経産省/国交省 “スマートモビリティチャレンジ”、2019、https://www.mobilitychallenge.go.jp/ 参照
[iv] トヨタモビリティ基金、「地域にあった移動の仕組みづくり」助成事業レポート
https://chimobi-toyota-mf.jp/case/ 


2.地方MaaSにフォーカスしたC4IRのこれまでの取組みと現在地

C4IR Japan は、この問題に対し、地方自治体によるモビリティ変革を支援するための取組みを進めてきた。2020年に発行した白書『日本と世界における地方モビリティの変革』[i]では、公共交通持続性インデックスを策定し、地方公共交通の状況を見える化し、事態の逼迫性を再認識させ、特に変革を必要とする領域を浮き彫りにした(図2)。鉄道やバス、タクシーといった交通手段の収益指標や将来の需給予測に関する指標により、現行のモビリティの仕組みの持続可能性について、客観的かつ将来を見据えた理解を可能とした。加えて、地方のモビリティ改革を行う際に考えるべき6つのポイントを“DRIVER”という枠組みで示した(図3)。都市類型ごとにこれらをどのように組み合わせ、どのような解の方向性を目指すべきかを整理することで、各地域に必要なソリューションを絞り込めるようにした。 

【図2:公共交通持続性インデックスの指標】
【図3:都市類型と“DRIVER”】


さらに、2021年には白書『MaaSを用いた地方モビリティの変革』[ii]を発行し、地域の類型ごとにMaaSの共通の課題及びその課題を乗り越えるための効果的な施策に向けたカギ(キーサクセスファクター – KSF)を特定した(図4、5)。また、各MaaS事業者へのインタビューを通したケーススタディにより、抽象化されたKSFがどのように実装されているのかも明らかにした。これらによって、今後MaaSサービスを始める事業者・自治体にとっては、地域に合わせたビジネスモデル作成時のチェックリストとなるとともに、既にMaaSサービスを運用している事業者・自治体にとっても改善の種を探すことに役立つような内容を示した。 

【図4:地域の類型化と有効なMaaS】
【図5:日本のMaaS事例から見えてきた課題とKSF】


そして2021年10月からは、実際の現場である広島県庄原市において活動を進めてきた。庄原市は「人口密度が低く、かつ分散居住の郊外」と「比較的集住度の高い中心部」が併存するという特徴を持っており、図1のOECDの整理において、住民の移動に関する課題を解決するソリューションが示されていない地域を包含した地域である。このような地域で、MaaS実装のために必要な条件・要素を見定め、実装を如何に進めるべきか検証することができれば、他地域への横展開が可能になる。検証に当たっては、(独)国立高等専門学校機構呉工業高等専門学校 神田教授のリードのもと、“データを基に議論し、課題を見定め、アジャイルにアクションを起こす”ことを目的とした研究会を立上げた[iii]。データ解析については、あえて解析未経験の C4IR Japan が担い、試行錯誤を繰り返しながら、議論とアクションについては“住民参加”を強く意識して取り組んできた。人口減少や地域モビリティの課題に関心の高い住民の方々を中心として、月1回のペースで研究会に参加いただき、今日まで継続している。[iv]


[i] 世界経済フォーラム、「日本と世界における地方モビリティの変革」、2020年1月https://www3.weforum.org/docs/WEF_Transforming_Rural_Mobility_in_Japan_and_the_World_2020.pdf
[ii] 世界経済フォーラム、 「MaaSを用いた 地方モビリティの変革」、2021年4月https://www3.weforum.org/docs/WEF_MaaS_Rural_Mobility_JPN_2021.pdf.
[iii] 世界経済フォーラム、「The Shobara Model: Leveraging multi-source local data for the public good[庄原モデルーー公益のための包括的な地域データの活用]」、2022年4月、https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_Shobara_Model_2022.pdf.
[iv] 世界経済フォーラム、「地域プロジェクトを動かす上での包括的データ利活用の効用: ~モビリティを梃子とした住民のQOL向上プレイブック発行に向けて~」、2023年3月
https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_Benefits_of_Comprehensive_Data_Use_in_Mobilizing_Regional_Projects_JP_2023.pdf 


3.本プレイブックの狙い ~住民参加型プロジェクトの進め方~

1年半にわたる研究会活動を通じて、議論の活性化とアクション実行における“住民参加”の重要性を想定以上に痛感している。住民自らが問題解決に向けた議論に参加し、データにより可視化された課題を肌感覚と合わせることにより、課題が共有化され、ジブンゴト化されていく。そして、課題に対するソリューションを議論し、小規模でも素早くアクションに移すことによって、変化が可視化され、議論が更に活性化するというプロセスを目の当たりにしてきたからである。参加者の熱量が増大していくことを体感したことは、C4IR Japan として本プレイブックを発行するきっかけとなった。

本プレイブックでは、こうした体験を踏まえ、住民参加型プロジェクトの仕組みづくり・進め方について、データ解析事例を交えながら、紹介することを狙いとしている。今回紹介するアプローチは、過疎地・人口減少地域にとっては、ビッグデータの解析からでは見失いがちな課題を発掘し、問題解決のアクションを起こすために有用であると考えており、日本の他地域はもとより、少子高齢化が進行する諸外国においても、取組みのヒント・きっかけとなることを期待したい。


Ⅱ.データ活用の意義と解析事例

1.データ活用の意義

継続的な“住民参加”を促し、議論を活性化させるためには、データ活用がカギとなる。データを活用するためには、専門的な知識とツール[i]の導入が必要と考え、非常に難しいものであると捉えられてしまうかもしれない。あるいは、活用できるデータは身の回りには存在しないと諦めてしまうことも想定される。しかしながら、“ありもの”のツールとデータを用いて、その第一歩を踏み出すことは可能であり、またハイレベルな議論も十分可能である。その手順を簡略化すると、次の3ステップとなる。

  1. 課題を明確化するために、関連するデータにはどのようなものがあるかをまとめる(図6参照)。

  2. 消費・子育て・介護・娯楽等の行動データを、住民目線で分かりやすく類型化し、データから読み取れる課題を住民にフィードバックして、意見を集約する。

  3. 得られた情報から地域の真の課題を理解し、移動課題等、具体的なソリューションを導くために、必要なデータを絞り込んでいく。

ここで重要なことは、データ解析は机上の統計処理だけでは完結せず、“住民参加”によって初めて意味をなすということである。こうして絞り込まれたデータにより課題が可視化され、参加者間で課題が共有され、ジブンゴト化していく。更にはアクションの議論・実行によって、参加者の熱量の増大につながっていく。このことこそがデータ活用の意義と言える。

ここからは庄原市における解析事例をもととして、より具体的なプロセス・切り口について紹介したい。

【図6:地域課題に求められるデータ】

[i] セールスフォース 、「データウェアハウスとは?分析用に整理された情報の倉庫について解説」
https://www.tableau.com/ja-jp/learn/articles/what-is-Data-Warehouse#what-is-data-warehouse.


2.庄原市のデータ解析事例 

(1)データ活用の第一歩
庄原市には市全域の商用施設で使える地域電子通貨カード(なみか・ほろかカード[i])が存在しており、市民の約3割が利用している。ここから得られる消費データをもとに、どの店舗でいくら使ったか、どれくらいの頻度で買い物するか等の買い回り行動の可視化を行い、住民の行動目的を消費、余暇、娯楽などの目的別に類型化した。その結果、住民の行動目的としては、余暇や娯楽が少なく、ほぼ生活用品の買い物に集中していることが分かった。また、時間帯を中心地と郊外に分けると、郊外居住者は夜遅い時間の購買はほとんどないことも分かった。

データを行動目的単位でまとめることで、住民と対話する話題づくりを行うことがデータ解析の第一歩となる。

【図7:消費データから見える生活行動】 

(2)データ解析の準備
実際に行動目的単位での解析を行うためには、居住地ごとの住環境条件の把握が重要となる。地理的条件(平地、山間部)、移動手段、観光資源、地域産業、住宅地、祭りやサロンなどの人の交流のある地域、人口が分散し交流がない地域など、同じ市内でも多種多様の特徴や課題を抱えている。これらを正しく把握してデータ解析を行うに当たっては、データの属性、年齢別、性別、世帯構成などを地域別にまとめるための事前の処理を行うことが重要となる。

【図8:データ解析を行うための事前処理】

(3)地域の住環境に基づくデータ類型化及びミクロデータ解析
事前処理を行ったデータをもとに、高齢者介護、子育て、産業活性化などをキーワードとして、自治振興区ごとの特徴を類型化した。これにより、地域ごとの課題をデータで可視化することができ、市役所、地域事業者、商工会が施策・活動を検討にするに当たって、よりデータを活用しやすくなった。地域のアイデアと連動することで、ミクロなアクションを可能にすることを狙った。

【図9:自治振興区ごとの特徴類型化①】 
【図10:自治振興区ごとの特徴類型化②】 

(4)マクロデータ解析
ミクロな視点で解析することで、個別のアクションを起こすことはできるが、必ずしもすべてが活性化につながるわけではない。続いて、マクロの視点によるデータ解析により、庄原市全体の地域活性化を検討した。

庄原市の喫緊の課題は人口減少、担い手不足である。消費データを人口統計データと重ね合わせて、消費データの落ち込みから、10年後の市全体の経済を推測することを試みた。地元加盟事業者の消費データに基づき予測は立てられたが、全国チェーンの事業者やコンビニなどを含めた市全体を俯瞰することは、”ありもの”データだけでは不可能であった。そこで地元経済を熟知している商工会議所、市役所などとデータを突き合わせて、地元の肌感覚に合う推測を行った。

地元も納得する10年後の市の経済損失をデータで可視化し、損失を埋め合わせるアクションとそれによる経済効果の数値目標を提案したところ、4つの施策が合意された。これにより前項(3)で述べた個別アクションの位置付けが明確となり、10年後を見据えたまちづくりのアイデアを地元の熱意で立案することができた。 

【図11:庄原市に提案した将来予測とアクション】 

(5)生活行動からの交通流課題の推定
続いて、消費目的の移動課題を把握するために、積極的消費者、普通消費者、消極的消費者に分類を行い、国道筋の移動に便利な地域、山間の地域、農業など一次産業エリア、企業などへの働き手の多い地域、高齢者、若い世代などを考慮して解析を行った。それらの結果から、生活消費行動、イベントなどの余暇、住民同士のコミュニティ交流、外部からの観光など、移動目的に合わせた交通課題が明らかになった。また、移動の課題を抱えて消費に消極的な住民、積極的な住民がどこに住んでいるかなどを分類することができた。

このように地域住民の行動を類型化することで、地域活性化キャンペーンやイベントをどの地域でどのような世代に対して行えば外出頻度が増えるかという、いわゆる行動変容を起こすための施策を仕掛けることができる。

【図12:データ解析からみる地域への交通提案事例】

(6)交通データの活用
公共交通が十分ではなく、人口減少が進む地域では自家用車の交通分担率は9割を超える。交通データと消費データを重ね合わせて、日々の移動の目的、課題まで踏み込んで細かく解析しようとすると、公共交通のデータだけでは住民の移動を類型化できず、また、自家用車の移動データを入手することは個人の行動そのものであり、プライバシーの問題から容易ではない。

しかし、ここまで消費行動の解析ができると、利用率が1割に満たないようなバスデータであっても、バス停ごとの乗降人数により、行動パターンが見えるようになる。バス停周辺のショッピングエリア、学校、支所、駅などに注目し、バス利用者を年代、時間帯で解析すると、通学や通勤の分布が把握でき、そこから、子育て世代、若者等がいる地域や職業の分布もある程度見えてくる。市役所から得られる住民基本台帳などのデータを超えて、家族構成、子育て、介護、高齢独立などの家族構成から、どの地域にどのような困りごとがあるか、街中での買い回り行動の予測などについて、プライバシーを守りつつ、把握できるようになった。 

【図13:バスデータと消費データの掛け合わせ アイデア検討】

さらには、スマートフォンのデータを利用した空間統計データ(人流データ)では、地域電子通貨カードの消費データだけでは把握できない生活行動(通院、通学行動、全国チェーンのお店、コンビニなど)、また外部から訪問する関係人口の年齢、性別などの属性ごとに、滞在時間も合わせた情報から、観光客の行動を人流として捉えることができる。

これらのデータ解析によって、地方を支えるモビリティの役割を明確にすることができる。例えば、通院や買い物のための生活に必要不可欠となるモビリティ、健康を保ち日々の生活を豊かにするためのモビリティ、観光など関係人口を増やすための外部とのコミュニケーションを活発にするモビリティ等である。消費行動と人流両面でのデータ解析に裏付けされた新たなモビリティは、地域活性化の施策、QOL向上に大きく貢献する要素と考える。 

【図14:空間統計データの活用】

[i] 庄原市キャッシュレス決済推進協議会 https://namica.net/


3.“ありもの”データ活用における庄原市の事例

交通流データ、人流データなどのビッグデータを使ったデータ解析を行うためには、プライバシー配慮やデータを扱うための高度なハードウエア、データベース、専門的な統計解析の技術が求められる。しかし、庄原市の事例では、行政や事業者から、公開情報である交通流及び人流データを入手することで、消費データなどの”ありもの”データを補完して、生活行動を見える化し、消費、観光キャンペーンやデマンド交通など新たな施策を生み出すきっかけを作ることができた。

庄原市では地域電子通貨カードによる消費データという材料があったが、必ずしも地域電子通貨カードが存在しないとデータ活用できないということではない。アンケートによる住民の声、公民館や図書館、スポーツ施設、公園などの入場者数データなど、活用可能な地域固有のデータは必ず存在しており、課題や意識の共有化、議論の方向性を合わせていくことを目的とするならば、十分活用可能なデータである。

これらデータの時系列変化をダッシュボードとして公開し、行政、事業者、市民にフィードバックすることで、施策の改善効果を行政、事業者、住民全員で共有するとともに、マクロ解析として提示した10年後の数値目標への立ち位置が実感できるよう、データ活用を進めていく。これにより、データ活用は持続的なまちづくり推進のエンジンになると考える。

【図15:ダッシュボード】


【白書発行】モビリティを梃子とした住民QOL向上のためのプレイブック(後編)に続きます

【後編 目次】

Ⅲ.包括的データ利活用を可能にする仕組みづくり

1.オープンでフラットな組織体制及びトラストビルディング
2.データ連携基盤の構築・運営
(1)データ連携基盤の参加者間の契約レベル及びアクセスレベルの在り方
(2)データ連携基盤の管理体制・各主体の役割
(3)データ加工及び解析に関するルール
(4)地元住民が安心して関わることができる枠組み
 
Ⅳ.今後の展望:“住民参加”プロジェクトが“住民主導”プロジェクトに発展するために
1.データ活用の新たな切り口と“地域データ連携基盤”構築のキーファクター
2.ファーストマイルの重要性と“共助”のモビリティネットワーク形成
3.第三者組織による運営の意義
 
おわりに
謝辞

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