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アジェンダブログ:デジタルサービス法がもたらすこどもたちのオンライン安全性

EUでは現在、デジタル空間における規則を定めたデジタルサービス法(Digital Services Act)施行に向けた調整が行われています。世界的に注目されるこの動きは、安全なデジタル空間に向けたグローバル・スタンダードを構築する影響力を持つとみられています。

同法案では、デジタルサービスを提供する企業が、違法コンテンツやヘイトスピーチ、偽情報といったオンライン上のコンテンツをどのように規制・管理すべきかを含める予定であり、オンライン空間における子ども保護の促進も期待されています。本記事では、EU Digital Services Act: How it will make the internet safer for childrenと題するアジェンダブログをご紹介します。

原文はこちら↓

デジタルサービス法の子どもへの影響

同法では、オンライン空間におけるこども(18歳未満)の保護について以下のような事項が盛り込まれる予定です。

  1. こどもの権利の明示
    こどもの権利を定めた国連の「こどもの権利条約」や「一般的意見25:デジタル環境に関するこどもの権利」が法案内で参照されており、EUにおけるオンライン空間でのこどもの権利が改めて明確にされます。

  2. 違法コンテンツの迅速な削除
    児童の性的虐待、ヘイトスピーチ、テロリスト関連等の違法なコンテンツが迅速に削除されるようになります。

  3. プラットフォームの評価の実施
    月間アクティブユーザー数が4,500万人を超える巨大オンラインプラットフォームには、毎年リスク評価の実施が求められます。プライバシー保護や表現の自由、差別の禁止に悪影響を及ぼしていないかを主な評価事項とし、欧州連合基本権憲章に則りこどもを保護しているかも評価されます(欧州連合基本権憲章では、こどもがその幸福のために必要な保護とケアを受ける権利を有すること、民間企業は常にこどもの最善の利益のために行動しなければならないことを定めています)。

  4. ターゲティング広告の禁止
    こどもへのターゲティング広告は禁止され、プロファイリングのためのデータ収集も制限されるようになります。また、こどもを含む全てのユーザーに対して、性的嗜好、健康情報、宗教、政治的信条に基づいたターゲティング広告が禁止されるようになります。

  5. 利用規約の分かりやすさの向上
    主に未成年者を対象としたサービスや、未成年者の利用が圧倒的に多いサービスについては、未成年者が理解できるような利用規約の説明が求められるようになります。

デジタルサービス法の施行

デジタルサービス法は、EUによる正式採択の15ヶ月後または2024年1月1日(いずれか遅い方)から適用される予定です。

なお、デジタルサービス法はEUにおけるオンライン上の合法・違法コンテンツを個別に規定するものではありません。違法コンテンツに対処するための基準を設定し、企業がそれぞれの利用規約を公正かつ一貫性を持って適用していることの保証を目的としています。したがって、何が違法とみなされるかは、各国の運用によって異なることになります。

デジタルサービス法は、プラットフォーム上のコンテンツに対する運営企業自身の責任を強化します。こども達がデジタルコンテンツを安心安全に利用できる環境の整備に向けて、一層の議論の促進が期待されます。

執筆:
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
高島理沙子(インターン)


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