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人で繋がるスマートシティ・コミュニティ

2022年1月25-26日、G20 Global Smart Cities Alliance (GSCA)日本支部の定例会が開催されました。全国から加盟自治体のスマートシティ担当者たちがオンラインで集まり、和気藹々とした雰囲気のなかでポリシーや事例の情報交換を行いました。

GSCA日本支部では2018年の発足以来、スマートシティ担当者のための定期会合や対話ツール、直接の訪問などを通じて、コミュニティとしての高い密度を維持しながら成長を続けています。2022年1月現在、日本国内における加盟自治体の数は26となりました。設立当初に掲げた「競争から協調へ」のコンセプトは広く受け入れられ、参画する自治体がデジタル化の便益を享受し、リスクを回避するためのアイデア、経験、ベストプラクティスを共有するコミュニティとしての活動を行なっています。

GSCA設立の背景はこちら

GSCA加盟自治体一覧(2022年1月現在)

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孤軍奮闘するスマートシティ担当者

スマートシティを推進する自治体の現場は、多くの場合孤軍奮闘です。そもそもスマートシティのコンセプトに明確な正解はありません。そのなかで地域の社会課題に対してテクノロジーができることを模索し、必要なテクノロジーの選択やデータの扱い、プライバシーやセキュリティのレベルといった難題にも答えを出していかなければなりません。

加盟拡大の旗振り役およびコミュニティ運営を担当するGSCA事務局/世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターフェローの増田拓也さん、同じくフェローの原元由貴さんは、多くの自治体の最前線では「スマートシティという横断的かつ新しい領域ゆえの課題に直面している」と語ります。

スマートシティ推進はとにかく幅広い領域への理解や対応が求められ、業務の性質としても組織横断的な取り組みゆえに庁内調整に追われがちです。だけど組織的にはまだチームが数名だったり兼務だったりすることが多い。ルールを作ることの重要性はわかっていても、そこまで手がまわらないという忙しさです。      またキラリと光る素晴らしい取り組みをしていても、それがなかなか住民に伝わらない、他の自治体が直面している課題と対応について学ぶ機会が少ないという悩みも多くの自治体の担当者に共通していると思います。(増田拓也さん談)   
増田さんもコメントしていますが、組織横断的な取り組みを推進する際の庁内調整、住民の理解促進など、さまざまな課題は多くの自治体で共通しています。GSCAコミュニティの中で、こうした課題を乗り越えてきた担当者の皆様の経験や知見を自治体同士が互いに情報共有する機会づくりを行っており、その結果、GSCA参画自治体への個別視察など、自治体間でのコミュニケーションも促進されています。(原元由貴さん談)

これまでの主な活動についてはこちら↓

ポリシーを共有する意味

なかでもGSCAが策定する「スマートシティ・ポリシー・ロードマップ」は、スマートシティ政策立案のための基盤として加盟自治体から高い評価を受けています。アクセシビリティ、セキュリティ、プライバシー、オープンデータ、デジタルインフラ整備といった領域をカバーする各ポリシーは、世界中の加盟都市との協働によって改善やアップグレードを繰り返しており、スマートシティ実装における最新動向を反映した内容になっているのが特徴です。遵守義務を伴わないガイドラインではなく、政策のための基盤を提供することにより、各自治体がモデルポリシーを参考に実情に合わせた条例等を策定していく事で、責任あるスマートシティ実装を推進することを可能にしています。

スマートシティ・ポリシー・ロードマップについてはこちら

こうしたポリシーの考え方を加盟自治体のあいだで共有することについて、ある自治体の担当者は下記のようにも語っています。

同じポリシーをみているからこそ、他の加盟自治体とも繋がることができる

「つながる」ことが本質であるデジタル化において、自治体も陸の孤島ではありえません。GSCAの枠組みが、現場の担当者を繋げ、また自治体としての繋がりにも道を開いています。

マルチステークホルダーで構成されたGSCA事務局

GSCAがつなげているのは、自治体だけではありません。実はGSCA事務局のメンバーは、世界経済フォーラム第四次産業革命センターに企業や官公庁から派遣されてきているフェローが多数を占めています。スマートシティプロジェクト長としてこの官民連携チームを率いる平山雄太は、多様なバックグラウンドをもつ官民連携チームの必要性を訴えます。

GSCA事務局は現在、日本、サンフランシスコ、インド、コロンビア等の第四次産業革命センター(C4IR)で協調しながら進めています。活動の中心になっているのはパートナー企業・組織から出向・派遣で参画しているフェローの皆様です。各フェローは都市コミュニティの運営支援や、グローバルな専門家集団であるWorking Groupにて、さまざまな知見をとりまとめながらモデルポリシーの策定や実装支援を行っています。現在はPPP(Public Private Partnership)やPFI(Private Finance Initiative) 、Open Contractの他、Cyber Resiliencyに関するポリシーを準備しているところです。官民・業界・国境の垣根を越えたメンバーによる共創が評価され、先日のSmart City Expo World CongressでのGovernance & Economy Awardの受賞にも繋がっているのだと理解しています。この活動を通し、ガバナンスイノベーションを起こせるよう取り組みを進めて参ります。 

Smart City Expo World Congressでの受賞についてはこちら↓

グローバルな繋がりへ

GSCAの加盟都市は世界にひろがっていますが、複数の自治体を質の高い地域コミュニティとして発展させ、運営する日本モデルは、国際的にも高く評価されており、インド、ラテンアメリカ、そして東南アジアでも地域展開する予定です。人で繋がるスマートシティ・コミュニティは、グローバルな繋がりにも発展しています。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)





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